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12.桃の覚醒

ひとまず今日はここまでです。

明日も更新していくのでよろしくお願いします。



 『Ⅷ』との戦いが始まってから数分が経過した。


 「うがああああああ! 何なのあいつ? ひょいひょい逃げ回って、腹立つなぁ」


 「まぁまぁ、落ち着いて」

 熱くなる雪を桃はなだめた。


 戦いは双方決定打に欠けてこう着状態に入っていた。


 「僕の弓は威力も十分なはずなのに……」

 『Ⅷ』も、自慢の弓が簡単に避けられたり弾かれたりして悔しそうにしている。


 「とにかく相手を休ませないようにしようか。また行くよ桃!」


 「オッケー!」


 再び二手に分かれて走り出す。


 「いいねぇ、若いとタフで。おっさんにはその元気が眩しいよ……」

 そう言いつつ『Ⅷ』は矢をつがえる。


 「あれ?」


 構える『Ⅷ』を見て桃は違和感を覚えた。

 明らかに雪を狙っているのだ。

 今まではどこを狙うでもなく放つと分裂して自動的に二人に襲いかかってきていた。


 桃はこの時カシオペアが言っていた奥の手の存在、空間に飲まれる矢、時の力の事を統合してある可能性に思い至った。



 「雪、気を付けて! 多分次は今までの矢がまとめて来る!」



 「!」


 桃の言葉を聞いて驚愕の表情を浮かべた『Ⅷ』は、とっさに狙いを桃に変えて矢を放った。


 「当たりだったみたいね、焦って私を狙ったのは失敗だと思うよ」

 

 桃はにやりと笑う。

 予想通りの技だとすると、初見で受ければ確実にやられてしまうだろう。

 だが分かってさえいれば、自分には対処可能だと桃は考えていた。


 「いままでこれを見せた相手は確実に消してきたのに。まさか撃つ前からこんな小さい子に見破られるとは思ってなかったよ。……時空を超えて、集え!」


 桃に迫っていた矢が突然消え、代わりにいままで『Ⅷ』が放ってきた大量の矢が全方位からまとめて桃に襲いかかった。



===================================



 この桃のピンチにも、カシオペアは動じずに警戒を続けていた。

 もしも危惧している通り『Ⅱ』が潜んでいるならばこの瞬間を確実に狙っているからだ。


 それにカシオペアは桃を信じていた。どんな危機でもきっと彼女は乗り越えると、頬の傷に触れながらカシオペアは思った。



===================================



 桃は大量の矢が迫る中でカシオペアとの訓練を思い出していた。

 桃が重点的に覚えたのは自己の思考速度と運動速度を高める術だ。


 雪は肉体を強化して速度を上げるが、桃は単純に自分の動きを速くするのだ。

 カシオペアが最も得意とするこの技は桃にとっても一番しっくりとくるものだった。



 (いける、今の私なら。どれだけ沢山の矢が別方向から飛んできたって!)

 

 桃は意識を高めて全力で速度を上げる。自分以外の動きがどんどん間延びしていく。



===================================




 「桃!」


 雪が叫んだ瞬間、桃は数多の矢の雨にさらされた。砂煙が舞い安否ははっきりとしない。だがあれだけの攻撃を受けて無事で済むとは雪には思えなかった。


 「隙あり!」


 呆然と立つ雪に向かって『Ⅷ』が矢を放つ。


 「くっ」

 反応が遅れた雪は何とか避けるが右肩に傷を受ける。


 「やっぱり子供だねぇ。一人やられただけでこうも崩れる。ダメだよ足を止めたら。せっかく仲間が犠牲になって隙を作ったんだから、そこは気にせず突っ込まないと」


 「犠牲とか……言うな!」

 雪は『Ⅷ』の元へ行こうとするが体に力が入らない。


 「そうそう、言い忘れてたけど僕の矢は時の力の制御を乱す効果があってね。くらったら止まった時間の中でまともに動けなくなるんだ。伊達に『o’clock』を名乗ってはいないのだよ。いままでかすりもせず避けたのは褒めてあげる」


 「くそぉ、卑怯だぞお前」


 「ボロボロになって倒れた美少女にそんな目を向けられるとなんかゾクゾクするね。生前そんな趣味はなかったはずだけど。さて後は『Ⅺ』か……微動だにしないな。やっぱり『Ⅱ』を気にしてるのかな? 今は来てないから杞憂だけどね。あれ、そう言えばアイン君は?」

 『Ⅷ』は常に視界にいたアインを見失った事に気がつき探そうとする。



 その瞬間砂煙の中から桃が躍り出た。



 雪の最高速度をも超える恐ろしい速度で『Ⅷ』へ向う。


 「バカな! あの数の矢をかすり傷一つせずに切り抜けたのか!」


  桃は驚く『Ⅷ』に刃を向けるが、あと一歩及ばない。何とか避け切った『Ⅷ』は再び距離をとる。


 「さすがの僕も本気で驚いたよ! あれをまともに受けて無傷でいられるのは『Ⅻ』と先代の『Ⅰ』くらいだと思っていた。だけど快進撃もここまで、かなり無茶をしたんだろう? もう限界のはずだ!」


 『Ⅷ』の言う通り桃はすでに限界でこれ以上余力はなかった。

 だが絶望などしていない、今『Ⅷ』が見せている隙は致命的だ。


 勝利を確信し『Ⅷ』はニヤリと弓を構える。



     「えっ……」



 突然の痛みに『Ⅷ』が自分の胸元を見る。

 

 黒い短剣が胸を貫いていた。

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