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古い宝の地図

第一部 『cursed_rain』


第五章 『デトネイターオウカ』




 オヴァン達は砂漠で水浸しにした詫びとしてオーシェ達をマーネヴに送り届けた。


 マーネヴの外壁前でオヴァンはオーシェ達と向かい合った。


 オヴァンの頭の上には小人のクザンが乗っかっている。


「まったく、あんたと会うとろくなことにならない」


 オーシェが言った。


「面白いものが見られただろう?」


 オヴァンは悪びれない。


「ああ。一生分見た。もう沢山だ」


「じゃあな。もう出会わないことを祈ってるよ」


 オーシェはオヴァン達に背を向けた。


 マーネヴの門へ向けて歩いて行く。


「あっ、先生」


 キールはオーシェとオヴァンを交互に見た。


 まだ少しオヴァンと話していたかったらしく、名残惜しそうな顔をしていた。


 だが、オーシェがどんどんと歩いていくのでキールも彼を追うことにした。


「オヴァン! また会おうね!」


 キールはオーシェを追って走った。


 そして門の方へと消えていった。


「さて、私も行くとするか」


 そう言ってオヴァンの頭からクザンが飛び降りた。


「これからどうするのですか?」


 ハルナが尋ねた。


「剣を磨こうと思う。私は剣だけが取り柄の女だが、オヴァンには通用しなかった」


「私がもっと強くなったらまた勝負して欲しい」


 クザンはオヴァンを真っ直ぐに見上げた。


「わかった」


 オヴァンは頷いた。


「ところで……聞きたいことが有るんだが」


「何だ?」


「『邪神』はどこに居る?」


「邪神……か」


 オヴァンの言葉を聞いてクザンは目を伏せた。


「ブルードラゴンで、お前は邪悪な物に敗れたと言っていた」


「お前はこの世界の敵がどこに居るのか知っているはずだ」


「ああ。知っている」


「教えてくれ。俺は……邪神を倒さなくてはならない」


「…………」


 クザンは沈黙してじっとオヴァンを見た。


「その前に聞きたい。お前はどうして邪神を倒したいと思う?」


「女神アルメーオとそう約束したからだ」


「そうか……。彼女と……」


「良いだろう。お前が邪神と呼ぶ存在について話をしてやろう」


「恩に着る」


「そうだな……。どこから話せば良いか。事の始まりは……」


 その時……。


「のわーっ!」


 どこかから鳥が現れ、クザンへと襲いかかった。


「こ! こら! 離せ!」


 抵抗も虚しく、飛んできた鳥がクザンをくわえる


 そして、どこかへ飛んでいってしまった。


「ふむ……。話の途中だったのだがな」


「だ、大丈夫かしら?」


 ミミルが心配そうに言った。


「仮にも女神の騎士らしいからな。自分でなんとかするだろう」


「そう?」


「そうだ」


「それなら良いけど」


 そういうことになった。


「彼女の話は聞けませんでしたが、良いのですか?」


 ハルナが書いた。


「良くはないが、邪神を探すよりもオリジナルを見つけるのが優先だ」


「邪神がリメイクを使うのであれば、この体は命取りになるしな」


「はい」


「あれだけ小さな奴だ。逆に目立つだろう。また会えるという気がする」


「……そうですね」


 クザンが去り、オヴァン達の前にネーデルとツクヨが残された。


「あなた達はどうするの?」


 ミミルが二人に尋ねた。


 二人は死ぬような目に合ったばかりだが、妙に晴れ晴れとした顔をしていた。


「私、冒険者になりたい」


 迷いのない目でネーデルが言った。


「冒険者にですか?」


 ハルナ。


「ブルードラゴンが降りてきて、凄かったわ」


「冒険者になればああいう珍しい物がいっぱい見られるんでしょう?」


「どうかな」


 オヴァンはネーデルの言葉に否定的だった。


「え……?」


 伝説の冒険者がそのような態度をとったことがネーデルには意外だった。


「神秘というのは年々減っていくものだ」


「どうして?」


「俺達が居るからだ」


「踏破された神秘は神秘では無くなる」


「冒険者というのは神秘を踏みつけ、すり潰す仕事なのかもしれん」


「だったら、なおさら早く冒険者にならないと」


「ほう?」


「あなたが珍しいを珍しく無くしてしまう前に、私が珍しいを見つけるの」


「そうしたら、その珍しいは私だけの物だわ」


「なるほど。欲張りだな」


「ええ。私は皇帝だもの」


「……元だけど」


「とにかく、私は冒険者になる。良いでしょう? ツクヨ」


「それは構いませんが……」


 ツクヨは冷静な口調で返した。


「冒険者というのは危険なお仕事ですよ」


「凶悪なクロスオーバーと戦い、生き残らねばなりません」


「陛下にその力がお有りですか?」


「う……」


「やってみなくちゃわからないわ!」


「……そうですね」


 ツクヨは微笑んだ。


「やってみましょうか」


「ええ」


「そうと決まれば、酒場で冒険者の登録をしなくてはいけませんね」


「そうね。行きましょう。ツクヨ」


 ネーデルはマーネヴの外壁に足を向けた。


「陛下、少々お待ち下さい」


 ツクヨの声がネーデルを引き止めた。


「何?」


 ネーデルは立ち止まった。


「…………」


 ツクヨはオヴァンを見た。


「ブルメイ様」


「ん?」


「私達は貴方様に、一生かけても返しきれないほどのモノを頂きました」


「ほんの少しでも、その恩をお返し出来ればと思います」


「もし何か私でお役に立てることが有れば、何なりとお申し付け下さい」


「私に出来ることで有れば、何だって致しましょう」


 ツクヨは潤んだ目でそう言った。


「……そうか」


 対するオヴァンは淡々と答えた。


「俺達は、解呪のオリジナルという物を探している」


「もし、そのオリジナルに関する情報が手に入ったら、報せて欲しい」


「それだけでよろしいのですか?」


「ああ」


「そうですか……」


 ツクヨは俯いた。


 がっかりした様子だった。


 男に尽くすことに喜びを感じるタイプなのかもしれない。


「それでは、これで失礼させて頂きます」


「また……必ずお会いしましょう。お元気で」


「ああ」


「またね」


「ごきげんよう」


「さようなら」


 各々が別れの言葉を告げた。


 ネーデルとツクヨはマーネヴの門へと消えていった。


「さて……」


 オヴァンはミミルを見た。


「何かしら?」


 ミミルはオヴァンの視線に対し、朗らかな笑みで答えた。


「『地図』を出せ。ブルードラゴンで受け取っただろう」


「そう……。はい、これ」


 ミミルは旅袋に手を入れ、オヴァンに古ぼけた巻物を渡した。


 オヴァンは巻物を開いた。


 そこには『オーシャンメイル周辺の地図』が記されていた。


 そして、古い地図の一点には赤く『バツ印』が付けられている。


「これは……帝都メイルの北東に有る山ですね」


「ここに……究極の力っていうのが有るのね?」


「行くか?」


 オヴァンはミミルに尋ねた。


 ミミルの答えは決まっていた。


「行きたい!」


「それなら、行きましょうか」


「そうだな」


 オヴァン達はスマウスの背に乗った。


 黒いドラゴンが東へと向けて飛び立っていった。






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