モンスターランク。
怪我をしたゴブリンを助けてから3日後、これといった事も無く今日も低ランク用の依頼をこなしていた。
俺は基本的には街の中での活動をする時はフードを深く被り髪の色が目立たない様にしていた。
本当、瞳の色と髪の色だけでとやかく言われるなんて何処の生徒指導員だよっ!全く。面倒臭い。
今日は街の中での下水道の掃除と街の外での薬草採集の依頼だ。
下水道の掃除は1日で終えるのは無理なので1区画ずつ計画的に掃除していく。
大体この手の依頼は誰もやろうなんてのはいないから期日には結構余裕がある。
それでも1区画掃除するのにも大分時間を要するのだが。
「ふうぅ。今日はこんなもんかな。それにしても・・・最初は余りの悪臭で気絶するかと思ったけど人間の馴れって怖いな。途中から殆んど気にしなくなったぜ。おっと!次は薬草の採集に行かねーと日が暮れちまう。急がねえーと。」
俺は今日の掃除のノルマを終えて急いで街の外へと向かった。
一応都市だと言っていても此処は異世界。
モンスターが闊歩しているから街の出入口には門番がいて、警備と通行者の確認もしている。
それに日本時間でいう午後9時には街の門は翌朝午前6時迄堅く閉ざされる。所謂門限ってやつだな。
これも街の治安を守るためだな。
俺は街は此処しか知らんから他がどうなっているかは知らないし、知るつもりもない。
そもそもレベル1の俺はどう足掻いても他の街へ移動する事も儘ならないからな。
もし他の街へと移動しようものならモンスターや盗賊に襲われてそこでジ・エンドだ。
馬車という交通手段もあるが金が勿体ない。
では荷馬車は?荷馬車の御者は忌み子である黒髪黒眼の俺を親切に乗せるとは到底思えないからこれも却下だ。
全く転生しても不便極まりないな。この世界は。
そんな事を思いながら俺は街の北口へと向かう。
街の出入口は東西南北に別れているが何故俺が北口へと向かうかと言うと、理由は1つ。この北口方面はスラムと呼ばれる貧困層が住むエリアで俺みたいな見た目でも気にしないで接してくれるからだ。
勿論このスラム区画でも安全とそうでないエリアもあり気をつけなければいけないのだが、北口方面へと向かう大通りは安全なので俺はいつもそこを通って向かっている。
決して急いでいるからと言って近道をしようと裏道を通ろうとしようもなら其処から先は命の保証が出来ない。スラムとはそういう所なんだ。
だから俺は例え急ぎの用があろうとも裏道だけは通らない様にしている。
「よおっ!サンっ!これからか?」
門番の1人が俺に声を掛けてきた。
「あぁ!これからいつもの採集だよ。アランさん。」
アランさん。歳は今年で40歳になる気の良いおっさんだ。奥さんと子供が二人いる優しいお父さん。こんなナリをしている俺にも気安く声を掛けてくれる。
「最近繁殖期に入ってモンスターが活発化してるから気をつけるだぞ?」
「あぁ!分かった!教えてくれてありがとうアランさん。じゃあ行って来ます!」
「気をつけるだぞー!」
アランさんはそう言って持っている槍を軽く挙げ見送ってくれた。
◇◇◆◇◇◆◇◇
「今日は中々見つからないな・・・。しょうがねぇ。もう少し奥を探してみるか。」
いつもなら城壁の周りの草木に生い茂っている薬草類が今日に限って見つからない。俺は仕方なく散策の範囲を広げ森の中へと入って行った。
「おっ!流石に此処まで来ると生えてるな。これなら早く宿へ帰れそうだ。」
薬草を一通り採集し、中腰の状態から起き上がり不意に目の前に視線を向けると俺の視線の先に1匹のモンスターがいた。
ホーンラビット・・・別名角兎。Eランクモンスターだ。
【モンスターランク】この異世界では冒険者のランクがある様にモンスターにも危険度を示すランクが存在する。これは人間が定めた討伐出来るランクであり、主に冒険者のランクに応じて討伐出来る目安にもなっている。が、ランク=強いor弱いにはならない。注意して欲しいのはあくまでも人間が定めたランクであるという事。
ランクの高いモンスターでも冒険者のランクが例え低くても倒せるし、ランクの低いモンスターでも危険度が高いモンスターもいる。弱い・・・けれど猛毒を持っているとか、強い・・・けれど状態異常には弱いとか様々だ。
【モンスターランク】はE~SSS迄あり、俗に魔王と呼ばれるモンスターの親玉はSSランクに相当する。
ではSSSランクのモンスターはどんなのがいるかと言うと誰も知らないし、見た事すらないらしい。強いてあげるなら物語りに出てくる様な伝説級のモンスターや神話級のモンスター等がそれに当てはまるだろう。
で、そんな感じで俺の目の前にいるモンスターは危険度でいう所のEランク。つまり冒険者のランクでEランクの俺でも倒せる位のモンスターなのだが・・・俺はレベル1、ホーンラビットは繁殖期に入り絶賛興奮状態で強さ倍増。うん。ヤバいね俺。