従魔。
「「ええぇぇ~っ!?Σ( ゜Д゜)」」
「どういう事だっ!?一体っ!?何でお前の言葉が分かるんだっ!?」
「それは私が聞きたい位です。ご主人様。」
ご主人様!?あぁ・・・そうか・・・俺はこのゴブリンと主従の契約をしたんだっけか。に、してもだ、ご主人様かぁ~何か背中やら頭やらムズムズして何だか言われる事がない事だからあちこち痒くなる。
「な、なぁ?」
「はい。何でしょうか?ご主人様。」
「その、ご主人様って言い方何とかならないかな?言われ馴れてなくて何だかこそばゆくて。」
「そうですか?けれど私からすればご主人様はご主人様ですし・・・されとも他に何とお呼びすれば良いですか?」
「何とでも呼びやすい様に呼べば良いさ。サンとでも普通に呼んで構わないからさ。好きに呼んでよ。」
「そんな!ご主人様である方に呼び捨てなんて出来る訳ありません!せめてサン様と呼ばさせて下さい。」
「イヤ、だからその畏まった呼び方は止めて欲しいんだって。今後は俺の相棒なんだから上下の区別は付けたくないんだ。」
そうなんだ・・・俺はこの容姿(黒髪・黒色の瞳)のお陰で散々周りから疎まれ蔑まれ来たんだ・・・誰1人として俺を対等に扱ってくれる人なんてあの村には唯の1人も居やしなかった。だからこそ例え魔物であっても俺は自分と対等に扱いたいと思っている。扱いたいと思っている事自体、既に上から見ていると思われるかも知れないけれど、本当に俺はこの初めて契約したゴブリンと対等な関係でいたいと思っている。
俺は真剣な眼差しでゴブリンの瞳をジッと見た。
「はぁ・・・。分かりました。其処まで仰るのであれば、これからはご主人様の事をご主人様と呼ばせて頂きますね。これ以上の譲歩は罷り通りませんからね!」
ゴブリンはそう言うと俺に向かって笑顔でウィンクをした。うん・・・やっぱり怖いな。
「分かったよ。それで良いよ。じゃあこれから宜しくな!え・・・っとお前の事は何て呼べば良いんだ?お前って言うのも何だかアレだし、名前はあるのか?」
「ご主人様。魔物は基本的には名前は無いのですよ。仲間同士では名前で呼ぶ事は無く意思の疎通が図れますから。それに名前が付いているのはネームドと呼ばれる比較的どれも名が通っている魔物ばかりですから。ご主人様も聞いた事があると思いますよ?この辺りですとそうですね・・・。オークの上位種であるハイオークで(赤銅)と呼ばれる魔物ですかね。」
赤銅か・・・聞いた事がある。確か普通のハイオークは肌の色が浅黒いの対して赤銅と呼ばれるハイオークの肌の色は全身が燃えるように赤い色をしていると聞いた事がある。何人者冒険者が赤銅に挑んだが唯の1人も無事に帰って来た事はなかった。
「ハイオークの派生種・・・ユニークモンスターか・・・。」
魔物はある一定の既定レベルに達すると存在進化の課程を通って一段階上の魔物へと進化を遂げる。だが、その進化の課程において既定レベルの他にある特定の条件下によって既定の進化とは別の路線を辿る事がある。それが派生種だ。同じハイオークと言う種族であっても派生種はその能力において強さが段違いだ。
どういう条件下での進化なのかは未だに解明されてはいない。寧ろ魔物の進化の課程を研究しようなんて物好きは余りいないのが現状だ。だが、俺は前世の知識を活かしてある程度の予想はしている。それは1つは環境下での適応であるが、これは今回の件に関しては当てはまらないだろう。ここで言う環境下での適応とは極めて厳しい環境下で生存するために、そこに適応するための変化・進化であるから、この森ではそれは考えられない。だから俺が予想している事はもう1つの課程だ。それは対人だ。きっとこの(赤銅)と呼ばれるハイオークは多くの人の血肉を喰らい派生種へと進化を遂げたのではないだろうか。それこそ一般人ではなく俺と同じ冒険者を何人も屠って来たのだろう。この世界にはステータスが存在し、数字として強さの指標がある。勿論レベルが高ければそれだけ能力を高く、倒せば得られる経験値も多いと思う。そうして(赤銅)と呼ばれるハイオークへと進化を遂げたのではないだろうか。だが、あくまでこれは俺の想像の範疇でしかない訳で本当の所は何も分かってはいないということだ。
それよりも新たに仲間になった俺の従魔はどうなのだろうか?会話を少しした感じでも、このゴブリンの知能は他のゴブリンと比べて格段に高いと思うし、案外このゴブリンも実はユニークモンスターなのでは?と少し期待している自分がいる。
魔物使いは契約した従魔のステータスを閲覧する事が出来る為、俺は淡い期待を抱きつつ、「ステータスオープン」と呟き初めて契約した従魔のステータスを確認した。
「なっ!?これはっ!?一体どうなってるんだ?」