10.山の冒険
ある事件が起きる前に有った出来事です。
冒険探検楽しいな。です。
ザクスは数日森の中を彷徨っていた。
「今回は遠くまで来たなぁ。山って近くまで来るとこんなに見上げるくらい斜面がきついんだなぁ」
5日前にローレム村を出て森の中をゆっくりと進む。
身を隠すためのフォグラットを加工したマントを羽織り、ブラックウルフのナイフを腰に挿し、スモールタートルをくみ上げて作った簡易な鎧を体に付けている。
体に霧を纏い、魔物の気配を敏感に感じ取りながら慎重に行動していた。
気を張りながらゆっくり森を移動する。
その中で洞窟や採取できる薬草、生息する魔物の種類などを確認しながら探索する。
夜になる少し前に拠点を決め、罠を仕掛ける。
朝には罠にかかった魔物を処理して、素材と食料にする。
サバイバルである。
見知らぬ場所、見知らぬ物を目にして知識を蓄える。
経験を積み、考察する。
森の魔女のデロからもらった知識も活用して新たな地を目指していたのである。
「ふぅ、斜面を登るのって体力を使うなぁ」
ザクスは汗を拭きながらゆっくり斜面を登る。
ザクスの心理は今、単純である。
見たことのない場所だから探検する。
目の前に山があるから登るのだ。
それでもここは魔物の跋扈する地。
息が切れていても魔物が近寄れば無理してでも息を止め身を潜める。
酸欠になっても魔物に見つかるわけにはいかない。
「こ、ここの魔物は森の魔物より強そう。牙とか爪とか鋭いだけじゃなくて体についてる傷跡が歴戦って感じがする」
狼型の魔物が周りを見回しながら我が物顔で闊歩している。
息を潜め魔物が通り過ぎるのを待つ。
ザクスの頬を汗が滴り落ちる。
魔物の顔が一瞬ザクスの方を見て止まる。
ザクスは見つかったか?と緊張の度合いを高めるがその時、ザクスを覆うような大きな影が上空を通り過ぎる。
ザクスが上を見上げる。
先ほどまでは遥か高くを飛んでいた鳥が急降下を開始していた。
その鳥はどんどん高度を下げてくる。
ザクスが唖然と視線を上げているのだが、先ほどの魔物も空からの気配に気づいたのか空に向かって警戒を始める。
ザクスはその鳥の大きさに度肝を抜かれる。
とてもとても大きいのだ。
まさに怪鳥。
その怪鳥は得物を狙う目をして降下してくる。
ザクスはその怪鳥が何かを狙うか探りを入れるように見つめるが鋭い目つきで自分ではない何かを追っている事だけがわかる。
ザクスは自分ではないと安堵の気持ちになるが、大きな鳥の大きさが想定外だったため緊張感が緩むことはなかった。
鳥の視線を追いかけるようにザクスは息を潜めながら視線を動かすと、先ほど観察していた魔物、狼型の魔物を狙っていることに気付く。
狼型の魔物は必死に逃げ出す。
大きさが明らかに勝てるサイズではない。
いくら弱肉強食であろうと喰われるものも無抵抗ではない。
狼型の魔物は仲間を呼ぶ。
そして、必死に散開したり、爪や牙を立てたり、土煙を上げたりと命を繋ぐための決死の抵抗を行う。
ザクスが見ている間に殲滅された。
そのほとんどが鳥に呑み込まれ、ザクスをして感心させていた魔物も同様に鳥の胃袋の中に仕舞われてしまう。
「あ、あんな鳥の魔物が居るのか……空にも警戒しないといけないな」
狙われたのが自分ではなかったことに心底安心を感じ、肝を冷やす。
そこから何度も肝を冷やすような景色を目にする。
それでも、ザクスは登頂に成功する。
「一番高い所に着いたぁ。景色がいい!」
ザクスが見渡す景色は絶景だった。
ザクスは警戒を解かずに行動していたが、それでも、装備がザクスを隠す。
フォグマウスのマントが霧を生みザクスの存在を霞ませる。
装備がザクスを守り、遮るものがない山頂で姿をさらしたザクスを助けるのである。
ザクスは広大な森林を目にし、ローレム村からいつも散策する森の雄大さを感じ、その奥に小さく見える平原の先に自分の住むローレム村を確認する。
また、山を見下ろすと、大きな鳥の巣を見かける。
巣の中にごろごろと卵が転がっている。
「もしかしたら、あの鳥の魔物の巣なのかなぁ。近寄らないのが一番だよね」
ザクスはもう一度視線を上げて、景色を見てから下山した。
そこから再びゆっくりといろいろな素材を確保しながら、村に帰る。
それからしばらくして、怪鳥事件が発生するのである。
ここでの経験があってザクスはある事件で多くの人の救助に成功するのです。
この話を読まなくても物語上全く影響はないのですけどね。
のんびり山登り楽しいですよ。
日本では、カモシカやイノシシ、クマ、ウサギ、リスなどが見れますよね。一部危険動物ですけど。




