TWELVETH:闘技場
【目覚めの花 を獲得】
私何もせずに終わりそうだな……
取り敢えずほら穴に帰る。
『ガウ』
「分かってるって」
早速目覚めの花を貂の前に置く。
花が輝き始めた。
光を放ちながら空中に浮かび上がり、そして光の粒となって貂の胸に入っていった。
クマさんが側に寄り、額にちゅっとキスをする。
【クエストMISSION:悪熊と貂祀 全て成功】
ユニークイベントにしてはあっけなかったな…
貂が、目を開く。
クマさんは心底ホッとした雰囲気を出していた。
『フィア』
貂はクマさんに飛び乗り、肩に上って頬ずりした。
ラブラブだぁ。なんだろうこの気持ち。
『ガウ』
クマさんが私に近寄る。報酬かな?
『ガウガ』
【悪熊が恩返しを希望している】
┣ある程度の事なら望むことをしてくれる状態。但しテイムは条件を満たす必要がある。
┗テイム条件開示:彼より強く、且つ彼の守りたい者を守ることができる者。
テイム条件開示とかあるんだ。
強さはまだまだクマさんの方が上だな。守りたい者というのはこの貂のことだろう。
うーん…今特に欲しい物とか目標とか無いしなあ。
「じゃあ、強くなる方法を教えて」
流石に無理かな?会話できないし。
『ガウ』
のっしのっしと歩き始めた。少しついていくと、何もないところで立ち止まる。
【悪熊の称号『神森ノ民』の効果が発揮】
突如、視界が深い霧に包まれた。
◆◇◆◇
目を開くと、そこは森の中だった。
ただ、先程までと風景が違った。
まず第一に、前方に巨大な大樹。
そして周りをふわふわ浮かぶ、綺麗な光の玉。
青い花でできた、真っ直ぐな道。人工の道と違い、そこは木々が自ら避けているように、舗装されていないのに平坦で歩きやすい道。
頭上には生い茂る木の葉と、そこからの木漏れ日。
この周りの木一本一本が樹齢千年を超えるような美しい木。
心底このゲームはグラフィックがイカれてる。
クマさんと進むと、少し開けた地に出た。
絵本に出てくるような大きな木。
東京スカイツリーよりデカいんじゃないかというような大木。
その根本に、それは居た。
私は今まで、「ヌシの森」の「ヌシ」はクマさんのことだと思っていた。
【森神之獣を発見した】
見た目は…見たことのない四足獣。鹿と狼の中間みたいな?頭には後ろ向きに4本の大きな角があり、足は6本。馬の蹄のような足。尾は龍のように太く流麗。目は三つあり、その全てに蒼い光を湛えている
美しい白い毛並み。そしてそれを彩る透明な青の鬣が首の周りと背中から尾の先にかけてのびている。
ゲームで神々しさを感じる日がくるとは思わなかった。
クマさんが跪く。
ついでに榎も出てきて平伏す。
『ガウ』
『ほう。悪熊が人を連れてくるとは珍しい』
「喋った」
『ガウ!』
ん?なんか怒られた?無礼だ的な?
『はっはっは。悪熊、君の声は彼女には伝わらないよ』
「ええっと…まずあなたは?」
『私かい?私はエリストルヴィア。森の神獣だよ』
神獣。
『わうぅ…』
榎が頼むような目でこちらを見る。
『いいよ榎くん。私は誰にも跪けなんて言ってない。なんなら君たちも平伏す必要なんて無いんだよ?』
なんか声が心地良い。
ゆらゆらと揺れるような、ふんわりした声で。
『さて、本題に入ろうか。強くなりたいのかな?』
「え、あ、はい」
『君はもう既に森の一員だね。ならそうだなあ。これをあげよう』
【真実 を獲得】
真実?
『それが何かは自ずと分かるよ。それじゃあね。また会う日まで』
視界がぼやけ、気がつくと森のほら穴に立っていた。
◆◇◆◇
「へ〜なんか面白そうなイベント踏んだね〜」
「訳わかんないけどね。真実っていうの取り出そうとしても不可だし、タップしても何の説明も無い」
クマさん達と別れ、ギルドで休憩&情報共有。
どうやらクマさん達とはいつでも会えるらしい。あのほら穴への行き方教えてもらったし。
「レベリングどうしようかな~」
「あ、そういえば柊ってLV何?」
「24だけど」
「速いね。始めたばかりでしょ?25でクラスアップできるから、一旦そこまで上げたら?」
「海行くか〜」
「あ、闘技場なんてどう?」
「闘技場?」
「LV20から使用可能の施設で、PVPができるとこ。経験値効率高いけど、負けたら負けた分経験値が減るんだよね。同じレベル帯にしか当たらないし、まあ柊なら余裕でしょ」
「へえ」
PVPか〜。PKなら親友たちを助けるためにしたことあるけど…
「それって榎も連れてって良いかな?」
「別にテイムのこと話さなきゃバレないと思うし、バレたところで今のところ狙ってできることじゃないし、良いんじゃない?」
「二対一になるのかな」
「何かしらバランスを取ることにはなると思うよ?まあ行ってみたら?」
「じゃあ行ってみるか」
◆◇◆◇
\ピコン/
【称号:常勝無敗 を獲得】
┣獲得条件:闘技場で三十連勝を達成する
┗効果:レベル帯の少し上からマッチングする。
まさか自分のレベルが自分+テイムモンスターのレベルになるとは思わなかったなあ。
いきなりレベル34が当たったからビビったよ。
まあでもみんなスキルと強化された運動能力に頼りっぱなしで判断力とか対応力に欠けるなあ。
近距離攻撃と拘束系魔法のコンボの凶悪さは分かるけど、もうちょっと苦戦できる方が良いなあ。
現在LV32。めっちゃ上がった。8も上がったよ8も。入り浸ろうかな。
まあ後半あがりにくくなってきてたけど。
三十連戦してたけど、クラスアップしたいから一回抜けよ。
一回広場に移動。
クラスアップ先は…
《対人戦闘狂☆☆☆》
┣人間、またはそれに準ずるものに特効。STRが格段に上がる。
┗解放条件:闘技場で十連勝以上を記録する
《野生戦士☆☆★》
┣自然を愛し、自然を守る。自然を狙う者に対して超特効。STRが格段に上がる。
┗解放条件:称号:大自然のなかまを獲得する
《狂戦士☆☆☆》
┣通常クラスアップ先。
┗STRが格段に上がる。
狂戦士はダメだな。まあ普通はこれなのかもしれないけど。
なんか★がある。なんだこれ。
タップ。
『★』…世界最初、又は唯一の職である証。
シンプルだな。ならしゃもじさんの『城壁人間★』もそうなのかな…
まあ、一番レアそうなやつにしよ。地雷だったとしてもどうせゲームだし。こういうのは思い切りが大事よ。
いつまでもうじうじ悩んで後悔するよりは、適当に選んで適当に後悔する方がいい。
【クラスアップを開始】
【リス様は街中には来れません】
【クラスアップを完了】
うわなんかイベントあったっぽい。早速重めの後悔。
まあいいや。今更なんともならない。
STRが爆上がりしてる。すげえ。
よし、もう少し闘技場で遊ぶか。
マッチング開始。
◆◇◆◇
【PN:漆黒天淵劫火 LV65】
なんかPN中二臭いな。
「へえ。なんかモンスターがいる。君か掲示板で噂になってた人形モンスター」
「失礼だな。人間だよ」
「分かってるって。モンスターが闘技場に来るわけ無い」
「榎はモンスターですよ?」
「テイムねえ。条件教えて?そしたら大人しく経験値をあげよう」
「《縮地》」
LV30で覚えた《縮地》。20秒のクールタイムがあるが、相手の懐に一瞬で移動できる。
間合いがクソな私にはピッタリのスキルだ。
「《転呪》」
殴ろうとしたら目の前に赤い円盤が出現。
殴らない方が良い予感。
即座に足を回して相手の体勢を崩す。
赤い円盤が消滅したのでその隙に殴る。
「いやあ。危ない危ない」
殴ったのは分身だった。
見たこと無いスキル。魔法かそれともユニークスキルか。
もしくはレアジョブか。
初手で縮地使ったのは失敗だったかな。
「《呪鎖》」
赤い鎖が四方八方に出現。
『わうっ!』
大量のツタを絡めるも、ツタが触れた先から腐っていく。
鎖を抜けて相手から大量の火の玉。
だいぶ強いな、この人。
「《鉄拳》《二段撃》」
タイミングを見計らって、殴る。
火の玉は四散。
そのまま鉄拳状態で鎖を掴む。
「鉄なら腐らないでしょ。《踏ん張り》!」
思いっきり振りかぶって、振り下ろす。
鞭のようにしなって相手に迫る。
「《転呪》」
ガキィンと跳ね返り、全く別の壁に当たる。
やはり跳ね返す系だったか。すぐ消滅するところを見るにタイミング重要系のジャストパリィみたいなやつかな。
あ、鉄拳解けた。ヤバ。
うわあ篭手が壊れた!初心者防具にしてはだいぶ持ってたけど、ずっと使ってただけに悲しい。
ついでに十秒握った鎖は崩壊。鉄拳と武器崩壊の呪いのコラボ、強いな。




