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新世界へ

 トライアックはこれまでの行いを世間に公表した。


 囚われていたアレンジは皆開放された。


 責任者は辞職し、法によって裁かれることになった。


 その後、神殿は武力を持たない福祉団体として再構成されることになった。


 オヴァンは真実に混乱する人々を落ち着かせるためのシンボルとしての役割を負うことになった。


 また、オヴァン達は大神殿を拠点として、人々の解呪を行っていった。


 ハルナが量産したオリジナルが世界中に配布され、世界から呪いの存在は徐々に消え失せていった。


 ただし、長く代を重ねてきたアレンジの中には、解呪しても人の姿に戻らない者も居た。


 もっとも、彼らは生まれつきその姿だったので、大して気にすることも無かったようだ。


 逆に、元の姿に戻る事を望まない者達も居た。


 その代表がドラゴンで、愚神は彼らに竜と人の姿を行き来出来る特別な力を与えた。


 ドラゴンと呼ばれる種族はこの世界から消え、新たに竜人と呼ばれる種が産まれた。


 呪いの雨が無くなったことで、クロスオーバーもこの世界から姿を消していった。


 それによって冒険者は廃業するかと思われた。


 だが……。


 ある日突然、世界中に地下迷宮が出現した。


 これは愚神が邪悪との戦いに備え、人々を鍛えるために生み出したものだった


 冒険者は一攫千金を夢見て、果てしないダンジョンに挑み続けることになった。


 ……。


 そして、世界樹での戦いから一年が経過した。


「あの……一段落付いたので、一度家に帰ろうと思います」


 大神殿の一室。


 ある日、ハルナがオヴァンとミミルを呼び出してそう言った。


 ハルナの母親には手紙で無事を告げてあった。


 ……レイが死んだことも。


 だが、大神殿での活動が忙しくて、顔を合わせるまでには至っていなかった。


「そうか」


 オヴァンは素っ気なく言った。


 多少の耐性はついたが、オヴァンが仲間を性の対象として見てしまう事に変わりは無かった。


 オヴァンはなるべく仲間への劣情を見せないように行動していた。


「ハルナの実家……。ブルメイは一時期そこに住んでたのよね?」


「ああ」


 今考えると、よく平然と暮らせていたものだ。


 今のオヴァンには過去の自分が信じられなかった。


「私も行ってみたい。ねえ、皆で行きましょう」


「私は構いませんが……」


 ハルナはオヴァンの方を見た。


 ハルナは最近オヴァンに距離を取られているように感じていた。


「……わかった」


 オヴァンは渋い顔で頷いた。


「良かった。それじゃあ皆にも声をかけてみるわね」


 ミミルはそう言うと部屋から駆け出して行った。


「皆……?」


 今の大神殿には、オヴァンが見知った顔が何人も滞在していた。


 地下のオリジナルに捕らえられていた者も居れば、解呪のために呼び寄せられた者も居た。


 その多くは年若い美少女だった。


 オヴァンはこの一年で、彼女達と一緒に仕事をする機会が何度も会った。


 その度にオヴァンは誘惑を受けているような気分になった。


 そんな彼女達と旅をするというのは、オヴァンにとって気が重いことだった。


 それでも、その時点では同行するのはほんの数名だろうと思っていた。


 だが、徐々に話が膨らんで、村に向かうのは百人近い大所帯になってしまった。


 ……。


 何十頭もの羽猫を使い、オヴァン達は南へと旅をした。


 半月足らずで一行は村へと到着したが、旅の最中にオヴァンの理性は幾度となく誘惑された。


 それでもなんとか頼れる男としての体面を保ち続けた。


 村に辿り着いた時、オヴァンは疲弊していた。


 村人達はオヴァンの帰還を歓迎した。


 オヴァンにとっても、既に何年も暮らした村だ。


 村人たちはオヴァンを村の一員だと思っていた。


 陽気な村人達が、今夜は歓迎の祭りをしようと言った。


 徐々にオヴァンの周囲に人が集まってきた。


「ハルナ」


 いつの間にか、人だかりの中にハルナの母、アルキナが姿を現していた。


「お母さん……」


 ハルナはアルキナの胸に顔を埋めた。


 アルキナはハルナを抱きしめると頭を撫でた。


「少し……背が伸びた?」


「そうかも。呪いが無くなったから……これからはもっと背が伸びるかも」


「そう。良かったわね」


「うん」


「レイの事、辛かったわね」


「……うん」


 二人は何気ない言葉を交わした。


 少し鼻声だった。


 ……。


 夜になった。


 村の広場の中央で焚き火をし、宴会が始まった。


 各々が持ち出した机の上に料理が置かれ、村中の酒がどんと積まれた。


 オヴァンは主賓として一番目立つ席に座ることになった。


 酒盃を傾けるオヴァンの周囲には人が絶えなかった。


 かつてエルフスレイヤーだった少女とその弟。


 この世で最も巧みにドラゴンを操る男と、その妹。


 そして、彼の妻である白銀の髪を持つ竜人。


 艷やかな黒髪を持つ、背の高い竜人の女性。


 猫の姿をした狼。


 リメイク学校の講師とその部下。


 元皇帝とそのメイド。


 小人の剣士とその旧友。


 デトネイターの少女とその兄。


 ナーガミミィの一族。


 魚人の親子。


 背中に翼を生やした少女とその祖父。


 オヴァンの両親と、その親戚達。


 かつてのオクターヴの仲間と、彼女が世話をする子供達。


 そしてネコネコ団の仲間達……。


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