THIRTYTHIRD:炎と地獄
少し余裕があるので久々に投稿。
『よぉ来たな、柊とやら』
燃え盛る炎の大樹の前で、赤い髪の、四本腕、七本指の少年(少女?)が顔に合わないドスの効いた声で言った。
『お主が用があるのは儂の飼い犬のようだが、少し儂も興味があってな。リスとコトリと水龍に許しを得て、エヴィから証を受け取った人間とは…中々おるまいて』
少年の足元には、三首の、真紅の炎を纏う大狼。
『おっと、自己紹介が遅れたのぅ。儂は日神之人。火と光を司る神使よ』
漆黒の瞳が私を見据える。
なんかとんでもないものに会った気がするのは気の所為だろうか。
始まりは数分前――――――
「やっと火山に着いた…」
紆余曲折の末、漸く目的地に着いた私は、ほっと一息吐く。
すると目の前に赤い大蛇。
【炎大蛇に発見された】
【炎大蛇は逃げ出した】
戦闘態勢に入ろうとすると、私を見るなり一目散に逃げ出した。
『わう?』
「あ!逃げた!榎追うよ!」
初手逃走のモンスターは経験値が美味しいと相場が決まっている。
はぐれたメタル的な存在かもしれないし。
しかし、しばらく追いかけると、そこに居たのはこちら。
【紅陽偽竜に発見された】
かっこいい名前と共に目に入ったのは、王鱓より一回りデカい、巨大な蛇。
体に太陽の紋章が刻まれ、炎を纏うその姿は、竜に間違われるのも納得だ。
めちゃめちゃ強そう。
「あ、お母様ですか、すいません息子さんにご迷惑おかけしました。それでは…」
【紅陽偽竜がスキル《光煌牙》を使用】
許してくれないようだ。
なんかどう見ても即死しそうなくらい熱々に燃える牙が私に迫る。
ギリギリで躱すと、後ろの岩が溶けて無くなった。
【紅陽偽竜が…
『やめい赤蛇』
来る次の攻撃に構えようとすると、そこに現れた。
【日神之人 に発見された】
『我が子を追いかけ回されて怒るのは当然だが、其の者は儂が饗そう』
大蛇が沈黙し、私をキッと睨んで離れていった。
「えっと…」
『さて、《地獄ヘノ招待状》』
ひらりと、私の手元に炎の文様が描かれたチケットサイズの赤い紙。
眼の前が歪み、次の瞬間には広い部屋にいた。
中華風の玉座の間。壁は溶岩に覆われ、柱は真紅の炎を纏う。
周りには全身赤い甲冑の兵士がずらりと並び、玉座の横には三首の赤い大狼。
彼(彼女?)はツカツカと玉座の方へ歩いていき、座った。
『よお来たな、柊とやら。
お主が用があるのは儂の飼い犬のようだが、少し儂も興味があってな。リスとコトリと水龍に許しを得て、エヴィから証を受け取った人間とは…中々おるまいて。
おっと、自己紹介が遅れたのぅ。儂は日神之人。火と光を司る神使よ』
「え?えっと…」
え?なにこれどういうイベント?
\ピコン/
【称号:真紅と新緑 を獲得】
┣獲得条件:特殊ルート[Gルート]でマップ”地獄”に踏み入る。
┗効果:地獄街八苦地区全ての施設が利用可能。
\ピコン/
【称号:UNDER WORLD を獲得】
┣獲得条件:世界で最初にマップ”地獄”に踏み入る
┣効果:業炎属性獲得。
┣効果:炎属性耐性(大)
┣効果:即死属性耐性(大)
┗備考:まさかこのルートで入る人が最初になるとは…
なんか称号もらったし。
『後継は積極的に増やして行かねばならん』
「後継?」
『そう。今のお主は我々「神之下僕」の一人に成る道の上よ』
カミノシモベ?ああ、あの「森神之獣」とか「日神之人」とかか。
『では聞こう。お主が強くなりたい理由は?』
なんか重要な分岐になりそうな質問だなぁ。
なんか榎はさっきから困惑してるし。
じゃ、ここは正直に。
「この世界を楽しむためですかね」
『…ほう。具体的にどうゆうことか』
「普通に強敵と戦うのは楽しいじゃないですか」
『なるほど』
「強敵と戦うためには強くないと無理でしょう」
『はっはっは。お主は単純で良いな』
「これでも頭は良いんですよ?」
『まあ良い。嘘ではないようだし、外道の行いの為に使うのでなければそれで良い』
嘘ついたらアウトって感じなのかな。
『良し、この先へ進むことを許そう』
\ピコン/
【エクストラユニークストーリー:THE WORLD GUARDIAN が開始された】
『それとほれ。2つ目の「証」よ。受け取れ』
【勇猛 を獲得した】
◆◇◆◇
「めっちゃ怖かった…」
「と、とりあえず再生してやるよ」
「頼む…」
「《部位再生》 それにしても何したんだお前」
「脅してタクシーにした」
「GMコールされなくて良かったな」
「そしたら人気のないところに連れてこられてボコられて百万ゴールドと国宝巻き上げられた」
「自業自得過ぎるな」
「なにあの娘。怖い。”ムカつくんで右足潰しますね”だぞ?」
「俺も怒らせないようにしよう」
「痛覚なくてもめちゃめちゃ怖いし…」
「普通強要してアイテム差し出させるとかするとBAN喰らうけど、お前の場合AIにも自業自得判定されてるな」
「マジで殺されるかと思った。リアルでも今俺背汗びっしょりだ」
「何取られたんだ?」
「時間の書」
「おまえ…それ大丈夫か?」
「国に帰れない…部下たちに殺されるかも…」
「まあその気になれば身包み剥がすことも出来たんだし、それよりはマシだと思えよ」
「あの娘のジョブ、レアジョブってこと以外、信長教えてくれなかったんだけど、何?敵殴り殺してたけど」
「言うわけねえだろバカ」
「だよなぁ。推測するに『蛮族』とか『拳闘士』とかか?」
「それはそうと、用事ってなんだ?」
「ああ。依頼があるんだけど、人伝に頼みにくくてな。個チャでやる内容でもないし、面と向かって」
「断る」
「そう言わずに。お前にとっても良い話だから」
「絶対めんどくせえじゃん」
「炎狼王討伐計画(有力)」
「…詳しく聞こう」
もし嘘を吐いた時の反応
『…心にも無いことを云うものよ。そなたに【真実】は似合わぬな』
⇓
アイテム【真実】没収
⇓
『不快だ、失せろ。貴様に用は無い』
分岐をミスればイベントがめんどくさい方向へ進み、最悪イベント失敗する




