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侯爵令嬢の穏やかな生涯  作者: 柏鶏子
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教室へ行けばすでに多くの方が着席されていました。教師に促されて、私も空いている席に座ります。といっても、周りが帝国からの留学生が多くいる席へアレッシア様がエスコートしてくださったので緊張せずにいることが出来ました。顔見知りの方々と目礼して、教師の言葉を待ちます。

 教師は、これからの講義の説明をしました。1年生の時と同様に60分の講義の時間があり、それぞれの科目を組み合わせた日程を熟していきます。

 午前はクラス・学校運営に関する概要を伺い、午後から講義が始まるそうです。

 担任のロック・ニコ先生は生徒会のお話をなさいました。


「成績優秀者並びに品行方正と評価される模範的な生徒は、生徒会へ推薦されます。生徒会は学校運営を生徒主体で進めるための自治組織です。そこで思う存分手腕を揮っていただきたいと私は考えています。

 貴方たちは貴族です。領地運営や政治に関わるものは華々しく見えますが、地道な努力と目立たない仕事で出来ています。生徒会はその他委員会と同様に、それ以上に堅実に仕事を熟していく意義を知ることが出来るでしょう」


 この学園は貴族養成を目的にしているだけあって、全てを学生の糧にするように諭しています。ニコ先生のお言葉に、私は気を引き締めねばと口をきゅっと引きました。生徒会には所属できないかもしれませんが、私の平和な学園生活を送る裏では奮闘している同年代の方たちがいることに感謝せねばなりませんね。

 委員会は学級委員会、風紀委員会、保健委員会、美化委員会、図書委員会、広報委員会があります。


 学級委員会は円滑なクラス運営のための組織でクラスから代表者2名が選出されます。そして、各クラスを纏めたりするのですって。


 風紀委員会は校内の風紀を守る組織ですって。聖女教育を受けた方たちが多く就くことがあると聞き及んでいます。私は礼を失したばかりですから、所属できないでしょうし、何より睨まれてしまうのではと不安です。


 保健委員会は保健に関する啓蒙活動や保険医と連携した救護活動ですって。これから私はとてもお世話になりそうですね。


 美化委員会は清掃活動や校内の補修作業、それに中庭の花壇やガセボの監修、サロン室の調度品監修も行っているとのことです。美的感覚を磨くにはうってつけですが、それが高じて趣味になさる方もいるのだとか。ガセボ周りのバラ園も美しかったのですもの。癒されますからね、気持ちはよく分かります。


 図書委員会は図書室の本の選定や補修作業が主ですって。本と触れ合える時間が沢山あるのは良いことですね。それに、創作活動も推進しているとのことで、委員会は独自に発行した同人誌があるようです。どんな内容なのかしら、気になります。私が帝国中の本を読み漁って家に私専用の書庫を増やしたあの頃も、同人誌は大好きでした。専門書とは違った、その方ならではの感性が交じった文面は心が温かくなりますの。

 お花に、お城に、絵画、ゆで卵やバターの事について熱く語られる同人誌は飽きるものではないでしょう? 是非、図書委員会発行の同人誌を読みたいですわ。直ぐにでも訪ねに行きましょう。


 広報委員会は広報を一手に請け負っています。学園のパンフレットも広報委員会は外部の顧問をお招きして一緒に作り上げたのですって。それだけでなく、各委員会の取り組みも発信しています。学外にも喧伝しますから、広報委員会の腕によって大きく入学希望者数を伸ばした実績もあるのですって。凄いわ。


 結局、私はどの委員会にも所属する気が起らず、挙手をされてその任を任された方たちを見ていました。いいえ、どの委員会も素敵だったのですけれどね。初めてに飛び込むには勇気がいりますし、今からちょっとだけ気疲れを感じてしまいましたの。まだまだ日は高いのに、今から疲れを感じているようじゃ少しだけ先行きが不安ですね。


 午前の講義時間が無事終わり、昼食を摂るために私は迎賓館へ戻りました。学園の食堂もあるのですけれど、生徒が一挙に押し寄せるでしょう? 勿論、中庭やサロン室で昼食を摂られる方もいらっしゃるでしょうけど、学園の食堂は人が多くいるでしょうからとベッカ達が迎賓館の食堂で昼食を摂ることを勧めてくれたのです。

 それに学園の食堂には様々なメニューがありますが、私の為にまた新しく拵えて頂戴なんて言えません。それよりは迎賓館にて私の献立を作ってもらう方が遥かに楽でしょう。

 私が席から立ち上がるとレシェク様達もご一緒したいと仰ってくれて、共に迎賓館へ向かうことになりました。


「でも、よろしいのですか? 皆様と昼食をともにしたい方もいらっしゃるでしょうに」

「ふふ、しかし初めての学園生活に緊張している可愛い人と一緒にいたいのも事実だから」


 私の問いに、片目を瞑りながら茶目っ気で返すレシェク様にお兄様を彷彿とさせたので一瞬だけハッとしました。私が疲れてしまった事を察して寄り添ってくださる姿勢に私は血族の縁のを確かに感じましたの。

 「血族は助け合う、それが政敵であろうとも恋敵であろうとも」と幼いころから懇々と諭された両親の言葉が胸に沁み、お兄様の「レシェク殿下に頼るように」とお言いつけになった意味が分かりました。

 そして、レシェク様に追従するように私に寄り添ってくださる皆様へ、ある決意をそれはもう轟轟と燃やすきっかけとなったのでした。




 迎賓館の前には、それぞれ帝国から付いて来た従僕の姿がめいめい並んでおりました。そしてその先頭が私の心の支えであるルビーです。

 ルビーは腰を折って出迎え、迎賓館の食堂まで案内してくれました。学生とはいえ国賓を迎える迎賓館が抱える料理人の腕は一流です。見栄えにも気を遣い、格式高いコース料理を提供することもあるでしょうが、次の講義が控える昼食ですので学園の食堂と似た形式で用意してくださったようでした。

 学園の食堂はワンプレートに各々好みの料理を盛りつけるのですって。お兄様が通っている帝国の寄宿学校では、長テーブルに沢山のお料理が大皿で置かれていてそれを自分の皿に取り分けるようですけれど、違いがあるのね。

 ここではすでに取り分けられており、私の盆には一枚の皿に盛られたいくつかの料理とスープがあります。そして、テーブルに座って皆様と一緒にナイフを取りました。

 その感動といったら! 万感の思いでスープを口にしました。さっぱりとしたスープは口当たりがよくまろやかです。トマトと玉ねぎが浮いていてシンプルな味付けなのに美味しいですね。

 そして何某かの豆を煮つけたものと、2切れのパンにのる鴨の薄切りのロースト、具材がごろごろ入ったキッシュ一切れ、そして私の大好きなアリゴ! 少しのピクルスに、酢のソースがかかった焼き野菜です。 

 とてもシンプルで、素朴です。フランセイスの美食を目当てにしている方には物足りないかもしれません。華美で豪奢と聞きますものね。でも、流石美食の国と名高いフランセイスです。素朴でも美味しくって美味しくって。

 美食を学びにいらしたマルセル・シャルトル様は、それはもうニコニコとフォークを口に運んでらっしゃいます。そして私に、お料理の解説をしてくださいました。マルセル様は「私は食道楽なんです」と仰いましたが、舌がとても鋭敏な感覚を持っているようです。


「一般的には肉の下処理は叩いたり、玉ねぎで和えたりして肉を柔らかくしますが、これは蜂蜜を使っているようですね。蕩ける触感と仄かに感じる蜂蜜が焦げた苦みが料理に良いアクセントを与えていますね」


 と、弁舌さわやかに仰いますとこちらも何倍もお料理が楽しくなるというものです。お喋りをしながらお料理を楽しむ良い時間を教えてくださいました。



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