FIRST:ゲーム開始!
西暦20■■年。
空前の大ヒットを記録したVRMMORPGがあった。
「ANCIENT WORLD ONLINE」
よくあるタイトル。
「独自のスキル構成と発想力で、新たな自分を楽しもう!」
よくあるキャッチコピー。
CMも無し。
大手企業が全くソフトを出さずに数年、久しぶりにただ無言でリリースした作品。
だがこのネット時代。口コミの速さは恐ろしい。
「神ゲー過ぎw」
「さては広告費を全て内容に回したな?」
「超大作」
CMすらないことに逆に興味を持った者達がプレイし、コメントする。
皆半信半疑、しかも中々に高額。だが或る有名プレイヤーの配信を引き金に注文が爆増した。
リアリティのありすぎるグラフィック。
超高性能AINPC。
完全オープンワールド。
広すぎるフィールド。
完璧な触覚、嗅覚、味覚、視覚、聴覚、痛覚。(ON/OFF可)
美しすぎて芸術とまで言われた絶景の数々に、AIによる∞通りのストーリー。
正にラノベに出てくるような、夢のゲームそのものだった。
開発者達は称賛を浴び、ノーベル賞を授与されることとなったこの作品。
「これが売れなかったら倒産確定の大博打でした。私達の夢の結晶です」
涙と共に笑顔で言った、運営の言葉である。
そんな浪漫の塊。
G ☆ E ☆ T !!!!!!!!
抽選を勝ち抜き、苦節半年。漸く手に入れた。
キャラクリエイト権は一回のみ。
私はただの大学生。自由に使えるのは少しばかりのバイト代。
夏季休暇を犠牲にし、バイト代で手に入れたこのヘルメット型のフルダイブマシン。
これを失敗すれば即ち”死”!!
震える手でヘッドマシンをつけ、起動する。
視界がブラックアウト。
《Hello my master.What languages do you use?》
「日本語」
《了解しました。身体スキャン………完了しました》
《性別:女性 合っていますか?》
「はい」
多様性とかにも配慮されてるのかな。
《キャラクリエイトに移行します》
視界が美しい宇宙のような模様に覆われる。
その美しい海に私は浮かんでいた。
「やあ。ボクはキャラクリエイトと初期設定を担当する、プリチーなウサギさんだよ」
眼の前に白兎の獣人っぽい少年。
「へぇ。名前は?」
「え?だからウサギさん」
「あ、それが名前なのね。」
「さてと、まずプレイヤーネームを教えて」
眼の前にキーボード。
考えていた名前を打ち込む
「ふむふむ『柊』ね。りょーかい。次はキャラクリエイトだよ」
眼の前に自分。そして大量のグラフ。
「それを調整してね。リアルモジュールはできればやめて欲しいかな」
うわぁ。大量のグラフ。
なになに?髪の長さmm単位で決めれるし、親指の第一関節までの長さとか、調整するやついるの?
胸は大きく……できるけど……
チラッとウサギさんを見る。
「なに?」
「なんでもない」
友達のプレイヤーもいるし、やったら負けな気がする。
やめよ。うん。やめよ。
「できた」
結局背も胸もそのまま、体重は体積から計算されるし、邪魔なものは無い方がいい。うん。
「髪の色を白にして目の色赤にして、髪伸ばしただけだね。リアモジュ判定はぎりぎりセーフだから良いけど」
「顔はもともと整ってる自信あるから」
「こうしてみると王子様系だったのがお姫様系になったね。似合ってるよ。高身長でスレンダーなのも綺麗」
「褒めもできる優しい声のダウナー系ウサギさん好き」
「ありがとね。次は職業。えらんで」
青いボードが出現。
選択肢は…〈剣士系☆〉〈弓兵系☆〉〈大盾系☆〉〈槍兵系☆〉〈盗賊系☆〉〈魔術系☆〉〈回復系☆〉〈ランダム〉か。
「一応参考までに言うけど、〈剣士系〉は後々〈大剣士〉とか〈侍〉、〈双剣士〉になったり、〈弓兵系〉は〈銃士〉〈弩兵〉〈砲兵〉になったりするから。詳しくは文字をタップしたら分かるよ。あと〈ランダム〉は極稀にレア職業が取れたりするよ。まあ外れても変更できないからハイリスクだけどね。
あと生産系はゲーム開始後に第二職業としてつけれるから心配しないで」
なるほど…しかも職業進化は書いてあるやつ以外に、稀にオリジナルジョブもあるのか。
ワクワクするなあ。
私はゲームのジョブは特にこだわりは無いけど……前世では剣士だし、前前世では魔術師だし。
……じゃあランダム行ってみるか?
どれも楽しそうだし、別に外れてもいいか。
「お、ランダム?チャレンジャーだね。OK」
軽快なメロディが流れ、大量の白いカードが出現する。
「この中から一枚、好きなの選んで」
どれにしようか。うーん…よし。ここは潔く目を瞑って……!
「これ!」
「ほうほう。あ」
「え?何?」
「おめでとう。レアだよ」
マジで!?何?
「〈狂戦士系☆☆☆〉特徴:武器使用不可、DEF最弱、HP最強、STR最強、AGI強め、MDF最弱、MP無し、SP最強、LUK強め、MAT0」
………なんだこれ。
「レア度は☆☆☆だね。最大☆☆☆☆だから、だいぶレアだよ。☆4は世界に一人だから実質最高レアかな。」
「まってまって。なにこれ。武器使用不可って何?」
「誰もレアなら強いなんて言ってないよ。君にはこれから拳一つで戦ってもらいます。はいこれ〈狂戦士系〉の初期装備。」
渡されたのは布一枚とボロボロのズボン。
「男なら上裸だけど流石に女子だしね。その布巻いてね」
「鬼畜すぎる無慈悲な声の冷徹系ウサギさん嫌い」
「ありがとね」
「褒めてない」
「じゃあ、一名様ご案内。3、2、1、いい旅を」
足元に白い穴が出現。落とされる。
視界が、ホワイトアウト。