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侯爵令嬢の穏やかな生涯  作者: 柏鶏子
13/50

『親愛なるエラ


 寄宿学校で面白かったことを書こうかな。僕は小等部から寮の4人部屋で寝起きしている。このメンバーは余程の理由が無ければ高等部まで持ち上がりなんだ。僕の今のメンバーもそうだよ。アーロンにチェスターにピーター。

 小等部生の頃、アーロンが悪戯をしたのがばれて連帯責任でルテン語の課題が追加されたこともあったよ。寝る間も惜しんで単語の書き取りをして。でもそうして自立することを学ぶんだってさ。ピーターとそのことで喧嘩してたけど、でも中等部生まで一緒にいると、やっぱり息もあってくる。

 ピーターは昔、よく「早く監督生になって個室を貰って、アーロンのとばっちりから解放されたい」なんて零してたけど、今はどうかな。今更、個室なんて寂しいかもね。

 休日になれば外出許可を貰って街へ行くんだ。移動式のアイスクリーム屋さんがあってさ、高等部の先輩はよくそこにたむろしているよ。気前が良ければ奢ってくれたり。学生に人気なのはチョコレートやバニラなんだけど、チェスターはナッツだって言うんだ。

 チェスターは帝国の西南の方でナッツのアイスを食べたんだって。チェスターの言うことなら間違いないって皆で頷いたよ。チェスターは舌が良くて、料理に妥協を許さないんだ。

 普段はニコニコして温厚なのに。

 

 長期休暇に入ると皆それぞれ帰省するんだ。高等部の先輩たちはずっと研究室にいるけどね。だから高等部になったら休みが無くなるんだってチェスターが怯えていたよ。だから休みを満喫しなくちゃ、だってさ。

 チェスターとピーターとアーロンの領地は近くないけれど同じ列車に乗っていく。鉄道が帝国をぐるっと一周するように敷かれていて、それぞれの駅に降りて、馬車で乗り継いでいくよ。僕は馬車で帰れるから、いつも皆を見送っている。

 一番遠いアーロンは、寝台車で帰れたらってこの時期になるといつも愚痴を零す。聞いてみたら、深夜になるかならないかで領地に到着してしまうから、体がへとへとのままで辛くって多少高くてもいいから寝台で寝転びながら移動したいんだって。

 大変だよね。休み明けのアーロンの体を気遣おうと思ったよ。

 エラは覚えてないだろうけれど、僕たちも小さいころ一度だけ、列車に乗って領地へ行ったことがあるよ。緑がいっぱいの涼しい土地だ。羊がいて美しい川があって、料理もあちこちの領地から影響を受けているから沢山ある。

 アーロンたちの領地自慢を聞いていると、エラと一緒に旅客列車で帝国中を回ってみたくなるね。アーロンの領地は温泉と美味しい豚肉、馬と一緒に豚の世話をすることもあるんだ。チェスターのところは農業や漁業、牧畜も有名だけど特に花の栽培をしているのがイメージにぴったりだ。ピーターの領地では文学や芸術面の保護を手厚くしていて、沢山の名のある方をお招きしてサロンの開催や講師としてお話を伺う機会が多く持てるそうだよ。

 夢の中で一足先に行ってみるのも悪くないね。今日も良い夢を祈って。

アディ』


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