Revolution
俺は今、酔っている。
これから俺が向かう戦場は大学の卒業研究発表だ。この発表の結果如何では、卒業が出来ないということも十分に考えられる。この大事な舞台に酔っ払って向かうということは、死に等しい行為だ。酔っ払いながら卒業発表を行う。ばれるだろうか。ばれないだろうか。ちなみに先程風呂に入り、ブレスケアを大量に服用した。匂いの面では問題ないと思う。そして俺は酔いが顔に出る方ではない。唯一ごまかせないのが活舌だ。舌がまわらないことだけは覚悟しなくてはならないだろう。あと、脳味噌もまわらないということも覚悟しなくてはならない。
大学に入学した当時、音楽こそが俺の全てだった。とにかく音楽に関しては頑固に生きてきた。俺が糞だと思うものは糞。俺が良いと思うものこそが良い。周りのアホどもにそれを解らせてやらなければならない。それこそ、俺が凄い、俺が正しいということを周りに理解させる作業をひたすらに続けていった。当然多くの人間に煙たがられたが、それはしょうがないことだ。俺は親切に手を差し伸べてやったのに。理解しない奴らが悪い。とにかく、俺に反旗を翻す奴ら、奴らが間違っているのだ。なぜなら、俺が間違っているわけがないのだから。
そんなこんなで俺は、ロックンロール同好会に入会した。世界一音楽に愛された男である俺にこそ相応しい同好会だ。中学校の頃からギターを練習していた甲斐もあってあっさり入会できた。しかし、その同好会は普通の同好会ではなかった。”ロックンロールな音楽”を愛する同好会ではなく”ロックンロールな行為”を愛する同好会だったからだ。”ロックンロールな行為”即ち”反社会的な行為”を他人に迷惑を掛けない範囲で行う同好会である。
何故その同好会に馴染み、どのようなロックンロールな行為を繰り返したかという過程は省略する。今から考えれば、俺が行ってきたそれらがロックンロールな行為だったかはわからない。しかし、大学4年間の総仕上げとして、卒業研究発表会、もしくは卒業式には何か一発かまさなければならないと感じていた。俺の中のロックンロールスピリットがそう叫んでいるのだ。従って、昨夜部室(同好会室)において同好会員全員でしこたま酒を飲んだ。そして叫んだ。これこそがロックンロールだと!
そして俺は酔っ払って教授連中と対峙する。
酒に、自分に酔っていた。結果は留年。






