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それがなによりの証拠

――「私は、アンナ。あなた名前と出身は?」


―「...ロバート。9番街にいた」


戸惑いながらもロバートはアンナの問いに答える

死の感覚がまだ残っているものの、身体はピンピンしている

恐らく何かしらの特異な「力」によるものであるとロバートは察する


――「今いる場所は私の事務所。10番街よ。」


―「10番街?隣街か...で、あんたは一体何者なんだ?」


街は全部で12の街がある。

一般に街同士は一定間隔の距離がある


――「ここで<歪み>について調査をしているわ」


―「なに!?都市の連中が聞いたら黙ってないぞ!やつらを敵に回すなんて!」


<歪み>への接触そのものは禁じられていないが、調査・研究活動は<都市>から禁止されている。それを破るということは、彼らの実行部隊の武力行使の対象とされるのがオチだ


――「バレなければ平気よ。ここは特別な場所だから」


―「正気か?都市の連中を欺くなんて無理だ...」


――「もし、バレるとしたらあなたからね。だから、行動には細心の注意を払ってもらうわ」

   

―「俺が都市に密告すると言ったら?」


――「大丈夫。それはできないようになってるから。試してみる?」


―「やめとくよ。しかし、なんてことだ。よりによってイカれたことしてる奴に捕まっちまった。依頼主ってより狂気の女王様とでも名乗ったほうがいいんじゃねえか」


ロバートが皮肉めいて言う

<歪み>に関わろうとするのは、総じてイカれたヤツ

というのがロバートの持論だ。実際、都市の組織やならず者たちでさえ、積極的に関わっているかといわれれば決してそうではないだろう


――「ロバート。<契約>が少し一方的だったことは申し訳ないと思ってるわ。でも、ああするしかなかったの。なるべく、あなたが活動しやすいようにするから協力して頂戴」


―「断ったら、またああなるんだろ」


アンナの「申し訳ない」という言葉に少し驚きをみせるが、どのみちロバートに拒否権はない


――「まずは、私の事務所を拠点に活動してもらうことになるかしら。いくつか確認するわね」



アンナは加えていくつか語った。


許可なく自分が死ぬことさえできないこと


ロバートが協力する契約を結んだこと


契約は絶対であり、一方的な破棄はできないこと


報酬は復元したまま、つまり一度命を落とした人間が契約に縛られずにもう一度やり直せること



死ねない


というのはこの世界では都合の良い力である


しかしながら、ロバートは不思議とその力に対して素直に喜べずにいる


――「不死身ではないわ。私の許可なく死ねないだけよ。万が一、私が死亡することがあればあなたごと消滅するから、私のことは守って頂戴ね。それ以外の場合、あなたの復元回数にも限りがあるから命は貴重に頼むわ」


椅子に座りながら何かの書類を整理しながら淡々とアンナは説明する


―「おいおい、冗談だろ。命を捨てろって言うと思えば貴重にしろだとかめちゃくちゃ言ってるぞ。それに残機ってやつか?あと何回ぐらい残ってるんだ?」


――「答えるつもりはないわ。でも、あと一回だけかもしれないし、百回あるかもしれないわね」


―「まさか...、その貴重な一回をさっきああも簡単に使ったのか」


――「あなたが断ったからよ。私のせいではないの」


不機嫌そうにアンナが答える。ロバートは無機質で機械的なアンナにも機嫌というものがあることに安心する


―「あーそうですか。全くあの時死んでたほうが幸せだったかもしれないなぁ」


自分なりに修羅場をくぐってきたつもりのロバートだが

今の現状を表すならば「ヤバい」、「めんどくさい」、「巻き込まれた」である


――「嫌なの?」


アンナが微笑みながら問いかける。


―「嫌じゃないです!喜んでアンナ様の依頼を遂行させて頂きます!」


その微笑みに恐怖を覚えたロバートは背筋を正して、敬礼のポーズを取った


――「アンナでいいわ」


よろしい、というような表情でそう口にする


―「俺を選んだのはたまたまか?」


――「それもあるわ。たまたま。でもそれだけじゃない。あなたは<歪み>と遭遇した時、依頼人を逃がすために庇っていたわ。調査ドローン越しに観察してたの。それに、私は誰とでも契約できるわけじゃないから」


できるわけじゃない、という言い回しからアンナの契約も何かしらの条件があるのだろうとロバートは察する


―「はは、馬鹿だと思ってる。俺はあんたが期待するようなお人よしな人物じゃないよ。あの時逃げなかったことを本当に後悔している。全くなにやってんだか。たぶん、この契約はミスマッチってやつさ」


――「契約が結ばれた。それがなによりの証拠。心配無用よ。」


一つ一つに端的に答えるその口調からは絶対的な自信を感じる


―「それで、俺はなにをすればいいんだ?その書類整理でも手伝えばいいのか?」


ロバートの質問にアンナは作業の手を止める


――「いいえ。あなたにはもっと大事な作業をしてもらうことになってるから」


アンナはその色白の肌とブルーの瞳をロバートへと向ける


――「まずは、あなたを最初に死へと追いやった原因。自然区域に向かい該当<歪み>のデータ収集及び消滅作業をしてもらうわ」


―「はぁ!?」


ロバートの丸くなった目と対照的にアンナの眼光が光る

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