アイスメン
オヴァン達は氷で出来た建物の合間をジグザグに進んでいった。
どれだけ歩いても人や魔物が現れる気配は無かった。
「敵は居ないのね。なんだか拍子抜け」
「普通は誰も来られませんから、警備は必要無いのかもしれません」
「む……」
角を曲がると開けた場所に出た。
直径25ダカールほどの円形の広場だった。
奥には広場の出口が見える。
広場のすぐ向こうには目的地の氷塔。
出口の左右に身長5ダカールほどの氷の石像が建っていた。
「よく来たな! 冒険者達よ!」
威勢良くも可愛らしい声が聞こえた。
オヴァンは最初、どこから声がしたのかわからなかった。
視線を広場中に彷徨わせる。
「あの子よ」
オヴァンはミミルが指さした方を見た。
よく見ると、広場の出口の所に少女が一人建っていた。
重そうな鎧を着込んだ金髪の少女だった。
髪は素直なロングヘアだが額に独特の形状のサークレットが見える。
側頭部からサークレットの飾りが上方へ突き出しているのが見える。
鎧の左右から抜き身の剣をぶら下げていた。
「良く見えたな」
「私はシューターだしね」
「私はクザン=ニジエルト! 貴様達は何者だ!?」
少女は胸を張って名乗った。
それでオヴァンも名乗ることにした。
「オヴァン=ブルメイ=クルワッセ。冒険者だ。オリジナルを探している」
「ハルナ=サーズクライです」
「ミミル=ナーガミミィ。ネコネコ団よ」
「オリジナル……やはり、彼が目当てか」
「彼……? 何を言っている?」
「知っているかもしれないが、オリジンは相応しくない人物にオリジナルが渡るのを嫌う」
「オリジナルを得たいと願うのなら、まずはその力を見せてもらおう」
「なるほど。それは分かりやすくて良いが……」
「だが、その前に一つ聞いておきたい」
「何だ?」
「この先に有るのは、解呪のオリジナルか?」
「いや。違うが?」
「帰るか」
オヴァンは自分達がやって来た方へと足を向けた。
「そうですね」
ハルナもそれに続く。
「えっ?」
クザンはオヴァン達に向かって手の平を伸ばした。
「ま、待て! オリジナルが欲しくは無いのか!?」
「私達が探しているのは解呪のオリジナルだけです。ただのオリジナルには興味有りません」
「そ、そんな……」
「せっかく長い間待ったんだ! 頼むから試練を受けていけ! お願いします!」
「うーむ……別に興味が無いんだが……」
「私はどんなオリジナルが有るのか、興味が有るわ」
ミミルが言った。
「そうだろうそうだろうそうだろうそうだろう!」
クザンはミミルの言葉に必死で食いついた。
あまりの必死さにオヴァンも彼女を憐れに思うようになった。
「仕方ないな……」
オヴァンはクザンの方へ振り向いた。
「試練とやらを受けよう」
「その意気や良し!」
「別に意気なんぞ無いんだが……」
クザンが手を天に向けて突き出すと左右の氷像が動き出した。
氷像は侵入者であるオヴァン達に向かって歩いて行く。
重量のある氷像が一歩歩く度に地面がずんと震えた。
クザンが言った。
「さあ、まずはこいつらを倒し……」
「はっ!」
オヴァンの金棒が氷像の一体を粉々にしていた。
一秒後にはもう一体の氷像もだたのかき氷へと変貌していた。
四百年以上ブルードラゴンのオリジナルを守ってきた氷の守護者はこの日、消滅した。
「な……!」
「『ピエール』と『ゲレゲレ』が一瞬で……!」
「そんな名前だったんですか……」
「良いだろう! 相手にとって不足はない! 『女神の六騎士』とうたわれたこの私が相手になろう!」
クザンが腰の左右に吊り下げていた抜き身の剣を構えた。
剣の鍔には紅い宝石が見えた。
魔導器のようだ。
「女神の六騎士?」
「そうだ! 驚いたか!」
クザンは勝ち誇るように言った。
「女神の騎士は五人では無いのか?」
「えっ?」
「えっ?」
「私もそう聞いていますが……」
ハルナが書いた。
ミミルは……。
「女神の騎士って何だっけ?」
そもそも存在を知らなかった。
「まさか……ずっと空に居たから存在を忘れられてしまったのか……」
「可哀想に」
オヴァンがクザンに憐憫の視線を向けた。
「憐れむな! とにかく! 女神の騎士が相手になる!」
「止めておいた方が良いと思うが……」
オヴァンが心配するように言った。
「臆したか!?」
「いや……」
オヴァンはクザンのつま先から頭の天辺までを見た。
「その『身長』で戦えるのか?」
女神の騎士、クザン=ニジエルトは……。
身長17セダカほどの『小人』だった。




