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8.カシオペアたちの生活事情




 その後映画を見たり買い物をしたり、四人で街の中を楽しんでいるとあっという間に日の落ちる時間になっていた。


 「もうこんな時間かぁ。そろそろ帰る?」


 「とっても楽しかった! 二人とも本当にありがとう」

 満面の笑みを浮かべるカシオペアを見て桃も嬉しくなった。


「楽しんでもらえてよかった! それじゃあ帰ろうか。カシオペアとアインはどこに住んでいるの?」


 桃の質問に一度目を見合わせたカシオペアとアインが答える。


 「どこってその辺で適当に寝てるけど?」


 「いつも野宿だよ、飛んだ世界によってはそもそも建物自体無かったりするし」


 「ずっと外で生活してるの? いいなぁ、なんか『野宿』って響きちょっとかっこ良くない?」


 「いや、かっこ良くないから! 野宿はそんなに甘くないから! 二人も住む場所見つけようよ!」


 「大丈夫、色んな世界で慣れているから。それにこの世界で宿を借りるお金もツテも無いの」


 桃としては世界を守ろうとしてくれている二人にいい暮らしをして欲しかったが、自分にはそれを用意する事は出来ないので目を伏せて言い淀んでしまった。そんな桃を見た雪は能天気な声で提案した。


 「泊まる場所無いならうち来れば?」


 「気持ちはありがたいが遠慮しておこう」


 「なにその『お前の家に行くくらいなら野宿の方がマシだ』とか言いたげな表情は」


 「よく分かったな、お前読心術の心得もあるのか。……ぶへっ!」


 「とても嬉しいけど、素性の分からない私たちが行って迷惑にならない?」

 雪に吹き飛ばされたアインをスルーしてカシオペアは尋ねた。


 「カッシーは強いから大丈夫だよ」


 「?」


 「うちは古武術の道場やってるんだけど、強くて悪そうな人でなければ食客として住まわせてあげる決まりがあるの。まぁ強さの条件がキツ過ぎて私の知る限り一人も受かったこと無いけどね」


 「へぇ、初めて聞いた。ちなみに条件ってテストとかあるの?」

 桃も雪の実家にそんな決まりがあるとは知らなかったので、驚きながら詳しい話を聞いた。


 「うん、師範を倒すのが条件」


 「師範って、あの雪のお父さん?」


 雪の父親は独自の流派を極めた師範だけありガタイが良く見た目もヤクザのように怖い、噂では実際に恐ろしく強いそうだ。話してみるといい人であるが戦うと聞くと桃は身がすくんだ。


 「スキルを使えば楽勝だろう」

 腫れた頬を押さえつつアインがようやく立ち上がる。


 「うーん、それで父さん納得するかな? 意外と頑固な所あるから」


 「頑固なのは全然意外じゃないよ……。あの人と素手でまともに戦うのは厳しくない?」


 「いけると思うけど? カッシー格闘術も一流でしょ?」


 「確かに師匠から素手での戦い方も指導は受けてるからある程度は戦えるけど、本業の人に勝てるかは分からないよ」


 「師匠って、『トゥエルヴ o’clock』の事だよな?」


 「うん、今なら師匠とも互角に戦えると思う!」


 「……なら楽勝じゃないか?」


 「『とぅえるぶおくろっく』って何?」


 「前に話した、王からスキルを授かった十二人の一人だ。中でも武闘派で独特の体術を使うと噂で聞いた。カシオペアは優秀だったから『o’clock』に選ばれる以前その人に修行をつけてもらっていたんだ」


 「師匠強かったな。私が知る限りでは一番の『時集め』だった。師匠が言うには母さんの方が強かったそうだけど」


 「『時集め』? あとカシオペアたちのお母さんもすごい人なんだね!」


 「そういえば説明してなかったな、『o’clock』を含めてスキルを持った人たちは世界を渡って時を集め王に献上していたんだ。だから『時集め』って呼ばれてる」


 「時を集めるって、 まさか……」


 「いや、勘違いしないで欲しいんだが本来は一瞬時間を止めて出来たエネルギーを回収するだけだ。世界が無くなることはないし、そこに生きる生物の寿命が縮む事もない。強いて言うならその世界の持つエネルギーの総量が少し減るくらいだ」


世界のエネルギーが減ると聞いて桃は少し怖い印象を受けたが、少しなら大丈夫なんだろうと納得することにした。


 「それで王様はそのエネルギーを何に使っていたの? ケンカ?」


 アインはギロリと雪を睨んだ。


 「そんなくだらん事に使うか! 俺たちの世界の維持に使っていたんだ、あと王と王妃は寿命を延ばしていた。世界に必要な存在だったからな」


 「……だからといって奪って良いわけではないよね、師匠」

 カシオペアは誰にも聞こえないよう小さく呟いた。


 「時集めの説明はこんな所だ。あと母さんの事か、母さんは歴代の中でも最高の時集めと言われていた天才だったそうだ。幼いうちに『o’clock』のトップにまでなって活躍したけど、俺たちがまだ物心つく前に亡くなっている」


 「……ごめん」


 「気にするな、正直俺らは母さんの事ほとんど覚えてないし実感がないんだ。もちろん誇りには思っている。ちなみにカシオペアは母さんをも超える逸材なんだ、すごいだろ!」

 そう言ってアインはカシオペアの肩を叩く。


 「兄さん、恥ずかしいからやめてよ」


 カシオペアは顔を赤くしてもじもじしている。


 「カッシーはお母さんの才能を受け継いだんだね。それに比べてペイン君は……」

 雪は可哀想な人を見るような目でアインを見つめる。


 「そんな目でこっちを見るな! あとペインってなんだ、俺はそんな痛そうな名前じゃない!」



 四人で仲良く話しているといつに間にか雪の家の前に着いていた。


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