TWENTYNINTH:文系少女
更新、できたらします。でも少なくとも今年度は以前のように毎日は無理です。
今回リアルメインです。
ふわっとした長髪茶髪の女性。背は私と違い少し低め、顔は髪に隠れて見えづらくはあるもののだいぶ可愛いと思う。
文学系って感じかな?私と対極な感じ。
先輩……かな。敬語使うべきだな。
髪は地毛っぽい。見た感じ生え際に違和感ないし…
おっと。私の悪い癖だ。初対面の相手を観察し始めてしまう。
不快かもだし気をつけないと。
彼女が慌てて本を拾い集め始める。
流石に気まずいので手伝う。
「あっすっすいません!」
「いやいやこれくらい」
「あっありがとうごじゃい…ございます」
かわいいな。
ふと拾った本を見ると、目に入ったのは「夢の広場」という題名と、「平筆望」という作者名。
「そ…その本が何か?」
「え?いや、何でも…ただ知ってる本なので」
「そ、その話面白いですよね。『夢の中』っていうファンタジーな舞台の中なのに要所要所にゾッとするほどのリアリティがあって…自らの夢に追い詰められる主人公の心情表現がホントに引き込まれるので、何回も読んでしまうんですよね」
急に早口。
「じゃ、残念ながら作者様は十年程前に亡くなられたんですけど、私この方のファンでして…この人、21世紀の文豪とまで呼ばれてるんですけど…貴方は他には?」
「わ、私は一応彼のは全部…」
「全部!けっこう作品数多いのに。私以外で初めてみました」
「そんなにファンなんですか?」
「はい!」
たまーにいるよねこの作家の熱狂的ファン。
ディープな読書家にはかなり刺さるんだよねこれ。ちょっと読む程度の人にとっては何いってんだこれって感じだと思うけど。
まあ私は面白いとは思うけど正直ゲームの方が楽しいって感じかな。
でも私と同年代くらいでってのは珍しいな。
……ちょうどいいか。
「お名前は…?あ、私は平野義意です」
「わ、私ですか?私は…目龍奈です」
「さがん?ああ目か。珍しい名字ですね」
「良く言われます」
「それで目さん。この作家の作品が好きなんですか?」
「はい!日々の楽しみはゲームと漫画とこの人の本です!」
「この人のグッズとかってほしいですか?」
「? はい。まあ。けどこの人のグッズなんて…」
「じゃあ、家来ます?」
「はい…え?」
「この人ね、私の父親」
「え?」
「本名、平野希。
あの人、このデジタル時代に手書きで書くもんだからその原稿の扱いに困ってまして。
けっこう有名作家だし、これ売ったらお金になるのかもしれないけど、一応父親が自分の子のように大切にしてたものですし、売ってお金にするってのもあれじゃないですか?
でもだからって無料でその辺の人に渡すってわけにもいかないし。
ということで、よかったら要りますか?」
「え?」
「伝わってくる情熱的に大切にしてくれそうだし。あ、サイン本要る?13年前のもので良ければ」
「え?」
「おーい?」
「はっ!」
「お、起きた」
「あ、すいません。ちょっと突然のことで意識が…」
「大丈夫ですか?」
「い、いやそんなことより、それ市場価格でウン十万は…」
「まああの人のは刺さる人にはめちゃめちゃ刺さるっぽいですからね」
「21世紀の文豪…」
「要らないなら良いですけど、どうします?」
◆◇◆◇
家ひっっろ。(巻き舌)
日本家屋の平屋。庭の石灯籠と山吹が渋くてかっこいい。
私のアパートが惨めに見えてくる。
「狭い家…とは流石に思わないけど、上がってください」
「え?これどういう…?」
「この家は兄さんが管理してるから。あいつは所得だけは良いですからね」
「酷くないですか言い方」
「いいんですよ兄さんはそういう扱いで。あいつもそれで悦ぶから。お小遣いは癪だから受け取ってないですけど」
「そ、そうですか…」
「ほらここ。父さんの部屋です。ちょっとカビ臭いですけど、一応丁寧に保管されてるんで中身は無傷だと思います」
そこにあったのは宝の山。
え?あれ?私、こんなに運良かったっけ?
「好きに持ってっていいですよ。どうせ私が持ってても意味ないし」
「ありがとうございます。神様って呼びますね」
「遠慮させていただきます。あとお金とかは要らないんで。お金には困ってないし、いざとなれば親の貯金もあるんで」
「えっでも流石にこれタダっていうのは…」
「じゃ、美味しいシュークリームとかでもいいですよ。こっちにとっては『捨てられない不要物を取りに来た業者(無料)』ですから。あ、これLINE」
「え?あ、はい」
コミュ力が強いぃ…
一方的に会話が進むぅ…
LINEの友だち一覧に、「平野」の二文字が追加される。
何を隠そう。私のLINEに家族以外が入ったの初めてである。
「なにか不備がとかトラブルがあったら連絡してくださいね」
「は、はい」
「せっかくだしお茶でも飲みます?今兄さん居ないから今のうちに兄さんの隠しているクッキー食べちゃいましょう」
「え…じゃ、じゃあ…」
◆◇◆◇
ふう。よっしゃ。これで長年入れなかったこの部屋が空いた。
別に私にとって大切なものってわけじゃなかったし、これで二部屋障子を開ければ…ほら居間がかなり広くなった。風通しが良いね。
あとでカビの掃除しなきゃ。
あとさっきの目さん。たぶんメリュウさんだよね。ポーションくれた謎のおねーさん。
サーバーが同じってことは少なくとも同じ市内か隣町くらいかなとは思ってたけど、まさかこんなに近くだとは。
あの人も背格好やアバターはあんまりいじらないタイプなのかな。けっこうバレバレ。
髪色も一緒だし。リアモジュ判定はどうなってるんだろう。
まあゲーム内でも知り合いってほどでもないし、その関係値で声を掛けられたら恐怖でしかないと私は思うからスルーしたけど。
さてと、ログインしよ。
◆◇◆◇
続きやってこー。
とりあえずケロベロス兄さんのとこに行ってみるか……っとその前に、前回使えてなかった新スキル、《苔生す大地》使ってみるか。
クマさんとテンさんが見守る中、実演。
「《苔生す大地》」
【精神干渉 対象 悪熊・貂祀】
【限定的ヒューマンズディストピアフィールド:EVERYTHING IS LIFE を展開】
【限定的アニマルズユートピアフィールド:EVERYTHING IS LIFE を展開】
【魂が一時的に 人間→獣 に変化】
おおう?
視界はだだっ広い樹海に変化。なんだこれは。領○展開か?
必中効果は無さそうだが。
『ひいらぎ!なんかすごい!』
おおおう!?なんか榎が流暢に喋り出した!?
『これは…俺の魔力が回復しているな。居心地がいい。』
『そうね。この分だと傷も治るんじゃないかしら。でもこれ…人が入るとどうなるのかしらね』
なんかクマさんとテンさんも流暢に…
ていうかクマさん声かっこいいな。なんか…荒野に住む傭兵みたいな…頼もしいお父さんみたいな声。
5秒ほどでこの世界は開き、元の森の中に戻った。
多分だけど、ログの「限定的ホニャララ」のところから察するに、モンスターにはバフもしくは回復効果、人にはデバフもしくはダメージって感じかな。
ていうか5秒でSPがかなり削られた。もう半分くらいになってる。満タンだったのに。
私のスキル、使い勝手悪いの多いな。
『わうわう!』
いつものに戻った。正直こっちのほうが落ち着くなぁ。さて、検証も終わったし、ケルベロスは確か火山地帯の…
\ピコン/
〚椿:新人加入につき、集合〛
……意地でも進ませない何らかの意志を感じる。
コミュ障はコミュ強と一緒にいると少しコミュ障が緩和される。
実体験である。
なお離れると元に戻る。




