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詩の書き方の始め方

作者: につき()

 まず、表現することです。そのために、易しい抒情詩を書くことから始めるべきです。(優れた抒情詩はありふれていそうで奥深いのです。)もしも、あなたの気性が獰猛かつ狂気に満ちていなければ、ですけれども。まあ、そんな方は違うことで才を発揮するべきだと思いますので。多分会話が通じないでしょうし。そして、自分自身のこころの声(内的に己が語る声)が聞こえない(つまり黙読が出来ない)、という方もご遠慮下さい。わたしにはその状態が想像できませんので。

 さて、大抵詩を書きたいなどと思われる方は、何か抱えています。その何かとは?それを言葉にするために詩を書くと考えている方へ。そしてその通りでもあり、そうでないとも言えます。後述しますが、それはメタファー(暗喩)として全てに現れる故です。痛い悲しい辛いを文字列にしても、最もダイレクトな詩が一遍書けるだけでしょう。もっともその詩があなたにとって大切なものであることは確かですが。しかしパターン化するべきでない。テーマとは、刻々と移ろう光のように、濃淡が光から影を生むように、今の一瞬にだけあるものなのです。外界より入って来る全ての刺激に、メタファーが含まれている。それはあなただけが感じるもの。世界全てに含まれているメタファーは、あなたの隠された想い。感情です。だから誰もが異なる世界を感じ、誰もが異なる表現を成し得るのです。

 話を戻しましょう。抒情詩とは、感情の詩です。感じた美しさを文字列で表したものです。概ね素直な言葉で表現された詩のことです。月星の冷たい光を。太陽の眩しい暖かさを。雲の白さと雄大さを。海の絶え間なく続く波の音を。花の咲く不思議と可愛らしさを。そうして日々の小さな幸せを。綴るように、語るように、文字列が連なる詩です。あなたの一番純粋なところで、感じたことをそのままに言葉にしてください。体裁は後回しです。さあ。はじめましょうか。

 とはいっても、いきなりは無理だ!という方へ。わたしのおすすめは金子みすゞですね。かの方の抒情詩は童謡的であり、温和でかつ悲しく深い。詩は述べず語らず、です。彼女の詩には句読点がありますが、散文的でもあっても述べてはいません。語ってもいません。透き通る詩のエッセンスが読後に残ります。例えば、

***

水と影(金子みすゞ)


お空のかげは、

水のなかにいっぱい。

お空のふちに、

木立ちもうつる、

野ばらもうつる。

水はすなお、

なんのかげもうつす。

みずのかげは、

木立ちのしげみにちらちら。

明るいかげよ、

すずしいかげよ、

ゆれてるかげよ。

水はつつましい、

自分のかげは小さい。

***

とても好きな詩の一つです。この詩人の言葉も洗練されていて無駄がありません。それでも難しい文言は一つもない。平易な文言で深淵を表現している。言葉の練度ということはありますが、表現は内的な充溢より輝きが増すのです。或いは感性のアンテナの鋭敏さと己のメタファーに対する目覚め。言葉とは表に出た姿だけでなく、込められたメタファーが固有性を持つものです。つまり、それが高じれば言霊であり、呪ともなりえるのです。詩とはそこへ至る透明な道すじでもあるのです。

詩文はシステマチックに作成出来るものではない。だからこそ、もしもAIに本当の詩が作れる時代が来たならば、それは人間が人工的につくられたことを意味するだろう。

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