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ANCIENT WORLD ONLINE  作者: 桐に鳳凰
CHAPTER ONE
23/40

TWENTYTHIED:雪狼王

 森に到着。木々はみんな雪を被っているにも関わらず葉が茂っている。

 常緑樹のようだが、それにしたって木に元気がありすぎる気もする。


 NPCのお姉さん――ホノカさんというそうだが、彼女が言うにはこの森の木は生命力が桁違いで、いついかなる時も木が茂り、病気も弾き朽ちも枯れもしない。それこそ木の葉が散ったことなど少なくともここ数千年は確認されていないのだという。

 しかし木々の繁殖力は弱いため、森は広がりも狭まりもしないのだという。木こりの斧も幹を通らず、仮に枝を斬っても3日もあれば再生する。


 別名「不変の森」


 木の質はかなり高く、この地域独自の乾燥魔法を行えば例え雪が積もっていようと暖炉でよく燃えるのだという。


「榎、トウカくんがどこにいったか、木に聞いてくれない?」

『わうっ!』


 榎がてくてくと木に近寄り、わうわうと吠え始める。


「トウカくんはどんな子なんですか?」

『えっと、トウカはやんちゃではありますけど素直で案外賢くて…言いつけは自分の為だと理解していれば守りますし、育てるのはだいぶ楽でしたね』


 両親は…これ聞いていいのだろうか。


『父は数年前に蒸発して母子家庭だったんですけど、その翌年母が流行り病であっさり…そこからは二人暮らしですね』

「そうですか…あ、榎どうだった?」


『わうっ!』


 榎が森に向かっててくてく歩き出す。ついて来いの意だろう。

 ついていく。


 ん?なんだこれ。岩?

 なんか変な形だなあ。なにかの尻尾みたいな岩。

 まあいいか。


 進む。


 榎はどんどん奥に入っていく。ホノカさんは付いてこれなさそうだったので私が抱きかかえて運んだ。


 ん?ここにも変な形の岩。これは…獣の後足?

 なんか意味がありそうだな。覚えとこ。


 更に進むと不自然に赤い木が一本。

 それの周りを3周し、また進む。


「榎!どこに向かってるの?」

『わうわう!わうわうわ!』


「ごめん犬語わかんない」

『わう!?わうわ!!』


 あ、これは「犬じゃない」って言ってる気がする。


 更に進むと今度は獣の前足の形の岩。

 そして一輪だけ、オレンジ色の百合系の花。


 採取してみると、『日雫の花』っていうアイテムだった。


 更に進むと、二本の並んだ木。

 そこの横には、尻尾と前足と一本と後ろ足一本が欠けた狼の石像。

 ここに来て理解。あれ持ってくるのか。怠。


『わう!』


 榎の言葉は分からないが、いかにも「ゴール!」って感じの雰囲気。


『え?こ、ここは?』

「私にもわかりません。けど榎が居れば帰れると思いますよ」


 さて。あの岩を回収しに行くか。

 時間は…まだあるな。


 マップ使用不可ねえ。方向感覚は…さっきから風向きも太陽の位置もめちゃくちゃだけど、まあ勘で行くしか無いな。

 あの赤い木はなんかのトリガーっぽいし、帰ってこれるかな…まあ榎がいれば…


『わうわう』

「ん?どうしたの榎」


 榎が木に向かって、わうわうと語りかける。


『わうわう』

『わう?』

『わう…わう』

『わうわう』

『わん』

『わう!』

『わうわうわう』

『フルフル(首を振る)』

『わう』


 なんか会話してる…かわいい。

 こっそりスクショ。


 その後、なにやら話がまとまった雰囲気。

 そのあと榎が木々に魔力を分け与え始める。

 すると木の根が異常に伸び、うねって石像の部品を抱えて持ってきたではありませんか。


 もしかしてうちの子商談の才能も……?

 うちの子有能すぎる…


 ご褒美にシュウマ…鍛冶王の受け取らなかった地竜肉を少しあげる。

 榎が喜んで食いついた。これはご褒美用にしよ。

 状態は…あ、やっぱり新鮮な方がいいのか。


 ……できそうだな。

 肉を全て取り出す。


「榎、食べちゃダメ」

『わう…』


 肉を雪の中に埋めてみる。


「ちょっとまっててください。《癒し》」

『………え?あ、はい…』


 一応回復。


 癒しが終わる頃には肉は凍っていた。

 アイテム名「冷凍地竜肉(中)」になってたし。

 あ、解凍どうしよ…まあなんとかなるか。


 ◆◇◆◇


 さて、石像修復しますか。

 これを…あ、ハマった。

 こっちも…よし。あとはこれを…オッケー!


『な、何を…』


【真・雪狼王の森 へのゲートが開いた】


 二本の木の間に薄い氷のような膜が貼られた。触れてみると通り抜ける。


「榎、トウカくんはこっちに行ったんだよね?」

『わう!』


「じゃあ、行きましょうか」

『あ、は、はい…』


 通り抜けると、そちらは真夜中。

 恐らくずっと夜なのだろう。


 ふと下を見ると、子供大の足跡。さっきまで無かったのに…


「榎。ここから先、分かる?」

『わうわう…』


 わかんないかあ。

 まあ足跡追うしかないか。


『あ、ちょっと待ってください。〚夜道は暗く、魔の獲物。闇は死の色にして恐怖の顕現。我等が弱者に微かな希望の炎を恵み給え〛《魔灯火(マナ・ランタン)》』


 ホノカさんの手の上に、小さな火の玉。

 おおこれがこのゲームの魔法か。詠唱はそこそこイタいけど、まあ前前世の最上位闇魔法に比べれば全然許容範囲。


 まあ私MP無いけど。


「ありがとうございます。榎はともかく、私は魔法からっきしなので」

『いえいえ。私にはこれくらいしか出来ませんし』


 光を頼りに足跡を追い、トウカくんを探す。

 ん?これは…


「これは?」

『これは…ト、トウカの背負子しょいこです!やっぱりこっちに…』


 背負子とは、あの柴刈りじいさんが背負っているような、木製の道具だ。

 採った枝や木材を背負って運ぶものである。


 そして横に、意味深な窪み。

 大きさは…まあ樽の底くらい?

 そして形は、見覚えのある形。


「肉球形かあ」


 後ろで、鼻息。


【雪狼王リスト=ヴェルディクス に発見された】


 ◆◇◆◇



 はあ。

 僕、本当に何言おうとしてたんだ…


 あんなとこに連れてって…下心丸出しじゃないか…


 いや、言い訳させてもらいますけどね!最初はそんなつもりじゃ無かったんですよ!?

 ほんとにあの湖が、レベリングに良いと思ったんですよ!


 でもいつもより緊張したからか、ちょっとずれたじゃないですか?

 そして無様にも湖に落下するじゃないですか?

 無様を晒したにも関わらず優しいじゃないですか?

 ちょっと際どい発言になるけど、びしょびしょで苦笑いしてたのもかわいいじゃないですか?


 もともとファンだったけど、その時はちょっと素の部分が見れた気がして、距離が縮んだ気がして、キュンとしましたね?

 舞い上がりましたね?はい。


 仕方ないじゃないですか。ピュアボーイですもん。


 後になって冷静に考えてみれば、だいぶヤバいことしようとしてましたね!

 はい!

 相手にとっては初対面に等しいというのに、

 I love you. → Oh! I love you too! なんてなるわけないでしょう!


 しかも今思い出したら、察してる顔だったし!

 恥!嗚呼、忘れてくれないかなぁ。


 ん?今何してるかって?

 心頭滅却。


 ここの滝はですね。衝撃と寒さがだいぶリアルでして、リアルな滝行が味わえると評判なんですね。

 痛覚をONにして修行。


 だいぶ痛い。


 まあこれやり過ぎて耐性ついたお陰であの腕輪渡せたし、いいか。

備考:前前世の闇属性上位魔法詠唱


其は此岸の裏側、彼岸の更に彼方に存在する魔の深淵にして、生ある者全てを捉え穿つ邪の雷鎚也。

球は我が力と肉体を象徴し、空は我が魔と精神を象徴す。

狂いて死に向うは我が魂。揺られ眠るは彼等の魂。

闇は永久に闇として、然し時を経る毎に更に洗練されし黒となる。

無限に刹那、その生命を焦がして響き、我が仇敵に戦慄と絶望を与え給う。


「刻零魔淵永雷霆之子守唄(Lullaby of Chronos as a darkside)」

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