THIRTYSIXTH:森遊戯
〚椿:皆〜!イベントの話覚えてる?〛
〚恋する少年:そりゃあ覚えてますけど…ちょっと配信中なので切りますね〛
〚信長:なんだっけ〛
〚戦士君:俺らが出るのはギルド団体戦だろ〛
〚柊:覚えてるよ。今日含めてあと9日だね〛
〚楸:そんなのあるんだ〛
〚椿:そこでチームの羽織作ったから当日着てね!〛
〚柊:羽織か〜肩に掛ける系の装備は無理なんだけど〛
〚野良猫:上に同じ〛
〚戦士君:同上〛
〚信長:同上〛
〚しゃもじ:私は別に〛
〚椿:ご安心。これは防御力、性能、耐性皆無ですが、その代わりの特殊効果『装備枠一枠増加』がついております〛
〚柊:そしてそれを羽織で埋めると〛
〚信長:意味無〛
〚野良猫:本気で無意味な装備ですね〛
〚落雷:いらん〛
〚椿:そんな事言わずに。団結力を高める為だよ!ほら〛
【ギルドメンバー全員に〔団結SHIYOUZE〕が配布された】
〚信長:意外にデザイン良いな〛
〚椿:生産職機織り師LV65の実力よ〛
〚柊:いつレベリングしたのよ〛
手元に、赤い袴。背中には白い三日月の上に、行書風の黒い大きな一文字「狂」。
多分他は「恋」とか「落」とかそんな感じなんだろう。
まぁ今着なくていいだろうし、本番だけ着るか。
さて、金策中ですが、足りません。もういっそ椿に借りる?
「ねえねえ椿、ちょっと100万貸してくんない?」
詐欺師にしか見えない。そしてなんか屈辱。
うーん…ちょっとトラウマだけど、鉱山潜るか。
その後、柊は欲につられて潜りすぎた結果、数十分後、リスポーン地点の上で絶叫することとなった。
◆◇◆◇
お金は金庫にしまおう。
とてもとても当然である。
課金…くっ…したくない…
課金で買えるのはGだけなので、他のゲームより課金勢との差が開きにくくなっているのもあり、だからこそ課金したら負け感がある。
葛藤してると、通知音。
\ピコン/
〚恋する少年:あ、柊さん。いま配信中なんですけど、ちょっといいですか〛
〚柊:はい。なんですか?〛
〚恋する少年:ちょっと雑談中にギルドメンバーの話になりまして…その…出演してくれませんかね〛
〚柊:はい?〛
〚恋する少年:いや…ウチのギルド、配信者がいる癖に一般人も入ってるじゃないですか。なので配信にギルドを持ち込まないことを信長さんと決めてたんですけど…〛
〚柊:じゃあダメじゃないですか〛
〚恋する少年:いやその、配信中にチャットログ切り忘れてまして…視聴者に問い詰められましてですね〛
〚柊:で、なんで私?〛
〚恋する少年:いえ…信長さんと話し合いまして、結局本人から許可を得れれば、迷惑にならない範囲でゲストとして出てもらうことになったんです。それでこうして一人ひとり連絡しているわけで…
もちろん断って頂いて構わないですよ。以前こういうネットゲームで配信というのがこういうトラブル起こりやすいので加入時に説明したと思いますけど、ゲスト出演については何の説明もしていないので。
現に落雷さんは断りましたし。
椿はノリノリで来ましたけど今視聴者からの要望が一番多いのは柊さんなので来てくれると嬉しいのですが…あ、もちろんご希望であればギャラも払います〛
〚柊:いいですよ別に。と言いたいところですが、ちょっと今Gに困ってまして、多少お譲りいただければ〛
〚恋する少年:もちろん。なんなら現金でも〛
〚柊:いや一般人素人に払うギャラなんて無いでしょう〛
〚恋する少年:それくらい自腹で払います。それに柊さんは一般人とは言い難いと思いますよ。現に視聴者の希望の数が貴方がダントツ一位なんです〛
〚柊:なんでですか〛
〚恋する少年:いや、その…僕が「孤高の剣聖」のファンなことはけっこう周知の事実なので。それでは、座標を教えていただけますか?〛
〚柊:はい〛
これでGの目処が経った。ちょっと悪どい気はするけど、まあいいか。
◆◇◆◇
「え〜っと、皆の希望通り柊さんが出演してくれることになったので、柊さんに感謝してくださいね」
「えっと…何喋れば良いの?」
「自己紹介お願いします。よろしければジョブも含めて」
「あ、はい。ジョブ〈森人☆★★〉柊と申します。よろしくおねがいします」
「椿とはちょっとしたクエストをしましたけど……」
「? どうしたの?」
「言っときますけど柊さんにコメントは見えてませんからね」
誰だ今「格好えっちだな」とかコメントした奴。
なんか「人形モンスター」とか「対人の怪物」とかのよくわかんないコメントも見えるな。
「まあまたクエストでも…というのも飽きてきそうですね。」
「じゃあちょっと行きたいところあるんだけど、良いかな?」
「なんですか?」
「多分相当おもしろいものが見れると思うよ。《召喚》」
「あ」
『わう!』
「もう別に隠してもないし」
早速コメント欄がザワつく。
「えっと…こちら、『深緑魔狼・無垢之童』の、榎です」
『わうわう!』
「えっと…はい。彼女のテイムモンスターです」
「どうやって!」のコメントが大量。
「どうやって?と聞かれてますけど」
「それはヒミツで。ただこの子は元はヌシの森に居た至って普通の森子狼だったよ」
『わう?』
「だそうです。で、目的地はどこですか?」
「『あそびの森』までお願いします」
◆◇◆◇
「いや〜移動の手間が省けたよ」
緊張しないなぁ。注目されるのに慣れてるのかな。椿は若干緊張してた感じがしたけど。
「何するんですか?」
「戦闘にはならないかもだけど、榎、《森遊戯》」
『わう!』
榎くんが何らかのスキルを発動。
【遊び相手が強制的に決定された】
【拒否権無し】
【逃走不可】
【遊び内容強制決定:じゃれ合い】
【あそびましょう】
突然なにやら不穏なログ。
次の瞬間、コメントが大いに盛り上がった。
姿を現す、青い大狼。
【遊狼王リュカオン=ヴェルディクス が遊びたいようだ】
「な、何呼んでるんですか!?」
超レアエンカウントのハズでは!?
「ま、こんな気はしてたけどね。ほら。戦闘準備して」
「狼王の強さを分かってて言ってるんですよね!?」
「もちろん。」
【勝利条件:一定以上のダメージを遊狼王に与える】
【景品:そうだね、じゃあそれぞれに良いスキルをあげよう。二人で挑むんならその分質は落とさせてもらうけどね】
【3】
【2】
【1】
【START】




