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第三章 早太郎

今回のメインのお話は、実際に長野県光前寺に伝わるお話をもとに、作者が脚色をくわえたものです。

原典は、「幻のニホンオオカミ」(柳内賢治著 さきたま出版会)によりました。

 その後、町内のうわさはミナグロのことでもちきりになった。

 山登りの人間が喰われたり、ミナグロ退治の猟師が返り討ちに遭ったりした。

 次の「お炊き上げ」の日、いつもの場所に行くと、山津見たちが、険しい顔をしていた。片曽根に天玲、安達太良もいる。

《ミナグロがわが子磐梯を殺した。》

 片曽根の《声》が聞こえる。

《それだけじゃない。人間も殺した。》

 山津見が言った。

《人間とは干渉せず、程よい距離を保つ。それが山に生きる者の掟だ。ミナグロはそれを破った。》

 山津見がさらに言った。

《ここは、わが祖先、早太郎にならい、ミナグロを討つべきだと思う。》

「みんな、今日も来たよ。とりあえず、お赤飯食べて、元気を出して。」

《あぁ、ありがとう。愛美。》

 おひつを置くと、山津見たちが中身に口をつけた。でも、その食べ方もなんか元気がない。

「ねぇ、さっき言ってた早太郎って何?」

《愛美には話してなかったか。おれの祖先だよ。》

 そう言って、山津見は、語り始めた。

                   













 今から600年以上も前のことだが、人間たちが遠江国とうとうみのくにと呼ぶところに、見付天神みつけてんじんという神社があった。

 そこでは毎年、それは盛大に裸祭が行われていた。しかし、そこでは、年ごろの娘を人身御供として差し出さねばならなかったのだ。

 ある日、旅の僧侶がこの祭りのことを聞いた。

 僧侶は大変に怒り、人身御供を求める妖怪を退治しようと決意した。

 山に伏し、野に伏し、難行苦行の日々が続いた。その結果、妖怪の言葉が理解できるまでになった。

 そして、ある日のこと。

「信濃国の早太郎にだけは、人身御供を出させてることを言うなよ。あいつを怒らせたら怖いぞ。」

 そう妖怪たちが話しているのを聞いたという。

 僧侶は早速、村人にわけを話し、信濃国に向かい、早太郎なる者を探すことにした。

 そしてとうとう、信濃国赤穂の宿場で、宿の者にきいたとき、相手は即座にこう答えたという。

「早太郎というのは人間じゃない。この近くの光前寺というお寺で飼っているオイヌサマだ。住職さんにきいてみればいい。」

 僧侶はすぐさま光前寺へ出向き、住職に事の次第を話し、早太郎というオイヌサマを貸していただけないかと頼んだ。

 早太郎をつれ、見付の里に戻った僧侶は、村人と相談し、娘の代わりに、早太郎を木箱に入れて差し出すことにした。

 その夜、村人と僧侶が神社を遠巻きにして見ていると、すさまじい山なりとともに、妖怪が姿を現した。

 妖怪は、おかれた木箱に近寄ると、無造作にふたをはぎ取った。

 その瞬間、早太郎がすさまじい速さで飛び出すと、猛然と妖怪に襲いかかった。

「ウォォォン、ウォ、ワオォォォン!!」

「ギギッ、ギャッ、キィィィ!」

 あたりには、早太郎と妖怪の叫び声だけが聞こえる。

 村人たちは、息をひそめてこれをみまもった。

 早太郎と妖怪は、いったん離れてにらみ合った。

「グルルルル・・・・・・」

「ギィィィ、ギッ、ギィィィ」

 お互いのすきをうかがっているようにも見えた。

 先に行動をおこしたのは、妖怪のほうだった。

「ギヤャャャァ!!」

 すさまじい叫び声をあげて、早太郎にとびかかった。

 早太郎はそれを軽くかわすと、妖怪ののどにかみつき、飛びずさった。

「ギャァァァァァ!」

 のどの肉がちぎれ、もだえる妖怪。

 そのまま、動かなくなった。

 次の朝、村人たちと僧侶が見付天神の境内に入ってみると、巨大なサルと早太郎が倒れていた。

 サルは完全に死んでいた。

 早太郎も血にまみれている。

「もしかして、死んでんじゃねぇのか?」

 村人の一人が近づくと、早太郎はシャンとして起き上がった。

 体の血のほとんどは、サルの血だった。

「ありがとう。」

「お疲れさま。」

 村人の心からのお礼ともてなしを受けて、早太郎は僧侶に連れられ、光前寺へと帰った。

                    













《この早太郎こそ、わが一族の祖先だ。》

 山津見が言った。

《ミナグロも人を喰った。裏切り者だ。我々は、ミナグロを討つ!!》

 山津見がさらに言った。

「わたしも行きたい!!行かせて!!」

 わたしは思わず叫んでいた。

《では、神主様に許可をもらってくれ。その間に我々は一回、ミナグロを追ってみる。》

 そして、山津見たちは、木立の奥に消えていった。 

御先愛美・・・・ではなく春野雄太のオオカミ講座

 え~、皆さん、こんにちは。今回は、愛美のヤツがインフルエンザで寝込んでいるので、俺、春野雄太がお送りします。(棒読み、カンペを見ながら)

 今回は、この番組に寄せられた質問にお答えしていきたいと思います。

 まずは、福島県にお住いの狼森優太郎さんからのお手紙です。「オオカミはドックフードを食べますか?」

 はい!オオカミは、一応「食肉目イヌ科」ですので、ドックフードは食べます。ほかに、ヨルダンのほうではブドウ園でブドウを食べる様子も観察されています。(犬にブドウを与えてはいけません)

 動物園では、老齢のオオカミのために水でふやかしたドックフードを与えるそうです。

 はい、続いては、広島県にお住いの神崎永信さんからのメールです。「オオカミは満月の時しか吠えないんですか?」

 これはですね・・・・オオカミは、満月だろうが新月だろうが明るかろうが暗かろうが必要に応じて吠えます!天候と吠え声との関係性は一切ありません!ちなみに・・・・・・遠吠えをしているとき、オオカミはうっとりとした表情で、目は完全に逝っちゃってます。

 それでは、今回はこの辺で失礼します。お疲れさまでした。

・・・・・・・一方そのころ、狼神社社務所にて・・・・・・

愛美「う~~~~~、雄太、ちゃんとやってくれたかな・・・・・・心配だな・・・・・・」

 愛美、現在インフルエンザで療養中。

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