マシンスレイヤー
ミミルは大まかな事情を話し終えた。
オウカが機械の体に改造されてしまったこと。
兄のオウガと戦わされていること。
ミミル達のせいでオウカが不利な状況に陥ったこと。
そして、プラントというものを壊せば戦いを止められるということを。
「それで、私のせいでピンチだから、勝たせてあげたいの」
「余計な厄介事を抱え込んだものだな」
「…………」
後ろめたくなってミミルはオヴァンから目を逸らした。
ミミルの手が痛む左胸を押さえた。
「協力はしよう」
「良いの?」
「ああ。その代わり、後でちゃんと話し合いをしよう」
ブルメイはいつだって自分の味方だ。
きっとお姉ちゃんからも守ってくれる。
そう思うとミミルは嬉しくなった。
「うん!」
ミミルは耳をぴょこぴょこさせながら答えた。
「かたじけないであります」
オウカが礼を言った。
「良し。さっさと終わらせるぞ」
オヴァンはそう言って部屋の出入り口の方へ歩いて行く。
「そっちじゃないであります」
「……………………」
オヴァンは足を止めた。
「ぷはっ!」
レミルが噴き出した。
オヴァンは黙ってレミルを見た。
「悪いって、そう睨むなよ」
「別に、睨んではいない」
オヴァンはオウカの方を向いた。
「……案内を頼む」
「了解であります。こっちの方が近いのであります」
オウカはオヴァンがブチ抜いた壁から外へ出た。
一行もそれに続く。
オウカの先導でズンズンと進んでいく。
オウガは左右対称の遺跡のちょうど反対側に居るらしい。
オウカの後ろにミミル、その後ろにオヴァンとレミル、最後尾にハルナという配置で進んでいく。
「オヴァン……」
レミルがオヴァンに小声で話しかけた。
「何だ?」
「ミミルはお前の言うことなら聞くんだな」
「そんなことは無いと思うが……」
「そうか?」
「そうだ」
それからなんとなく押し黙り、黙ったまま遺跡を進んだ。
やがて、一行はロボットと遭遇した。
「青い……?」
ハルナは疑問を綴った。
出現したロボットはこれまでの色と違っていた。
これまでのロボットが赤を基調にしていたのに対し、このロボットは青を基調にしている。
「色に深い意味は無いのであります」
オウカが疑問に答えた。
「あれは敵ということで良いのか?」
「その通りであります。攻撃するのであります」
「……わかった」
オヴァンがロボットの方へ近付いていく。
すると、ロボットが仲間を呼んだのか、ぞろぞろと増援が現れた。
……。
多少の数などオヴァンにとっては何の障害にもならない。
オヴァンは出現したロボットをあっという間に蹴り倒してしまった。
後にはただの鉄の残骸だけが残った。
「凄いのであります……!」
オウカは驚嘆の声を上げた。
「オヴァンはひょっとしてロボットなのでありますか?」
「いや、ドラゴンだが?」
「ほむ? ドラゴン並に鍛えているということでありますね」
オウカはオヴァンが転生者であることを知らない。
それでただのたとえ話と受け取ったようだ。
「案内の続きを頼む」
「わかったのであります。オヴァンが居れば百人力であります」
オウカは再び先頭に立った。
その足取りは軽い。
レミルの近くへと戻ったオヴァンにミミルが声をかけた。
「ブルメイ、なんだかお姉ちゃんと距離が近くない?」
「この方が守りやすいからな」
オヴァンはハルナとミミルのことは信頼していた。
だからこそレミルを守るべきだと考えていた。
それがミミルには不満だったらしい。
「お姉ちゃんは私が守るから、ブルメイが守る必要は無いわ」
ミミルがレミルの手を掴んだ。
オヴァンから引き離していく。
レミルは苦い顔をした。
「おい……! 妹に守られるなんて情けねぇことが出来るかよ……!」
「ブルメイに守られるのは情けなく無いの?」
「それは……。オヴァンは男だから……。女が守られるのは、普通だろ?」
そう言ったレミルにミミルは蔑むような視線を向けた。
「古臭い考え。森の掟みたい」
「古臭くなんかない。あの掟は……」
「後にしてくれる?」
レミルの反論をミミルが断ち切った。
冷たい妹の態度にレミルは二の句が継げなくなってしまう。
……。
「…………」
一行は完全に無言になっていた。
ピリピリした雰囲気を纏いながらも一行は先へ進んでいく。
普段はミミルがパーティのムードメーカーの役割を果たしていた。
そのミミルが珍しく不機嫌なので必然的に暗くなってしまう。
楽しそうなのは先頭のオウカだけだった。
途中、何度かロボットに襲われたが、特に問題無く撃退した。
雰囲気とは裏腹に一行の歩みは順調だった。
「あれは……?」
それはオヴァン達が何度目かの曲がり角を曲がった時だった。
オヴァンの視界に大きなロボットが映った。
平べったく前後に長い胴体の左右に蜘蛛のような長い脚が六本。
胴体の厚みが90セダカ程度なのに対し、脚の長さは4ダカールほど有った。
「大きい……。まさか、あれがオリジナル?」
ミミルが言った。
「いえ。オリジナルの大きさはこんなものでは無いのであります」
オウカの言葉を聞いてオヴァンの背に妙な寒気が走った。
「あれより大きいのが有るってのか……!?」
レミルが呻いた。
「気をつけろ。デッドコピー級かもしれん」
オヴァンは金棒を構えた。
そして跳んだ。
金棒が大上段からロボットの胴体に叩きつけられる。
ロボットの脚が衝撃に耐えきれず、バキバキとへし折れた。
脚を失ったロボットの胴体は地面へと沈んだ。
ロボットの胴体にオヴァンの金棒が大きな溝を作っていた。
ロボットは溝からバチバチと火花を散らした。
それきりロボットが動き出す様子は無かった。
オヴァンの一撃で完全に機能を停止したらしい。
「デッドコピー級でしたか?」
ハルナが問うた。
「わからんが、もう静かになった」
「そうですね。行きましょうか」
そう書いてハルナは先導者のオウカを見た。
「本当に……何者なのでありますか? あの男は……」
オウカがミミルに尋ねた。
そうして返ってきたのは……。
「凄いでしょ」
ミミルの自慢気な……そして、少し寂しそうな笑みだった。




