第21話 戦え……
激熱の21話です!
書いてて一番テンション上がったので是非読んでください!
初依頼を終えた僕はミアさんと供にご飯を食べに来ていた。
「ミアさん、どこかおすすめのお店はありますか?」
「そうだね~私のお勧めはあそこのお店かな~」
ミアさんに連れられ僕は「三匹の子豚停」という店に入った。このお店は豚人の三兄弟が経営している人気店のようで店内は多くの人で賑わっていた。
「ん?げっ!!兄者!ミアが来やがった!」
「何だと!?」
店に入ったミアさんを見ると、従業員と思われる豚人は慌てた様子で彼の兄弟に声を掛けていた。
「ミアさん……この店で何かしたんですか?」
「む~。ミアは何もしてないよ~。ポークもそんな発言するなんて酷いよ~。ミアはご飯を楽しみに来ているだけなのにさ~」
ミアさんはそう言って部屋の奥に入っていった。だが、周りのお客さんも全員息をのんでミアさんに注目している様子から、このお店でミアさんの存在は特別なものなんだとなんとなく理解できた。
「ミア……注文は?」
先ほどの二人の豚人より一回り大きな豚人が厨房の奥から出てくる。
「ん~。そうだね~。じゃあ、この暴食猪のステーキでよろしく~」
「はいよ」
店内の謎の緊張感とは別に、ミアさんは至って普通の注文をした。
「そこのお連れさんは?」
「あ、じゃあ、僕もミアさんと同じものをお願いします」
僕が注文を告げると、周りのお客さんが驚愕していたのが気になったけど、店員さんは「はいよ」と静かに告げ、厨房の奥に消えていった。
暫く待ってから、僕とミアさんの前に暴食猪の丸焼きの様なものがそれぞれ一頭ずつ置かれた。
「え……?あ、は……?」
「これこれ~これを楽しみにしてたんだよね~」
僕の身体より少し位大きいくらいの暴食猪を前にして困惑している僕を他所にミアさんは丸焼きにかじりつく。
「ち、ちょっとミアさん!これがまさか暴食猪のステーキ何ですか!?」
「そうだよ~ミアはここの常連だからね~。ミアにとってステーキはこれのことだよ~」
お客さんたちが驚いていた理由がよく分かった。これだけ大きな料理を頼む人間が二人も現れればそりゃ驚くよ……。
「どうやらあの兄ちゃんミアが頼むステーキを勘違いしてたみたいだぜ」
「可哀そうに、あんな貧弱な身体じゃ半分も食べきれないだろうよ」
「ミアのことを知らずに声を掛けちまったんだろうな……。あの様子だと、暴食猪の丸焼きの値段も知らなさそうだな」
そ、そうだった……今日のご飯は僕のおごりなんだ。
「あ、あの……この料理っていくらするんですか?」
店員さんから告げられた金額は今日僕が依頼で得たお金の八割程度のものだった。
「あれ~?シバ食べないの~?」
僕の心境など知る由もないミアさんは美味しそうに暴食猪の丸焼きを食べていた。
「ええい!くそ!!もうやけくそだ!!絶対に食い尽くしてやる!!」
勢いよく肉にかぶりつく。外側の皮は少し焦げており、パリッとした食感と口いっぱいに広がるジューシーな肉がたまらなかった。
「うめえええ!!」
猪の肉だから、硬いかと思っていたが簡単に噛み切れるほど柔らかい。脂肪分も少ないため、後味もすっきりしておりいくらでも食べられる気がした。
「おお!あの兄ちゃん中々いい食いっぷりだぜ!これは、まさか食い切っちまうんじゃねえか!?」
「いいぞ!兄ちゃん!」
周りのお客さんのエールを力に変え、勢いよく肉を食い進める。そして、いつしか僕の食べ進めるスピードはミアさんを超えていた。
「す、すげえ!あのミアの食べるスピードを上回ったうえに食う量も上回ってやがる!!」
「おれは兄ちゃんなら初めからやると思ってたぜ!!」
「むむむ~。やるねシバ。でも、この丸焼きはミアの大好物なんだから、負けないよ~」
ミアさんがそう言った直後、僕に傾きかけた流れが変わる。
「は、はえええ!!これがミアの本気かよ!?」
「くっ!!本気を出したミアがこんなにやべえなんて……これじゃ、さすがの兄ちゃんも……」
「俺らが諦めてどうすんだ!!兄ちゃん!諦めんな!諦めたらそこでゲームセットだぞ!!」
お客さんたちのエールが聞こえるが、ミアさんの驚異的なスピードを前にしてあまりに僕は無力だった。
「どうしたの?シバ?諦めちゃった?」
ミアさんの言葉に僕は手を暴食猪の丸焼きから放した。
「嘘だろ……兄ちゃん!諦めるな!」
「くっ……やっぱりミアには誰も勝てないんだ……」
「兄ちゃんはよく戦ったよ……。誰も兄ちゃんを責めることなんてできないさ」
周りも徐々に僕を称える声と惜しむ声ばかりになっていく。僕自身もよくやったと思う。気付けば暴食猪の丸焼きは残すところ半分となっていた。
だからこそ、僕は諦めない。
服を脱ぎ、パンツ一丁になる。
「きゃあああ!!」
「な、何やってるんだ兄ちゃん!?」
「止めるな!!」
服を脱いだ僕を捕まえようとした客を店主と思われる豚人が止める。
「夢を見せてくれるんだろう?少年よ」
やれやれ……さすがはこの料理を作った人だ。僕のやりたいことなどお見通しらしい。
「ええ……必ずこの料理を食べきってみせますよ」
僕はそう言うと、暴食猪の丸焼きを掴んで上に投げた。そして、宙に浮いた暴食猪の下で反復横跳びを始める。
「うおおおおお!!!」
地面に落ちそうになった暴食猪の肉を食らい、そして再び肉を宙に投げる。そして反復横跳びをする。
「な、何だ!?何が起こってるんだ!?」
「あ、あの食い方はもしかして……食の輪廻!?」
「な、何だそのサイクルなんちゃらって……?」
「今はもう失われてしまった伝説の食い方だ。かつて食い意地の張りすぎた王子がいた。そいつはとにかく食べ物を食べ続けたかった。だが、食べれば腹は満たされる。だから、そいつは動けば腹が減るという点に注目し、動きながら食事をするという方法を生み出したんだ……」
「な……そ、そんなことできるわけがないだろ!?」
「できてしまったんだよ。カロリーを摂取し、そのカロリーを消費する。その流れを止めることなく永遠に続ける……それが『食の輪廻』だ」
「服を脱ぐ必要はあったのか……?」
まさか、この食べ方を一般人の中にも知っている人がいるとは思わなかった。この食べ方を解禁した以上、僕に敗北は許されない!
「み、見ろ!!更に兄ちゃんが加速しやがった!」
「す、すげえ!これならミアにも勝てるんじゃねえか!?」
「お、おい!だから、服を脱ぐ必要はあったのか!?」
「だ、だが、ミアの方は残りが四本の脚だけだぞ?本当にいけるのか?」
「馬鹿野郎!兄ちゃんはいくぞ!」
再びお客さんたちから声援が送られる。負けるわけにはいかない。僕の背中には今までミアさんに敗れていった数多くの戦士の思いがある……。勝者は一人だけ……その勝者に僕がなる!!
「うおおおおおお!!!」
最後の力を振り絞る。この瞬間、きっと僕の動きは音速を超えていたに違いない。ミアさんが最後の一本の脚を食べようとする姿が見える。だが、僕も残すは脚が一本だ。
「「「いけえええええ!!」」」
ありがとう、皆……この一噛みに全てをかける!!
「食らえ!最後の晩餐!!」
僕の胃の中に脚が吸い込まれる。それに対して、ミアさんの口はまだ動いていた。
「「「うおおおおお!!!」」」
歓声が沸き起こり、全員にもみくちゃにされる。全員がこの戦いの勝者を称え、そしてミアという強敵に勝ったことを喜んでいた。そこに種族や性別、価値観の違いなんてものは関係なかった。
ありがとう……全ての食材と料理人、そして、人類にありがとう……。
(服を脱ぐ必要は)あります。
次回予告(嘘)「ミアを倒したシバ!しかし、今のミアは本来の力の8割も出せていないという驚愕の事実が明らかになる!本気のミアに勝ってこそ真の勝者……本気のミアと戦うためにシバは失踪したミアの兄を探す旅に出る!しかし、それは新たなる戦いの始まりであった!次回!『温かい家庭のために……シバ、魂の食事!!』来週も皆で、いただきま~す!」




