思わぬ再会
~ホーンラビット1匹が現れた~
俺の今、目の前には繁殖期を迎え活発化し興奮状態のホーンラビットがいる。
普段の状態ならモンスターランクはEランクであり、冒険者ランクEの俺でも然程苦戦はしない筈だ。幾らレベルが1の俺でもだ。
ただし!この時ばかりは少し事情が変わってくる。なんせモンスターが興奮状態だからだ。
しかも!好戦的ときているからたちが悪い。
俺は鞘から剣を抜き、バックラーを構える。
本来ホーンラビットは遭遇したら脱兎の如く素早く逃げるのだが、今回ばかりはその脱兎の如く素早さで俺に一直線に角を立て向かってきた。
「早ッ!!!」
俺は突っ込んで来るホーンラビットをバックラーでいなそうとするが、背筋に寒気を感じ横に跳ね避けた。
コ――――――――ンッ!!!
運が良いのかホーンラビットの角は避けた先の木の幹にものの見事に突き刺さっている。
「危なっ!!」
バックラーでいなそうしていたら危うく貫通し、俺に突き刺さる所だったぜ。
俺は角が抜けずにジタバタしているホーンラビットにごめんなっ!と謝りつつ剣を振り下ろした。
ホーンラビットを倒した。
だがしかし!経験値は1ポイントだって入らない。何故なら俺は魔物使いだから。契約し使役しているモンスターが倒さなければ俺の魔物使いとしての経験にはならないからだ。
ちきしょーっ!!!
まぁそれはそれで置いといて。
素材を回収しますかな。
俺は倒したばかりのホーンラビットを解体し始めた。
角は武器防具の素材に、毛皮は洋裁、肉は勿論料理にだ。久し振りに肉が食べられるぞ。
俺は鼻唄交じりに上機嫌で解体していく。何せ素材回収は鮮度が命だからな。
ただここで全て解体する訳にはいかないので、血抜きをし、内臓を取り出すだけにする。
どちらも先に地面に穴を掘り穴の中へと入れ埋める。どのみち後で埋めた穴は血の匂いを嗅ぎ付け他のモンスターが掘り返すのだろうけど。
本当はモツも食べたいのだけれど流石にちょっと食中毒とか怖いから今は辞めておく。
まぁその内食べるだろうけど。
勿論自己責任だからね!
「ふぅ~大体こんなもんかな~。」
俺は一通り作業を終え、素材とホーンラビットを持ってきていた手提げ袋へと入れる。
そんな一息をついたのも束の間、ガサガサと茂みが揺れる。
またホーンラビットか?
俺はそう思った。
茂みの中から現れたのは確かにホーンラビットだった。
~ホーンラビット3匹が現れた~
今度は3匹の興奮したホーンラビットが現れた。
まずい・・・非常にまずい。1匹ならいざ知らず3匹も相手に出来る程俺は強くも器用でもない。
【たたかう】or【にげる】
【にげる】
【にげる】で良いですか?
【はい】
俺は頭の中で全力で逃げる事にした。俺は構えた状態からくるりと体を反転させその場から一気に駆け出した。
が!レベル1のすばやさ10の俺では到底振り切れる筈も無く、ホーンラビットにあっ!という間に追い付かれてしまった。
だが、足を止める訳には行かず俺は全力で走り続けている。
俺の左右にピタリと並んで追い掛け、そして俺の後ろにも1匹張り付いているこの状況。
「はぁはぁはぁはぁ・・・脇・・・腹が・・・。」
左側にいるホーンラビットが角を立て先制攻撃で俺目掛けて跳んできた!俺は走りながらそのまま上体を下げ避ける。突っ込んできたホーンラビットは俺の背中の上を飛び越した。
危ね――――――っ!!!
すかさず右側のホーンラビットが低空で跳んできた!俺は急ブレーキを掛け今度は一気に下げた上体を起こして避けた。
痛―――――――ッツ!!!
ギリギリの所で避けきれずホーンラビットの角が俺の右脇腹を掠める。
一瞬怯んだ俺は後ろにいたホーンラビット迄気が回っていなかった。ハッ!と後ろを振り返った時にはもう目の前まで俺を突き刺そうとしている角が迫っていた。
その時だ!別の何かが突然現れ、俺目掛けて跳んできたホーンラビットを棍棒で叩き落とした。
お前は――――――っ!?
~ゴブリン1匹が現れた~
俺の目の前に立っている1匹のゴブリン。
何ヵ所か汚れてはいるが包帯を巻いている。
「お前はあの時の・・・。」
3日前傷付き倒れ治療したあのゴブリンだった。
「俺を助けてくれたのか?」
「・・・・・・。」
返事は無い。そうだよな。モンスターに話掛けても俺の言葉なんか通じて無いよな・・・・・・。
だが俺はこの目の前に立つゴブリンの背中から確かに「そうだよ」と聴こえた様な気がした。
ゴブリンに叩き落とされたホーンラビットは会心の一撃を喰らったのかぴくぴくと痙攣している。この様子なら先ず大丈夫だろう。
後は左右にいるホーンラビット2匹だけだ。
これで2対2。どうにかなるか?