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stand against me

 そして再び、オヴァンは『黒い化物』と対峙する。


(俺はあの時……確かにあれを殺したはずだ)


(生きていたのか……それとも……『見た目が同じ別の奴』か……)


(……いや。どちらでも構わないか)


(何度でも、殺すだけだ)


「トルク! 逃げろ!」


 オヴァンは金棒を握る手に力を入れながら怒鳴った。


「けど……」


 トルクには黒い雨の恐ろしさがわかっていない。


「呪われるぞ!」


 オヴァンは重ねて叫んだ。


「あなた達は……?」


 トルクはオヴァン達を残して自分だけが逃げるのに抵抗が有った。


「とっくに呪われてる! 早く行け!」


「っ……!」


 そう言われ、トルクはようやく雨から逃れようと決めた。


 その時……。


 化物の背から大量の羽が放たれた。


 シルヴァ、スマウス、そしてダジルのドラゴンの羽に化物の羽の矢が突き刺さった。


 ドラゴン達の翼から赤黒い血が流れる。


「シルヴァ……!」


 トルクは運良く無傷。


 オヴァンは自分の前方に来た羽を全て叩き落としていた。


 そのおかげでミミルとハルナも無傷だった。


 だが、ドラゴン達は飛翔能力を失ったらしい。


 力無く谷底に不時着した。


「この……!」


 ミミルは風弓のテンプレートを化物に向けた。


「いけません!」


 そんなミミルをハルナは制止した。


「どうして!?」


 ミミルは苛立ちの篭った声を上げた。


「オヴァンさんの側でテンプレートを使っては……」


 そう言いながらハルナはリメイク防御のフレイズを綴る。


「どういうこと?」


「俺は呪いのせいでリメイクの力に弱いんだ」


「呪いって……そういう大事なことはもっと早く言ってよね!」


「悪い」


 ハルナのリメイクによってオヴァンの面に光る紋様が浮かび上がった。


「けど……テンプレートの力を使わなけりゃ良いんでしょ!」


 ミミルはテンプレートの力無しで矢を放った。


 だが、何の力もこもらない矢は固い外皮に弾かれてしまう。


「駄目か……」


 ミミルは弓を下ろした。


 化物は矢を気にもとめずに高度を下ろし、ダジルの前に移動した。


 そして、化物はダジルに掌を向けた。


 ダジルはドラゴンの鞍の上で為す術無く震えていた。


「ひっ……!」


「死ね……!」


 オヴァンが化物に飛びかかり、横殴りに金棒を叩きつけた。


 高重量の衝撃が化物を水平に吹き飛ばす。


 だが、吹き飛ばされる寸前、化物は掌から黒い水を放っていた。


 黒い水はダジルが持つオリジナルの仮面に命中していた。


 水弾は殺傷力の有るものでは無かった。


 だが、呪わしい水には違いなかった。


 水をあびたオリジナルに変化が生じた。


 硬い仮面がぶよぶよとした軟体に変化していく。


 それはクロスが死に際に変化する粘液と同種の物に見えた。


「な……何だこれ……!?」


 変質したオリジナルがダジルの体を覆った。


 粘液はダジルと同化し、ぶくぶくと肥大化していき、さらには彼が乗っていたドラゴンまで取り込んだ。


ドラゴンは悲鳴を上げながら粘液に飲み込まれていった。


「な、何あれ……?」


 おぞましい光景にミミルが呻いた。


「オリジナルが黒い雨を浴びれば……『デッドコピー』になる道理だ」


 オヴァンは答えた。

 

(化物が二体……)


 オリジナルだったモノはまだ変化の途中だった。


 どちらの化物に向かっていくべきか……。


 オヴァンは能力が未知数のデッドコピーよりも黒い化物に向かっていくことに決めた。


 デッドコピーは殺し慣れている。


 先に黒い化物を始末するべきだ。


 オヴァンはそう考えた。


 オヴァンは跳躍し、化物に金棒を叩きつけようとした。


 オヴァンの襲撃から逃れるべく、化物は翼を羽ばたかせた。


 化物はオヴァンの武器が届く地上よりも遥か高みへと舞い上がっていく。


 そして……化物が谷の上まで飛び上がった時……。


 灼熱の炎の渦が化物の腹を抉った。


「な、何……!?」


 ミミルが驚きの表情を浮かべた。


 何者かが……黒い化物に攻撃を加えたらしい。


 それも、強烈な一撃だった。


 脇腹を穿たれ、化物は黒い水を噴き出した。


 化物の前に、通常のサイズを遥かに超える巨大なドラゴンが出現していた。


「始祖様……!?」


 そう呻いたのはトルクだった。


 谷の裂け目から始祖の頭部が垣間見えた。


 次の瞬間、化物と始祖の両方がオヴァン達の視界から姿を消した。


 谷の上空から飛び去ったようだ。


 彼らの視界外で化物と始祖の高速の空中戦が始まった。


 逃げる化物を追い、始祖は巨体に似合わぬ敏捷性で飛び回る。


 距離を取りながら水弾を撃ち込もうとする化物に、始祖の巨体が迫る。


 始祖の前足が化物を切り裂くべく振り下ろされた。


 だが、化物は始祖の下方へと回り込んでいた。


 始祖の腹下を経由し、化物はそのまま始祖の後ろへ抜けようとする。


 その体に超重量の打撃が叩き込まれた。


 始祖の尻尾が化物を打ち据えていたのだ。


 化物は勢いよく地面に叩きつけられた。


 大地が揺れる。


 始祖は化物を仕留めようと急降下した。


 だが、化物は直撃を食らう前に飛翔。


 左足をちぎられながら宙へと逃れた。


 始祖は逃すまいと猛追。


 追いすがる始祖の顔に化物は水弾を放った。


 水弾は始祖の左目に直撃した。


 始祖の眼窩から赤黒い血が流れる。


 だが……始祖は怯まなかった。


 次の瞬間、始祖の口腔から青い熱線が放たれていた。


 始祖の極大のブレスが化物の体を覆った。


 ブレスに焼き尽くされたのか……。


 始祖の攻撃が終わった時、化物はどこにも居なくなっていた。


 脅威が去ったのを確認すると、始祖は自分の寝床へと頭を向けた。


 ……。


 一方、オヴァン達は谷底でデッドコピーと対峙していた。


 ほんの些細な時間に、黒い粘液だったものは確固たる形を持った怪物へと姿を変えていた。


 硬質の羽を持ったハゲワシのような姿。


 新たな驚異の誕生だった。


「う……!」


 さらに、トルクがうめき声を上げていた。


「熱い……」


 トルクは兜を脱ぎ捨てた。


 その白い肌が徐々に緑色に変化していく。


 既に雨は晴れていたが、ほんの短時間でトルクは呪いを受けてしまったらしい。


 うめくトルクをオヴァンはちらを見た。


(緑……緑はどうなんだ……?)


 呪いを受け、肌が黒く変色した者は理性の無い化物になる。


 緑に変わるのはオヴァンにとって初めてのケースだった。


(まずは目の前の敵だ……)


 トルクを殺すことになるかもしれない。


 そう考えながら、オヴァンは意識をデッドコピーへと向けた。


 オヴァンの戦法はシンプルだ。


 オヴァンは跳躍すると、大上段からデッドコピーに金棒を叩きつけた。


「む……!?」


 だが、デッドコピーは翼で体を覆うようにして攻撃を防御していた。


 オヴァンはこれまでに多くのデッドコピーを一撃で屠ってきた。


 自身の一撃を受け止めて悠々としているデッドコピーは初めてだった。


(化物が産むのもまた化物ということか……)


 オヴァンは内心で舌打ちした。


(オヴァンさんの攻撃が効かない……!?)


 オヴァンに絶対的な信頼を置いていたハルナもデッドコピーの頑強さに驚きを隠せなかった。


 デッドコピーはにやりと嘴を歪めると、翼を羽ばたかせ飛翔した。


 猛禽の目が空中から不敵にオヴァン達を睥睨した。


「頑丈な奴だな」


 オヴァンは動揺無く言った。


「ど、どうするのブルメイ?」


「まだ武器は有る」


「武器というのは?」


 ハルナが尋ねた。


「アナザーフィジクス」


「それは……?」


 オヴァンが答えようと口を開いた時、デッドコピーが急降下し襲いかかってきた。


 心臓を狙った嘴の一撃をオヴァンは金棒で受け流す。


「チッ……」


 オヴァンの肩が嘴によって刳られていた。


 赤黒い血がオヴァンの衣服を濡らす。


 オヴァンへの強襲を終えた怪鳥は再び上空へと舞い上がっていった。


「細かい説明は後だ。問題は、この技は回避されやすいということだ」


「だから……何秒か相手の動きを釘付けにする必要が有る」


「私に任せて下さい」


 トルクの声がした。


 呪いの痛みは収まったのか。


 オヴァンはトルクを見た。


「お前……」


 オヴァンは目を丸くした。


「どうしました?」


「トカゲみたいな顔になってるぞ」


 トルクの肌は緑の鱗に変わり、顔は後頭部に角を生やした爬虫類のように。


 すなわち、ドラゴンのそれへと変貌していた……。


 オヴァンに言われてようやくトルクは自身の変貌に気付いたようだ。


「私は……アレンジ(亜人)になってしまったのですか……?」


「同情してやる暇は無い。行くぞ。ハルナ、ドラゴンを治せ」


「……はい!」


 オヴァンはスマウスの背に飛び乗った。


 トルクは鞍にくくりつけられていた長槍の鞘を外した。


 ハルナの回復フレイズがスマウスとシルヴァを癒やしていく。


 デッドコピーを睨み、二体のドラゴンが宙へと舞い上がった。



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