FIFTEENTH:地潜子竜
「それで、オーダーメイドやんな?どんなんがええんや?」
「まず私の全財産は現在126580Gだから、それを頭に入れて欲しい」
「初心者の癖にけっこう持っとんなあ」
「闘技場で荒稼ぎしたからね」
「なるほど」
「それで、まず私の職業がちょっとレアジョブでね」
「なるほど」
「装備制限が付いてるのよ」
「なるほど」
「武器使用不可なんだけど…」
「なるほど……なるほど?」
「さっきから『なるほど』しか言ってない」
「まてまて。武器使用不可?」
「そう。だから殴ってるんだけど…」
「殴ってる。ふむふむ」
「やっぱり篭手で殴ったほうがいいじゃん?」
「当然や」
「だから、とにかく硬くて、そして耐久値の高いやつが良いかな。拳に属性もクソも無いから」
「なるほどなあ。つまり耐久値が高く(≒長持ちで)、硬い(≒防御力の高い)やつが良いんやな?」
「そうそう」
「そんなんお前に限らずみんな欲しいわ。当店の最高品質のやつでざっと80万。それ以下はなんぼでも。安ければ安いほど性能が落ちる」
「ですよね」
「素材持ち込みなら手数料だけやから、モノのレアリティによるけど10万くらいでイケると思うで」
「素材ねえ…」
なにかあるかな…
【魔法袋】
・ヌルヌルした皮(大) 01個
・ギザギザの牙 32個
・水玉 01個
・墨袋 010個
・どんぐり 999個
・子兎の毛皮 009個
・子狼の毛皮 001個
・子狼の牙 001個
・真実 1個
・雑草 123個
……………
………
…
「こんなのしかない」
「ヌルヌルした皮(大)はレアやけど篭手には使えへんな。……どんぐりカンストしとるやつ初めてみたわ。えっと……ギザギザの牙は普通やけど数が多いな……真実ってなんや?まあええか。雑草…どうでもええやつ多いな。なんでこんなんでレベル34まで上がんねん。墨袋?知らんアイテムやな。ちょっと見せぇ」
びちょ。
「タコとかイカの墨袋か。でっかいな。まあ防具には使えんな。今んとこ使えんのは水玉とギザギザの牙やな。こんだけや何も作れん」
「なんか取ってくるけど、何が良い?」
「せやなあ。せやったら鉱山行ってくれん?『鉄鉱石』『銀鉱石』『魔銀鉱石』。できれば『竜石』『神銅鉱石』とかも頼むわ。使わん分は買い取って割引。どうや?」
「自分で取りに行かないの?」
「いや俺戦闘職LV19やし。その分鍛冶師LVは89やけどな。鉱山には普通にモンスター出よるからなあ。奥に行くほどレアなんあるけど、その分敵も強うなる。一種のダンジョンやな」
「なるほど」
「まあその分普通に売るより高く買うし、ええやろ?こっちは防具作る手間だけで済むから実質タダやし」
「OK」
「ほいこれピッケル。武器ちゃうくて道具やから、まあ大丈夫やろ。壊したら自分で買え。あ、転移トラップには気をつけや。完全ランダム階層移動で、しかも見つけづらい。3階層から20階層へ転移させられる事もあれば16階層から1階層へ転移食らったやつもいる、不人気ダンジョンを不人気たらしめる害悪トラップや。まあ生産職には必須ダンジョンやがな」
「了解」
◆◇◆◇
【宵竜ノ大鉱山 ※この中で死亡した場合、この中で獲得した素材は全て没収されます】
ライトとピッケル。これだけで鉱山に行くとか我ながら舐めてるが、まあそこはゲームだから。誰もゲームにリアル鉱山の危険さと苦痛を求めてない。
『1階層』
まっくら。お?
【鉱山蝙蝠に発見された】
『わうっ!』
パンチ
【鉱山蝙蝠に600のダメージ OVERKILL! 鉱山蝙蝠は死亡した】
ザッコ。
ここレベリング場になるんじゃね?
あ、あれが鉱床かな。
【石塊 を獲得】
くそ要らん。
よし。もっと潜るか。
『わう』
◆◇◆◇
前言撤回。ここ普通に経験値効率クソだ。
もう数十匹狩ってるのにレベル一つも上がらない。
安全を期してちょっと浅めに掘るか。
このへんかな…
【鉄鉱石 を獲得】
【鉄鉱石 を獲得】
【石炭 を獲得】
【銅鉱石 を獲得】
【鉄鉱石 を獲得】
ふう。
【鉄鉱石 を獲得】
【石炭 を獲得】
【石炭 を獲得】
【鉄鉱石 を獲得】
【銅鉱石 を獲得】
……………
………
……
銀も魔銀も出ない…
『わうぅ』
榎も落ち込んでる。かわいい。
もう少し奥に行くか…
進むと、階段。
降りるとまた同じ様な光景だが、階層の形は違うようだ。
そこでも大したものは出なかったので、更に進み、降りる。
『5階層』
この辺で掘るか。
あったあった。
【鉄鉱石 を獲得】
【鉄鉱石 を獲得】
【銀鉱石 を獲得】
【魔銀鉱石 を獲得】
【鉄鉱石 を獲得】
【石塊 を獲得】
【鉄鉱石 を獲得】
【銀鉱石 を獲得】
おぉう。一気にたくさん…楽しいねこれ。もっと奥行ってみy…
カチッ
「ゑ?」
『わう?』
直後、足元の感覚が消える。
◆◇◆◇
『??階層』
トラップか?5階層ではないよね…
この鉱山は全25階層だ。
暗さからして恐らく、1階層から2階層までの暗さの違いから推測するに…17〜18くらい?
このレベルだとレベル70〜くらいだって聞いてたから、危ないな。
上り階段探すか。
お?鉱床だ。
どうせ死んだら鉱石全部消えるから、まあ回収しとくか。
【神銅鉱石 を獲得】
【竜石 を獲得】
【紛い神銀 を獲得】
【魔錬結晶 を獲得】
……これは…的確に人間の欲を突くなあ…
転移系アイテム使用不可っていうのがまた…
自分にビンタ。
よし。我慢!
また強くなったらここに来よう!
ん?今何か音が…
後ろから…鼻息?
恐る恐る、振り返る
【地潜子竜に発見された】
目の前には、私のライトに照らされて、黒く輝く大きな竜。
1つ目、二足歩行の怪物で、頭には3本の大きな角。
前足と翼は退化していてまるで恐竜のようだ。
大きさはおよそ車一台。これで子?
『GYUAAAAAAAAAAAA!』
「榎、退避!」
『わう!』
【地潜子竜がスキル《地泳》を使用】
竜が地面に沈み込む。
これあれだ。下から突き上げ攻撃が来るやつだ。
タイミングを見計らって、ギリギリでバク転。
その目の前を、巨大な鉄が突き上げる。
「《鉄拳》」
殴ってみるも、ガキィンという音が響き、攻撃が全く通らない。
ダメージゼロは傷つくなあ。
ならどうするか。
硬い相手には目を潰すか爆弾を食わせるか崖に落とすかと、だいたい相場が決まっているものだが…
1つ目の敵は大体目潰しだよね。
だがあいつ、瞼は硬そうだ。
少し観察するか。
【地潜子竜がスキル《参、震轟槍黒鉄》を使用】
突如、鉱山の洞窟の天井、壁、地面360°から黒い鉄槍がらせん状に突き出る。
榎を抱き上げ、二連バク転で回避。
この広範囲攻撃ヤバいな。近距離無敵か?
【地潜子竜がスキル《弐、鉄矢赤連射》を使用】
バリスタ並みの巨大な鉄矢が出現し、真っ直ぐに発射。
それが連続。なんだ遠距離も最強か。
おそらく今のレベルで勝てる相手じゃないだろう。
【地潜子竜がスキル《地泳》を使用】
ただ、歩くのは遅いが泳ぐのはバカ速い。しかもさも当然の様に壁を泳いでる。
逃げ切れる気がしないな。




