初契約。
俺と1匹のゴブリンは何とかホーンラビットを倒す事が出来た。あの時助けたゴブリンに協力して貰えなければ俺はきっとホーンラビットの鋭い角に体を突き刺されて死んでいただろう。
そんな助けてくれたゴブリンへのお礼に倒したホーンラビットの肉をやろうとしたが、このゴブリンは首を横に振りお礼を受け取ろうとはしなかった。
何でなんだ?俺の言葉が理解出来ている筈なんだがどう言っても首を縦には振ろうとはしない。
すると、ゴブリンが此方をチラチラ見ながら何かを言いたそうにしている。
うーん・・・助けて貰っておいて物凄く失礼だとは思うんだが、お世辞にも可愛いとは言えない外見とは裏腹に照れ臭そうにモジモジされるとちょっと気持ち悪い。
いや、本当ごめんっ!恩人?恩魔物?に対して思ってはいけないんだが、思ってしまったものは申し訳無い。
モジモジしていたゴブリンが何かを決したのか俺の目をジッと見つめ口を開いた。ま、まさか人間の言葉が話せるのかっ!?
「ギャッギャアギャアギャッ・・・?」
「えっ!?何っ!?何て言ったんだ?」
ですよね~。例えこのゴブリンが俺の言葉を理解出来ていたとしても当の俺がゴブリンの言葉が理解出来なければ会話にならないのは当たり前だ。
チクショウ・・・ちょっとだけ期待しちまったよ。
だが、このゴブリンの凄い所は其処で終わりじゃなかった。俺に言葉が通じないと分かると何やら辺りを見渡して何かを探し始めた。
ゴブリンは目当ての物を見付けると俺の元へと近付いて行きた。手には適当な枝を握りしめそれを使い地面に何かを書き始めた。
((私の言葉が分かりますか(´・ω・`)?))
「えっ!?文字が書けるのか!?」
俺が驚きの表情をしているとゴブリンはホッとしたかの様にニコリと笑う。
笑う顔もちょっと不気味だな・・・いや、本当ごめんっ!てか何故絵文字付き?
((この間は助けて頂きありがとうございました。m(_ _)m))
「いやいやいや!あんときは本当たまたまだから!ほんの気紛れに過ぎないから!寧ろ今日助けてくれた俺の方が・・・本当ありがとう・・・。」
そうなのだ。あの時このゴブリンを助けた事はほんの一時の気の迷い。いや・・・きっと独りでいる辛さを知っている俺は何でも良いから何かにすがりたい気持ちでいたのだろう。例えそれが傷付いた魔物であっても。単なる俺の自己満足なんだと思う。
俺の罰の悪そうな顔をしているのを察してかゴブリンは何も言わずに微笑んでいる。
このゴブリン・・・瞳だけは何だか凄く綺麗に見える。澄んだ瞳っていうのかな。そんな感じがする。
ゴブリンは書いた文字を消し、新たに文字を書いていく。
((ずっとお礼が言いたくて貴方を見ていました。あの時はお礼も言わず去ってしまい申し訳ありませんでした。m(_ _)m))
「いやいや!別に気にしてないから。魔物が人間に助けられたとしたら警戒しても何らおかしくないから全然気にする事ないから!ってずっと俺にお礼が言いたくて見てたのかっ!?」
((はい。お礼を言うタイミングを見計らっていました。それに貴方という人物がどういう人なのか観察していました。(/ω・\)チラッ))
怖っ!!何っ!?怖っ!!ずっと俺を見てたって・・・。観察って・・・転生する前ですらストーキングされた事すら無かったのに今世でストーキングされるってどういう事っ!?しかも相手はゴブリンって・・・怖っ!
「ははは・・・。そうなんだ・・・。」
俺は渇いた笑いをするしかなかった。
((はい。それで観察して思ったんですが、貴方は魔物使いなのですか?しかもまだ1体も使役していないとか。(´・ω・`)?))
何処からそんな情報を仕入れてくるんだ?このゴブリンは・・・。本当にストーカーじゃねーか。此処は動揺しない様に平静を保たないと。
「そうなんだよ。良く分かったな。」
((やっぱり!!そうなんですね!\(^o^)/じゃあもし貴方さえ良ければ私と契約して貰えませんか?))
ゴブリンは良かったと言わんばかりに喜んでいる。
「えっ!?契約?」
その内魔物と契約出来れば良いと思ってはいたが、まさかこのタイミングでとは・・・しかも魔物から契約して下さいと言って来るとは夢にも思わなかった。
((ダメですか・・・?(/ω・\)チラッ))
「いや・・・全然ダメじゃないぞ。寧ろ有難いというか何というか・・・俺で本当に良いのか?」
((はい!助けて頂いたって事もありますが、それだけでは無く貴方には別の何かも感じる物がありましたので。これは私の【感】ですけどね。(*^.^*)))
ゴブリンはそう書くとまた照れ臭そうに笑っていた。いや!だから可愛くないから!寧ろ怖いから!
「分かった!これから宜しく頼む!相棒!じゃあ今から【主従の契約の儀】を行うからどちらかの手の親指を出してくれ。」
俺は自分の親指と出されたゴブリンの親指を刃物の切っ先で少し傷を付け、じわりと滲み出てくる血液をお互いの親指同士で擦り合わせた。
【我、サンは主従の契約の儀に基づきこの魔物との主従の契約を結ばん。我が命尽き果てる迄、契約する事を誓わん。】
「良しっ!これで契約完了だ。」
「へぇ~思っていたより意外と地味なんですねぇ」
「えっ!?」
「えっ?」
「「ええぇぇ~Σ(゜◇゜;)!」」