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原初を継ぐ者

「オリジナルを継ぐ……? それは、オリジナルの管理人ということかしら」


 そう言いながらミミルが思い浮かべたのは小人の少女、クザンの姿だった。


 彼女はレイクローンの守護者をしていた。


「管理人? いえ。所有者となる者でありますが」


「変ね。私達、オリジナルが貰えるって聞いてここに来たの」


「誰に言われたでありますか?」


「オリジンのお友達の、レイクローンっていう人よ」


「そうでありますか。知らんヤツでありますね」


「オウカが『デトネイター』に選ばれたのはもうずっと前のことであります」


「何か……行き違いが有ったのでありましょう」


「そう……。オリジナルはあなたのものなのね」


「いえ。厳密には違うのであります」


「どういうこと?」


「実は、デトネイターはオウカ以外にもう一人居るのであります」


「え……?」


「その人物の名前はオウガ=マージンゲイル……」


「オウカの双子の兄であります。そして……」


「オウカの命を狙っている男でもあるのであります」


「どういうこと?」


「オウカはその兄と、戦わされているのであります」


「戦わされているって……誰に?」


「『テッカ』であります」


「かつて、オウカは捨てられた子供だったのであります」


「村から捨てられ、この山で餓死を待つのみの存在だったのであります」


「ですが……オウカ達は偶然にも迷い込んでしまったのであります」


「この遺跡へと……」


「遺跡には、テッカという遺跡の管理者が居たのであります」


「テッカの所へたどり着いた時、オウカ達は既に虫の息だったのであります」


「オウカ達はテッカに救いを求めたのであります」


「テッカは遺跡の力でオウカ達をこの体へと改造したのであります」


「オリジナルの所有者である、機械人間、デトネイターの姿へと」


 そう言ってオウカは胸の金属版に手をかけた。


「何を……?」


 オウカが金属版を開くと、オウカの体の中が露わになった。


「酷い……」


 ミミルの顔が歪んだ。


 オウカの体内には人間の内臓らしき物は一つも無かった。


 ただ、機械の心臓らしきものがドクドクと脈打っていた。


 オウカは金属版を閉じた。


「テッカは言ったのであります」


「お互い戦って、どちらが真のデトネイターに相応しいか、決着を付けろと」


「それからずっと、オウカはオウガと戦わされているのであります」


「テッカから与えられた力を使って……」


「そんな……家族と殺し合いをさせられているの?」


「そうでありますね。少なくとも、オウガはやるつもりのようであります」


「ただ……殺さずに戦いを止める方法は有るのであります」


「えっ? どうするの?」


「オウカ達は、『製造プラント』という機械を使ってロボットを生産しているのであります」


「オウカもオウガもお互いが一基ずつ、製造プラントを所持しているのであります」


「オウガのロボット製造プラントを破壊すれば、戦う力を奪うことが出来るのであります」


「なので、命まで奪う必要は無いのであります」


「なんだ……」


 ミミルはほっと息をついた。


「それにしても、いつの時代も兄弟姉妹っていうのは喧嘩をするものなのね」


「ミミルも兄が居るのでありますか?」


「いえ。居るのはお姉ちゃん。ついさっき喧嘩をしてきた所よ」


「肩の傷はその喧嘩で?」


「そうよ」


「過激でありますね」


「別に、いつもはそこまではしないのよ? ちょっと口喧嘩するくらい」


「だから……ほんとに撃つなんて、信じられない」


「どうして喧嘩をしたのでありますか?」


「私、遠い所から来たの」


「南の島のその端にある森」


「広い世界が見たくて出てきたのよ。掟を破ってね」


「掟?」


「私の一族は森から出ちゃいけないの。古臭い掟よ」


「そんなの馬鹿馬鹿しいと思ったから、私は森から出てきた」


「けど……それをお姉ちゃんが連れ戻しに来たの」


「ひどい話でありますね」


「ええ。本当よ」


「それなら」


 オウカは自分の後ろに有った光る箱を覗き込んだ。


 釣られてミミルも箱を見た。


「それ、お姉ちゃん達?」


 箱にはオヴァン一行の姿が映し出されていた。


「ロボットのカメラが彼女たちの姿を捉えたであります」


「ミミルはオウカが守ってあげるのであります」


「守るって……」


「ロボットでお姉さんを追い払うのであります」


「追い払うって、危ないわよ?」


 ミミルは心配して言った。


「大丈夫であります。大怪我はさせないのであります」


「そうじゃないわ」


「どういうことでありますか?」


「だって……」


「向こうにはハルナとブルメイが居るもの」


 ……。


 ロボットの一体が壁に叩きつけられて粉々になった。


 オヴァンの上段回し蹴りが飛びかかってきたロボットを蹴り飛ばしたのだった。


「こいつは……まさか、機械の兵か?」


「オリジンの遺物だと思いますが……」


 言いながらハルナは虎の仮面をかぶった。


 それから対物理攻撃のフレイズを自身にかける。


「嫌なことを思い出すな……」


 オヴァンが呟いた。


「ど、どうしよう……。こんな連中が居たなんて……」


 レミルが動揺して言った。


「ミ、ミミルがこいつらに襲われたら……」


「大丈夫だろう」


 オヴァンが平坦な口調で言った。


「な、何を根拠に言ってやがる!?」


 レミルがオヴァンを怒鳴りつけた。


「あいつはネコネコ団の一員だ。お前が知っているよりもずっと強く成長している」


「この程度の相手にはやられたりはしない」


「強い……? あいつが……?」


「ですが、もっと強力な敵が潜んでいる可能性も有りますね」


 ハルナが書いた。


「ダメじゃねぇか!」


「そう騒ぐな」


「てめぇ! 仲間ならもっとミミルを心配したらどうなんだ!?」


「信頼はしている」


「信頼だとか、勝手に妹を買いかぶらないでくれるか?」


「そうだな」


「確かに、万が一のことというのは起こりうるものだ。もしそうなったら……」


「彼女を傷つけた連中は全て殺す。一匹残らず」


「ハッ。頼もしいな。だが、ブッ殺すことを考えるより、妹が殺されない心配をして欲しいモンだ」


「それもそうだな。それで、どうする?」


「決まってんだろ。先を急ぐぞ」


 レミルが走り出した。


 角を曲がり、オヴァン達の視界から姿を消す。


 そして……。


「ひゃあぁぁぁっ!」


 行きよりも素早くレミルが駆け戻ってきた。


 レミルの後を追ってロボットがぞろぞろと現れる。


 レミルはオヴァンの後ろまで逃げ戻った。


「可愛い妹のために戦わないのか?」


「ちょ、ちょっと間合いを取っただけだ!」


 レミルは弓を構えた。


 弓には紅い宝石が嵌められている。


 オヴァンはその弓を掴んだ。


「なっ! 何しやがる!?」


「俺の近くでテンプレートは使うな。俺はリメイクアレルギーなんだ」


「何だそれ? 聞いたことねぇぞ」


「連中は俺が片付ける」


 オヴァンは駆けた。


 前方のロボットの群れに突っ込んでいく。


 あまり道が広くないので金棒を取り出すことは無かった。


 今回のオヴァンの武器は脚。


 足技だけでロボットを粉砕していった。


 オヴァン達の前方に居たロボットはあっという間には壊滅した。


「きゃあああっ!」


 オヴァンの背後からレミルの悲鳴が聞こえた。


 いつの間にか、建物の屋根からロボットが押し寄せてきていた。


 レミルは二体ほどをテンプレートで撃ち倒したが、数が多い。


 ロボット達が屋根から通路へと落下してきた。


 ロボットの群れがレミルに迫った。


 レミルの隣にはハルナの姿が有る。


 ロボットが迫っているにも関わらず、ハルナは落ち着いて立っていた。


 ハルナはオヴァンに視線を送っていた。


「私がやりましょうか?」


 視線でそう問いかけていた。


「俺がやる」


 オヴァンは跳躍した。


「悪いが、近付かせて貰うぞ」


 レミルの後ろに着地すると、レミルの体を抱え上げる。


「さささ……触るんじゃねえ!」


 レミルはオヴァンから逃れようと藻掻いた。


 だが、膂力に差が有りすぎてどうしようも無い。


 オヴァンはレミルの体をぐっと抱きとめた。


「緊急事態だ。我慢しろ」


 オヴァンはレミルを抱えたまま、足技だけで通路のロボットを破壊していった。


 ハルナは一歩も動かなかった。


 オヴァンがやると言ったのだ。


 特に余計なことをする必要も感じなかった。


 オヴァンはあっという間に通路のロボット全てを蹴り潰した。


「ひゃああああああっ!」


 レミルが叫んだ。


 オヴァンが高く飛び上がったからだ。


 オヴァンは着地する足でロボットを踏み潰した。


 オヴァンが着地したのは建物の屋根の上だった。


 建物の上で数十体のロボットがオヴァンを取り囲んでいた。


(少し面倒だな)


「ハルナ! そこを動くな!」


 オヴァンは叫んだ。


「…………」


 ハルナは無言のまま立っていた。


 オヴァンはそれを了解として受け取る。


 オヴァンはブレスを放った。


 熱線がロボットの一体を包み込む。


 それだけではない。


 オヴァンはブレスを止めることなく、体をぐるりを回転させた。


 熱線が八方へと放たれた。


 ロボット達がオヴァンのブレスに飲み込まれていく。


 オヴァンの周囲360度で爆炎が上がった。


 爆発が収まった時、ロボットの姿は一体も見当たらなかった。


 屋根に有るのは粉々になったロボットの破片だけだった。


 それを確認するとオヴァンはまたしても跳躍した。


 建物の合間の通路へ。


 ハルナの隣に着地して言う。


「終わった」


「では、行きましょう」


「ああ」


「それで……」


 ハルナは目を細めた。


「いつまで彼女を抱えているつもりですか?」


「む……?」


 レミルはオヴァンの腕の中で顔を真っ赤にして気絶していた。



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