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11.激闘の始まり



 「そろそろ準備できたかーい? 悪役らしく待ってみたのだけれどー」


 のんきな声で『Ⅷ』は四人に声をかける。


 「ヒーローの準備を待つなんてよく出来た怪人じゃない! 褒めてあげる」


 「怪人って…… まあ似たようなもんか」

 『Ⅷ』はポリポリと頭をかいた。


 「ねぇカッシー、こいつ全然強そうに見えないんだけど?」


 「強いよ、弓を使った遠距離の攻撃を得意としてた。それに奥の手を持ってたみたいなんだけど、それは私も知らないの」


 「カシオペアはあの人と戦ったんじゃないの?」


 「戦ったけど、あの時最期まで『Ⅷ』は本気を出さなかった……」


 「僕は一人っ子でね。妹のように思ってた子を殺すのは忍びなかったんだ。『o’clock』内で大人気だったんだよ、君。可愛らしい上に、『トゥー』と違って性格も良かったからね。全く『ワン』はなんであんなのと婚約したんだか、美人なのは認めるが理解に苦しむよ」


 やれやれと両手を持ち上げた『Ⅷ』は首を横に振った。


 「ごめんなさい、もう謝っても遅いけれど」


 「そう、こんな人形に謝っても意味はないよ。さて、そろそろ始めようか」


 そう言って『Ⅷ』が両手を前に出すと一メートルほどある緑色の弓が現れる。それを見て四人は身構えた。


 「どうする? あいつ以外が来るのは予想外だ。隠れて狙っている可能性もあるぞ」


 「そうだね、今は気配を感じないけど全員が『Ⅷ』に集中はしないほうがいいかも」


 「ならカシオペアは後方であいつの警戒だな。現状対抗出来るのはお前しかいない。俺と桃、雪であいつを叩くぞ!」


 「カッシーは参加しないの?」


 「恐ろしく強い伏兵がいる可能性があるの、私はその警戒に専念する」


 「分かったわ」


 全員で頷くとカシオペアが後ろに下がった。


 「おや? 『Ⅺ』は不参加かい? そいつはラッキーだねっ」


 『Ⅷ』は言い切ると同時に突如右手に現れた矢を桃目掛けて放つ。

 通常の弓ではあり得ない速度の矢を桃はなんとか避ける、しっかりと訓練していなければとても避けられなかっただろう。


 「桃! 左から行って!」


 雪からの言葉に、左右から分かれて接近することで的を分散させる意図だと読み取った桃は左から回り込むように『Ⅷ』へ迫る。


 「お、俺は?」


 「じゃま!」


 「えぇー……」

 アインを無視して二人は一気に距離を詰める。


 「速いなぁ、君たち本当にここの世界の人かい?」


 そういうと『Ⅷ』素早く矢をつがえて放つ。放った矢は一本のはずが、弓からは離れた瞬間二つに分かれて正確に雪と桃に襲いかかった。


 「こんなのありなの?」


 桃は矢を剣で落とすことができたが足を止めてしまう。


 一方雪は違った。迫る弓を手甲で弾きつつ、アインとの模擬戦で見せた驚異的な加速で一気に間合いまで距離を詰める。しかし振り抜いた拳は空を切った。


 「ちょ、速っ! ほんとなんなの君たち!」


 文句を言いつつも『Ⅷ』は一瞬で再び距離を取りながら次々と矢を放つ。放った矢はそれぞれが二・三本に分裂して雪に襲いかかった。


 「チッ!」


 舌打ちをしつつ雪は防御に専念する。避けたり手甲で弾くことでなんとか防ぎきる。服にいくつかかすったが、体には一つも当たった様子はない。

 弾いた矢は光の粒のようになって消え、避けた矢は空間に飲まれるように消えていった。


 「雪、大丈夫?」


 「惜しかったのになあ」


 「作戦は悪くないと思うよ、同時に別の方向に打ってきて驚いたけど、攻撃の分散はできてた」


 「よし、この調子で行こう! また行くよ、桃」


 「仮にも『o’clock』である僕の攻撃を受けて何ともないなんて……。これじゃあ形無しだよ」


 『Ⅷ』はぶつぶつと文句を言いながら、先ほどと同じように左右に分かれて向かって来る二人に向かって矢を放つのであった。



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