表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
82/190

青い巨竜

「ブルードラゴンとは何だ?」


 遠ざかっていく巨竜を見ながら、オヴァンがネーデルに尋ねた。


「オリジンがベルセルクを退治するために召喚したドラゴン……そう言われているわ」


「この辺りの国々を救ったドラゴンで、『オーシャンメイルの守護者』とも言われているの」


「なるほど……」


「すると、あれもオリジンの遺物というわけか」


「行くぞ!」


 オヴァンはスマウスに飛び乗った。


「乗れ、あれを追う」


 オヴァンは仲間たちを見た。


「はい」


「あっ! 待ってよブルメイ!」


 ハルナは機敏に、ミミルは慌ててスマウスに乗り込んだ。


 三人が鞍に座るとすぐにスマウスは飛び上がった。


「おい! こいつらはどうするんだ!」


 オーシェがネーデルを指差しながら、頭上のオヴァンに問いかけた。


「あいつに逃げられる! 下らん話は後にしろ!」


 スマウスがブルードラゴンを追って加速した。


 あっという間にスマウスとオーシェ達の距離が離れていく。


 オーシェとキール、ネーデルとツクヨが砂漠へと取り残された。


「下らんってお前……帰りどうすんだよ俺達……」


 オーシェは呆然と言った。


 乗り物は猫一頭すら無い。


 周囲を見回しても人里らしきものは見えなかった。


 ひたすらに砂地が広がっている。


「……はぁ」


 オーシェは旅袋に手を入れるとコンパスを取り出した。


「行くぞ」


 ネーデル達の方を見もせずに言う。


「行くって……どこに?」


 ネーデルが尋ねた。


「仕事は終わった。マーネヴに帰る」


「私達はどうしたら……」


 ネーデルは不安そうに言った。


 禁呪を失ったネーデルは皇帝だった頃の自信をも失っている様子だった。


「ついてきても良いし、ここで野垂れ死にたいなら好きにしろ」


 オーシェはコンパスを頼りに西に向かって歩き出した。


「あっ、待ってよ先生」


 キールは慌ててその後を追う。


 ネーデルは戸惑いながらオーシェの背中を見た。


 ツクヨがネーデルの隣に立った。


「行きましょう。陛下。帝都にはもう戻れません」


「戻りたいのなら戻っても良いですが……おそらくは殺されてしまいますからね」


「……どれだけ歩くの?」


「マーネヴはずっと先です」


「……おんぶしてくれる?」


「いいえ」


 ツクヨは首を左右に振った。


「これからは自分の足で歩いて下さい」


 四人は歩き出した。


 オヴァンのドラゴンが飛び去ったのとは別方向へ。


 一度だけ、ツクヨはオヴァン達が去った方角へ体を向けた。


「ブルメイ様……本当にありがとうございました」


 そしてそっと頭を下げた。


 ……。


 一方、オヴァン一行はブルードラゴンを追っていた。


 ブルードラゴンの動きは遠目に見るとゆったりしているように見える。


 だが、スマウスが全力で追っても中々追いつくことが出来ない。


 何しろ、サイズに差が有りすぎた。


 追いつくどころか、徐々に距離を離される始末だった。


「スマウス!」


 オヴァンが大声で言った。


 高速で飛んでいると自然に大声になる。


「お前が追いつけないというのなら、これ以上は追わない!」


「どうする!?」


 そう言われては、スマウスは追わないわけにはいかなかった。


 オヴァンのパートナーとしてのプライドが有る。


 スマウスは残された力を振り絞った。


 翼の回転数が上がる。


 ほんの少しだが、距離が縮まっていく。


 だが……それが限界だった。


 スマウスの体力は限界を迎え、徐々に速度が落ちていく。


 その時……。


 ハルナがフレイズを完成させていた。


 スマウスの羽が紅く光り、通常の三倍の速度で動き始めた。


 スマウスの速度がブルードラゴンを凌駕した。


「加速のフレイズを使いました」


「こんなリメイクも有るのか」


 オヴァンは感心してみせた。


「はい。やろうと思えば腕や脚なども速く出来ますよ。制御が大変なのでオススメはしませんが」


「これを使えばトルクにも負けなかったんじゃない?」


 ミミルが言った。


「流石にルール違反だと思いますよ」


「それに、直線なら良いですが、コーナーを曲がりきれないと思いますよ」


「そうなんだ」


 フレイズの力を借りたスマウスはみるみるとブルードラゴンに追いついていった。


 距離が詰まった時、オヴァンが言った。


「良い尻だと思ったが、作り物か」


「尻……?」


 ハルナが眉をひそめた。


「冗談だ」


 オヴァンは改めてブルードラゴンの全容を見た。


 近付いてみると、ブルードラゴンは生物ではないということがわかった。


 ブルードラゴンは『巨大な氷の塊』だった。


「生き物ではない……つまり……」


 オヴァン達はブルードラゴンの上方へ出た。


「これ自体が、巨大なオリジナルかもしれないということですね」


「ベルセルクを退治したという話ですが、あの猫に対してこのドラゴンは大きすぎる」


「とてもデッドコピーと戦う意図で作られた存在には見えません」


「ひょっとして……オリジンはもっと別の目的のためにブルードラゴンを……」


「凄い……!」


 ミミルが感嘆の声を上げた。


 ブルードラゴンの背中には、氷の建造物が立ち並んでいた。


 人の姿は見えないが、『氷で出来た一つの町』がそこには有った。


「降りるぞ」


 オヴァンはスマウスを氷の町の中央へと降ろした。


 オヴァン達の周囲を高さ5ダカールほどの建造物が取り囲んだ。


 氷で出来ているために建物の中は透けて見える。


 人が住んでいるというわけではないようだ。


「建物のおかげか、風はそれほど強くないようだな」


 オヴァン達はスマウスから降りた。


「無人のようですね」


「このドラゴン自体が一個の作品と言うのなら、人が住んでいないのは不自然ではありませんが」


「何もないの? それにしても、寒いわね」


「これを使え」


 オヴァンが旅袋から黒い石を取り出した。


 ミミルに放る。


「何これ?」


「こすってみろ」


「うん」


 ミミルは言われるままに石の表面をこすってみた。


 すると石は徐々に温度を増していった。


「わあ……あったかい……」


 ミミルは石を両手で包み込むように持った。


「火山の麓で取れる『溶岩球』というものだ。ハルナも」


 オヴァンは旅袋からもう一つ石を取り出した。


「いえ。私にはこのテンプレートが有りますから」


 そう書いてハルナはイヤリングを摘んだ。


「へぇ。それって寒いのも大丈夫なんだ」


「はい。石はオヴァンさんご自身で使われてはいかがですか?」


「俺は良い」


「ダメですよ。風邪を引いてしまいます」


 そう書くとハルナは看板にフレイズを綴った。


 すると、三人の体が暖気に包まれた。


 火のフレイズなどと違い、オヴァンにも害は無いようだった。


「ハルナは何でも使えるのね」


「何でもは使えないです。知ってるものだけで……」


「ふーん? それじゃあ、この石は……」


 ミミルは手に持った石を見た。


 ハルナのフレイズのおかげで持っている必要も無くなってしまった。


「髪飾りの礼だ。取っておけ」


「ありがとう。ブルメイ」


 ミミルは微笑んで石を自分の袋に仕舞った。


「それと、念のため仮面を被っておけ」


「ええ」


 ハルナは虎の仮面を、ミミルは猫の仮面を着用した。


「それで、これからどうしましょう?」


「何か見つけて帰りたいものだが……」


「あっちに行きましょう」


 ミミルがドラゴンの頭部の方を指差した。


「何か理由が有るのか?」


「向こうに大きな塔が見えるわ」


 そう言ってミミルは『氷の塔』を指さしてみせた。


 目に入る建物の中ではその塔が一番大きい。


「大きいということは、きっと重要な建物なのよ」


「どう思う?」


 オヴァンはハルナに意見を求めた。


「案外的を射ているかもしれませんね」


「行くか」


「行きましょうか」


 そういうことになった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↓もしよろしければクリックして投票をお願いします。
小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ