幕間 狼神社神主の独白
「ふぁ~あ」
わたしー狼神社神主の春野武信は、本殿の縁側に腰を下ろすと、あくびしながら体を反らした。
背中の筋肉がほぐれてくのが分かる。気持ちいい。
(そういえば・・・・・)
今日はアイツらいないんだったな。
うちの息子、春野雄太とその妹分御先愛美は、いろいろあって出かけていそる。
ピリリリリッ!ピリリリリッ!
突然、電子音が鳴り響いた。
作務衣の懐から携帯電話を取り出す。
「もしもし?」
「はい、ニホンオオカミ保護センターの秋葉です。この前お預かりしました絵巻物についてお話があります。」
「はい、なんでしょうか?」
わたしが問うと、秋葉さんは言った。
「ほんの些細なことなんですけどね。絵巻物に描かれている人が愛美ちゃんと雄太君にそっくりでして。他人のそら似ですかね。」
「ええ、多分そうだと思いますよ。」
そう返して電話を切ると、わたしは大きくため息をついた。
(やはり、言い伝えは本当だったか)
この神社には、代々伝えられた言い伝えがある。
かつて悪しき熊神を退治した先祖は、千五百年後に生まれ変わる。
そのとき、再び熊神が現れ、生まれ変わりの二人はそれを退治る。と。
(あの二人は、まさに絵図に描かれた先祖に生き写し。)
あの二人と絵図に描かれた先祖を見たとき、確信したのだ。
あれは、先祖の生まれ変わりだと。
そして、再び人食い熊が現れ、愛美たちは黒狼山津見と白狼吾妻に率いられた群れとともに旅立った。
(しかも雄太。社宝「破邪ノ短槍」まで持ち出した。)
これは、先祖が熊神退治に用いたものだ。
(それを持った先祖の生まれ変わり。あの二人なら大丈夫だろう。)
わたしは少し安心すると、社務所に向かって歩き出した。




