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ノートジェイル

『ブルードラゴン』の『サイズ』を変更しました。(作者)

「命とは……どういうことですか」


 ハルナがオーシェを睨みつけた。


 オーシェはハルナの威圧を意に介せず、ネーデルとツクヨに視線を送った。


「あいつら二人に『誓約』を立ててもらう」


「今後二度とノイズを使わず、また、ノイズの知識を漏らさないと」


「二人が誓約を破った場合、ブルメイ、あんたに死んでもらう」


「あなたがそんな口約束を信用する人だとは思えませんが」


「当然だ」


「誓約にはこいつを使う」


 オーシェは旅袋から杖を取り出した。


 杖の先端には紅い宝石がはまっている。


 宝石の台座の金属には茨の意匠が施されていた。


「それはもしかして……」


「オリジナルだ」


「誓約のオリジナル、ジェイ=バーラ」


「俺がこの杖を持ち、こいつら二人とブルメイに誓約を求める」


「お前達が誓うと言った時、杖から魔法の茨が伸び、お前達の心臓に食い込む」


「誰か一人でも誓いを破った場合、茨がお前達全員の心臓を絞め潰す」


「どうだ? 見ず知らずの子供のために命を賭けるつもりは有るか?」


 オーシェは試すような口調で言った。


「良いだろう」


 オヴァンは即答した。


「ブルメイ!?」


 オヴァンの返答に驚いたのはミミルだった。


「こんなの滅茶苦茶よ! 聞く必要なんか無いわ!」


「おいおい、最初に無茶を通そうとしたのはどっちだよ」


 オーシェは冷たく笑った。


「それは……。彼女を助けたいって言ったのは私よ。私が誓うわ」


「駄目だ」


「どうして?」


「自分の命にどれだけの価値が有ると思うんだ?」


「俺は、オクターヴのブルメイに命を賭けろと言っているんだ」


「ブルメイが命を賭けて何になるって言うの?」


「この二人に誓わせて、それで終わりで良いじゃない」


「駄目だ。全く駄目だな」


「……どうしてこんな便利な道具が有るのにオルファンから裏切り者が出たと思う?」


「杖の力でメンバー全員を縛れば良いと思わないか?」


「それは……どうして?」


「この杖は、一度に一つの誓約しか縛ることが出来ない」


「誓約を縛った全員が死ぬまで、こいつはただのガラクタってわけさ」


「小娘二人を生かすためだけに、俺は切り札の一つを失うんだ」


「切り札って、ボクが居るじゃない」


 キールが口を挟んだ。


「黙ってろ。ワン子」


「ちぇっ……」


「俺は切り札を出す。なら、お前達にもそれ相応の対価を支払って貰う」


「ブルメイ、俺はあんたを買ってるんだ」


「まさかワン子が殺されるなんて、夢にも思って無かったからな」


「元々、オルファンオブウルフがノイズ使いを見逃すなんて、有ってはならないことだ」


「それを、あんたが命を賭けるならこっちの道理を曲げても良いと言っている」


「どうだブルメイ。俺は欲しがりすぎか?」


「いや……。俺の命を賭けよう」


「グッド」


「ブルメイ……!」


 オヴァンはミミルに歩み寄るとその頭に手を乗せた。


「決めたことだ。決まったことだ。胸を張って見ていてくれ」


「…………」


 オヴァンの穏やかな微笑を見るとミミルは何も言えなくなってしまう。


「あなたはやっぱり、優しいオヴァンさんですね」


 ハルナが書いた。


「それほどでもない」


 オヴァンはオーシェの正面へと歩いた。


「やってくれ」


「その前に……」


 オーシェはネーデルを見た。


「まずは皇帝、お前が使ったノイズの力を解除しろ」


「……わかったわ」


 ネーデルは短く呪文を唱えた。


 一瞬だけネーデルの体が青黒く光った。


「解除したわ」


「よし」


 オーシェが頷いた。


 ノイズの使用にはリメイクサークルを伴わない。


 それで全てが終わったらしかった。


「始めるぞ」


 オーシェは杖を掲げた。


「……汝ら三名に誓いを求める」


「悪しき呪文の力を用いず、そして、知識を広めないことを」


 杖のノート石から三本の茨が生えた。


「さあ、この杖に誓え」


「誓おう」


 最初にそう言ったのはオヴァンだった。


「誓います」


 続いてツクヨが言った。


「…………」


 ネーデルが黙っていると、オーシェが殺意をこめた視線を向けた。


「ち、誓う! 誓います!」


 三人の誓いが成されると、杖から生えた茨がオヴァン達の方へ伸びた。


 杖から離れた茨が三人の体へと吸い込まれていく。


 やがて茨は見えなくなった。


 外からは見えないが、茨は三人の心臓へと食い込んだのだろう。


 オーシェは杖を下ろした。


 儀式は終わったらしい。


「ブルメイ、これであんたとこいつらは一蓮托生だ」


「下らないことに命を張ったと後悔しなけりゃ良いな」


「後悔はしない」


「そうか」


「ブルメイ!」


 オヴァンの周囲をハルナとミミルが取り囲んだ。


「大丈夫? 痛くない?」


「体に異常は有りませんか?」


「いや。特に異常は無い」


「ごめんなさい。私のせいで……」


 ミミルはしょんぼりと耳を垂らした。


「気に病むな。大したことではない」


 その時……。


 オヴァン達に、大きな影が差した。


 オヴァンは空を見上げた。


「あれは……?」


 オヴァン達の遥か上空……。


 巨大な、とても巨大なドラゴンが空を舞っているのが見えた。


 色は水色。


 目測では正確な大きさは分からないが、体長3000ダカール以上は有る。


 スマウスの200倍以上。


 尋常の生き物のサイズでは無かった。


「ブルードラゴン……」


 ネーデルがそう呟いたのをオヴァンは聞き逃さなかった。



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