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13.『Ⅷ』



 『Ⅷ』が胸を貫く短剣を見た後、振り向くとそこにはアインが立っていた。


 「俺は弱くってさ、できることといったらちょっと相手の意識から外れることくらいだ」


 「あぁ、君は隠れるのが得意だったね……。すっかり忘れていたよ」


 アインが短剣を引き抜くと『Ⅷ』は仰向けに倒れる。


 「こりゃダメだね、このまま消えそうだ。なぁここに『Ⅱ』はいないと誓うから、『Ⅺ』と話をさせてくれないか?」


 「お前、本当に人形か?」


 「人形だよ、ちょっと記憶を持ったね。なあ頼むよ〜、愛する妹に伝えたいことがあるんだよぉ〜」


 「カシオペアは俺の妹だ! ……わかったよ」

 

 アインは合図をしてカシオペアを呼んだ。

 カシオペアは伏兵が現れないのを確認すると『Ⅷ』へ駆け寄る。


 「あぁ、来てくれたか『Ⅺ』。君に謝っておこうと思ってね」


 「謝る? そんな……、謝るのは私の方だよ」


 まさに消えようとする『Ⅷ』を見て、カシオペアは涙が込み上げてきた。

 慕っていた人の二度目の最期を前にして耐え切れなかったのだ。


 「まぁ殺された側が謝るのは変な話だけど。僕は君が苦しんでいると気が付いていたのに、止めることが出来なかった。最期までそれを悔やんでいてね、申し訳なかった」


 「違うよ……私が悪かったの、だから『Ⅷ』が謝る必要なんてない……」

 目を腫らして涙声になりながらカシオペアは答える。


 「いいや、謝らせてくれ。あの時の君はおかしいとわかっていながら、自分を押し殺して家族に従っていた。間違っていると思ったならたとえ家族が相手でもそれはおかしいと言っていいんだ。逆らってもいいんだ。それを君に伝えることができなかった、ごめんな……。だけどあの後、君を救ってくれた人がいたんだね、今の君の目を見ればわかるよ」


 カシオペアははっと顔をあげると、頬の傷に触れた。


 「うん」


 カシオペアの答えを聞き、満足そうに笑うと『Ⅷ』はそっと目を閉じた。


 「そろそろ時間みたいだ」


 「最後まで、死んじゃった後でも心配してくれてありがとう……クロートお兄ちゃん」

 『クロート』はぱっと眼を開くと満面の笑みを浮かべた。


 「本名で、しかもお兄ちゃん付きなんて本望だよ。あの世で他の『o’clock』たちに自慢してやろう。ありがとう、カシオペアちゃん。君は後悔の無いように生きるんだよ」


 『Ⅷ』の体は緑色の光の粒になって消えていった。カシオペアは座り込んだまましばらくの間動かなかった。


 「カシオペア、大丈夫?」


 桃が心配そうにカシオペアへ声をかけると、カシオペアは残された『Ⅷ』の時計にふれた。

 するとその時計はカシオペアの手の中に吸い込まれるように消えた。


 「ありがとう、力を貸してくれるんだね。ずっとお世話になりっぱなしだな……」


 涙をふくと立ち上がり、桃たちの方へ振り向いた。


 「おまたせ、気持ちの整理をつけるのにちょっと時間がかかっちゃった。でも、もう大丈夫。多分次の戦いが正念場だから頑張らないと!」


 「正念場ってどういうこと?」


 桃の問いにアインが答える。


 「次はいつも通り『Ⅱ』が来るはずだ、激戦になる。俺は当然として桃と雪も後ろに下がるしかない、足手まといになるだけだ。戦うのはカシオペアに任せる」


 「そんな! カシオペアだけに戦わせるなんてできないよ!」


 「ありがとう桃。でも今の『Ⅱ』……姉さんは『Ⅷ』とは比べられないほど強いの、多分桃と雪でもついてこれない」


 「カシオペアの、お姉さん?」


 「ちょっとぉ~、私のこと忘れないでぇ~」


 桃が呆然とする中、動けない雪の情けない声があたりに響いた。


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