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図書館は基本

 そり遊びを終えたオヴァン達は図書館へとたどり着いた。 


 建物は砂色の石造りで、広々とした一階建て。


 帝都の図書館というだけあって、その規模は中々の物だった。


 ハルナは司書に二三言尋ねると、あちこちの本棚を行ったり来たりした。


 十分後、図書館のテーブルには分厚い書物が何冊も積み上げられることになった。


「これ、全部読むの?」


 ミミルはうんざりとした様子で言った。


「読むしか無いと思いますが」


 椅子に腰かけたハルナが平然と答えた。


「私……文字って苦手なのよね」


 そう言ってミミルは隣に立つオヴァンを見た。


「ブルメイもそうでしょ?」


「いや。別に普通だが」


「えっ?」


「この世界の母親が厳しい人だったんだ。子供の頃は沢山の本を読まされたりした」


「裏切り者……ブルメイは仲間だと思ってたのに……」


「勝手に同じグループに入れるな」


「それじゃあブルメイもハルナを手伝うの?」


「それは……」


 オヴァンはテーブルに堆く積まれた本の山を見た。


 そしてテーブルに背を向けた。


「専門家に任せようと思う」


「…………」


 ミミルはオヴァンに冷ややかな視線を向けた。


 ……。


 ハルナが本を読み始めてから三十分が経過した。


「退屈ね」


 椅子の上で長い脚をブラブラさせながらミミルが言った。


「すいません」


 ハルナが詫びた。


「べ、別に、ハルナが悪いって言ってるわけじゃないのよ?」


「はい……。私は一人で十分ですので、お二人はどこか外出されてはいかがでしょうか?」


「良いの?」


「はい」


「ブルメイ、どうする?」


「そうだな……」


「依頼でも受けてみるか? 俺達は冒険者だからな」


「けど……」


 ミミルはハルナを見た。


 アルカデイアでパーティを組んで以来、ミミルはいつもハルナと一緒に冒険してきた。


 そんなハルナを置いて依頼を受けるというのは妙に気が引けるものがあった。


「お構いなく」


 ハルナが書いた。


「うん……」


「行くか」


「……そうね。行きましょう」


 若干の後ろめたさを消せないままミミルはハルナに背中を向けた。


 オヴァンとミミルが図書館から去り、ハルナは一人で本の山と向き合うことになった。


 ……。


 日が暮れた。


 簡単な依頼を終わらせたオヴァン達はハルナと合流し、宿に向かった。


 二部屋取り、男女で部屋を分けることになった。


 オヴァンは一人ベッドに腰をかけた。


 その時、オヴァンの部屋のドアをノックする音が聞こえた。


「ハルナか?」


「はい。お邪魔します」


 扉が開き、ハルナとミミルが入室してきた。


「何だ?」


「何って、お話しに来たのよ。ブルメイ一人じゃあ寂しいでしょう?」


 ミミルが答えた。


「寂しい……か」


「ええ。ブルメイは一人で寂しく無いの?」


「いや……。俺は割と寂しがり屋だ」


「そうなんだ。それじゃあお話しましょう」


「ふむ……。……カードでもするか?」


「私、カードって良くわからないのよね」


「そうか。それなら簡単な奴が良いだろうな」


「ええ。それでお願い」


「それで、いくら賭ける?」


「賭け? どうして? カードで遊ぶのにお金を賭ける必要が有るの?」


「俺達は冒険者だ。ごろつきだ。まっとうな人間じゃあない」


「ごろつきというのは賭博を嗜むものだ」


「へぇ……。そうなの?」


「ああ」


「良いわ。大金取られても泣かないでね」


「それは怖いな」


 三人は小さな丸テーブル囲んだ。


 まずはオヴァンとミミルが勝負をすることになった。


 オヴァンが旅袋から取り出したカードを配る。


 数時間後……。


 ミミルは財布の裏地までもをオヴァンにむしり取られていた。


「うぅ……私の全財産が……」


「そう悄気げるな。金は返してやる」


「そんなの駄目よ。負けは負けだもの」


「律儀なことだが……」


 オヴァンは大げさにカードをシャッフルしてみせた。


 手慣れた手付きでカジノのディーラーのようだ。


「実は、このカードには『細工』が有ってな」


「細工?」


「よく見ろ。ここに小さな模様が書いてあるだろう?」


「何これ?」


「この模様を覚えると相手が何のカードを持っているかわかるというわけだ」


「あっ! ずるい! お金返して!」


「ああ。持っていけ」


 ミミルはテーブル上の硬貨をかき集めると自分の袋へと入れた。


「卑怯! 卑怯ブルメイ!」


「教訓だ。信頼出来ない相手と度を超えた博打はするな」


「いつか奴隷として売り飛ばされることになるぞ」


「む~……」


「けど……ブルメイのことは信頼してるもの」


「……そうか」


「ええ。騙されたけど」


「次からは気をつけろ」


「はーい」


「次、ハルナもやるか?」


「そのカードでですか?」


「普通のカードも持っている」


「それなら、少しだけ……」


 オヴァンは今まで使っていたのとは別のカードを配り始めた。


 数時間後……。


 ハルナは財布の裏地までもをオヴァンにむしり取られていた。


「どうして……! イカサマなのではないですか!?」


「ああ」


「えっ?」


「俺は普通のカードを持っていると言ったが、これがそうだとは一言も言っていない」


「俺は普通のカード以外に、イカサマ用のカードを三種類持っている」


「これはその二つ目、中級編だな」


「してやられました……」


「仲間同士の化かし合いはやっておいた方が良い。敵の化かしに対応出来るようにな」


「そのようですね」


 オヴァンは袋からもう一束のカードを取り出した。


「今度はこれでやろう」


「……それは普通のカードですか?」


「疑うなら調べてみれば良い」


「……わかりました」


 ハルナはオヴァンからカードを受け取るとじっくりと観察した。


「どう?」


 ミミルが隣からハルナの手元を覗き込む。


「私には……普通のカードのように見えます。ですが……」


 ハルナは疑り深そうにオヴァンを見た。


 普段、ハルナはオヴァンを疑わない。


 他人を信頼出来ない反動でオヴァンのことを深く深く信じている。


 そんなハルナが猜疑の視線を向けてくることをオヴァンは面白く思った。


 オヴァンはにやりと笑った。


「今度こそ普通のカードだ。今度は二人同時にかかってくると良い」


「本当? 本当に普通のカード?」


「ああ。今度は三人で勝負しよう。真剣勝負だ」


「信じますよ。オヴァンさん」


 数時間後……。


 二人は財布の裏地までもをオヴァンにむしり取られていた。


「ううぅぅ! どうして勝てないの!?」


 ミミルがテーブルに突っ伏した。


 ハルナは無表情だったが内面は穏やかでは無い。


「ちなみに……」


「普通のカードを使うとは言ったが、カードの他にイカサマが無いとは言っていない」


「えっ? 真剣勝負じゃ無かったの? 嘘つき!」


「バカを言うな。真剣勝負でイカサマをしないわけが無いだろう」


「ええ……」


「どんだけイカサマに精通してるんですか……」


 ハルナは呆れた様子で書いた。


「俺のイカサマは108まである」


「いったい誰にイカサマを習ったのですか?」


「昔の仲間にこういうのが得意な奴が居てな。よくむしり取られた」


「へぇ……。ブルメイにもそういうことが有ったんだ」


「勿論だ。誰にだって未熟な時代は有る」


「それじゃあ、私もいつかブルメイに勝てるようになる?」


「うーん……」


「えっ?」


 ……。


 カードに熱中している間に夜も遅くなっていたのでハルナ達は部屋へ戻ることになった。


「それでは、姑息なオヴァンさん、お休みなさい」


「おやすみ。卑怯なブルメイ」


「おやすみ」


 二人がオヴァンの寝室から退室していく。


 ミミルは扉を閉じる前に小さく手を振った。


 オヴァンは軽く手を上げて答えた。


 ミミルの両耳が跳ねた。


 二人が部屋から出ると、オヴァンはベッドに横たわった。


(楽しいな……)


(こんなに楽しくて良いんだろうか……)


(ラックはこれで良いと言ってくれた)


(ナジミ……)


(お前はどう思う?)



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