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2話

「いただきまーす!」


襲撃者との戦いが終わり、八城ら3班は白玉支部へと戻っていた。

彼らのいる白玉支部は山の上にある。山といっても高さ100m程度なので車で登ることも出来る。その山の上にある小さな二階建ての学校のような建物、それが白玉支部だ。


彼らがいるのは支部の1階の食堂。かなり遅めの昼食をとっている


「咲はまたカレーか。いい加減飽きるだろ」

八城が御華食べている料理を見て言う。彼女がカレー好きなのは彼も知っているが、それでも1週間の昼食が全部カレーなのはおかしいと思う。


「また私のことばかにしてるの? ていうか友貴も1週間連続で牛丼じゃない」


「何言ってるんだ。一昨日は豚丼だっただろ」


「ほとんど変わらないわよ!」


再び喧嘩を始めようとする2人を天野が止める。


「まあまあ、ふたりとも。そんなことで喧嘩しないの。お昼に誰が何食べたっていいでしょ?」


喧嘩の仲裁をする天野の前には野菜たっぷりのサラダ。八城と御華は思い出す。彼女も一週間野菜ばかり食べていたことを。


「先輩も野菜ばかり食べるからな」

「だから胸が小さいのよ」


八城の言葉に被せて御華がポツリと言う。直後、2人は胸ぐらを捕まれる。


「以後この話題は禁止……いいね?」


「「はい……」」


彼女に恐怖した2人はおとなしく食事に戻る。天野も席に戻りサラダを食べ始める。


こんな感じで食事をする八城は黒瀬が静かなことに気づく。彼が黒瀬のほうを見ると、彼女は食事そっちのけでテレビを観ていた。


番組が終わったところなのか、画面にはエンディングロールが流れていた。


「何観てたんだ?」


八城が彼女に聞く。


「『突撃天使 ダイナマイトチイタン』ですわ! 今は悪の四天王との戦いの真っ最中で1番良いところですの! 来週が楽しみ!」


彼の質問に黒瀬は目を輝かせながら答えた。


「ああ、前も観てたアニメか。面白いのか?」


「勿論ですわ! 八城さんもぜひご覧になって下さいな」


「いや、遠慮するわ」


彼女の誘いをきっぱりと断る。彼女が残念そうな顔をするが気にしない。


(あんなの観てたら5班に誘われてしまうからな)



5班のメンバーはそれぞれが専門分野を持ったエキスパートだ。言葉を変えればオタク集団である。


そんな会話をしていると、テレビの番組はニュースになっていた。

ニュースでは守護者と襲撃者の戦いの様子が映し出されていた。

映像の中で植物のような襲撃者が炎の波に呑まれていく。炎の発生源には1人の人間がいた。間違いなく彼は守護者の一員だろう。

別の映像では巨大な人形の襲撃者が町を破壊しながら進んでいた。しかし突如足を止めたかと思うと全身が氷漬けにされた。そして一瞬で身体がばらばらに切断されていった。


ニュースに流れるのはそんな映像ばかりだった。


「全く、最前線のエリートばかり映しやがって。俺たちの頑張りも放送して欲しいぜ」


気がつくと八城の隣に1人の男性が座っていた。


「なんだ亮太、いたのか」


「ああ、やっと報告書が終わったんだ。弾ばらまいたから損害報告が1番めんどくさかったぜ」


そう言って八城の幼なじみの兼本亮太はラーメンを食べ始める。彼の小隊である4班のメンバーも食堂にやって来ていた。


「それにしてもいいよな最前線は。いくら町を破壊しても報告書書かなくても良いしだろうし」


兼本がぼやく。

現在日本列島は福島県以北を襲撃者に占領されている。そのため福島県を境に守護者と襲撃者は睨み合いを続けている。先程のニュースの映像は最前線のエリート守護者達の戦闘風景だ。


「馬鹿言え。皆を守る守護者が町破壊していいわけないだろ。それに俺たちが前線に行っても死ぬだけだぞ」


八城はテレビを観ながら言う。テレビの中で八城達が戦った獣型の襲撃者が1ダースほど空へ吹き飛ばされていった。


「まあそうだけどよ、なんだかなぁ」


兼本は不満な様子だ。

その後も会話をしていると、食堂に多くの人が入ってきた。

見れば30人ほどが食堂に来たみたいだった。


その集団の先頭を歩くのは支部長の水野英夫、その横にいるのは秘書の船橋結衣。 2人はとても疲れているようだ。


水野は食堂の真ん中へ行くと皆へ声をかけた。


「えー、皆食事中すみませんが集まってもらえます?」


やけに威厳のない声だが食堂へいる八城ら白玉支部のメンバーは彼のもとへ集まる。


「皆集まった?」


水野が聞くとメンバーの誰かが手を挙げ答える。


「5班と6班がパトロールでいません」


「そうか、じゃあ後で伝えといてくれるかい?」


「了解しました」


そうして水野は皆を見回して言う。


「えー、今さっきまで本部と電話で話し合いをしててね? 詳しいことは省くけど前線の兵力を増やしたいんだって。それで……」


水野はやけに言いにくそうだ。その様子を見かねたのか船橋が言う。


「隣の市の支部を全部前線に持ってくことになったらしくて。 私達で隣の市も守ってくれ、だって」


そのとたん集まった全てのメンバーが抗議の声をあげた。


「ふざけんな! なんで本部の独断で勝手に決められるんだ!」

「私達の意見も聞きなさいよ!」

「これ以上仕事増やされたらたまったもんじゃねえ!」


八城含む白玉支部の全員はこの決定には断固として反対だった。

理由は2つある。

まず第1に白玉支部にはメンバーが50人ほどしかいない。戦闘員だけ数えれば40人だ。ただでさえ白玉市は大きな市だというのに、これ以上守備範囲を増やされたら手が回らないのだ。


そして次の理由これが1番の問題である。

この白玉支部には能力者がひとりもいないのだ。

もともと白玉支部は守護者の中でも役立たずと言われた隊員を集めたのだから当たり前と言えば当たり前だが。

そういうわけで彼らは襲撃者と銃で戦わなくてはならない。能力で戦うのとは違い時間がかかる上、一部襲撃者は銃弾が聞かない種類もいる。

彼らは常に不利な戦いをしているのだ。


これらの理由から白玉支部のメンバーはひたすら反対を続ける。


「支部長、反対はできなかったんですか?」


猛抗議の中、天野が前に出て質問する。


「勿論したよ。でも『お前の地区は襲撃者の攻撃も少ないから問題ない』って言われて、そのまま押しきられちゃって」


「もっと頑張ってくださいよ! それに最近襲撃者増えてるじゃないですか!」


抗議の声は止まらない。八城も大声をあげることはしないが内心は不満だらけだ。そんな彼に隣の兼本と黒瀬が話かけてくる。


「大変なことになってしまいましたわね」


「上層部のやつらめ、現場の苦労をなにも分かっちゃいねぇ」


2人もこの決定に不満なようだ。


「あいつらはそんなもんだよ。目の前のことしか考えない。 せめて能力者がひとりでもいれば違うんだが」


八城がため息とともに呟く。

事実、能力者がいれば話は変わるのだ。能力者がいればひとりで広範囲を守ることができる。そうすれば他の場所に投入できる戦力も増え戦いやすくなるのだ。


「文句を言っても仕方ないですわ。決められたのならやるしかありません!」


「それもそうだな。俺たちだって守護者だからな!」


その言葉に八城も同意する。たとえ能力がなくても自分たちは今まで戦えてきた。それは能力に頼らない戦い方とチームワークがあるからだ。たとえ守るべき場所が増やされたって自分たちは人々を守ることができる。そう彼は思った。


そして彼はこの騒動を止めるために前に出ようよした。


その時だった。


突如彼の前方の空間に突如として亀裂がはしった。

八城は一瞬自分の目がおかしくなったのかと思った。しかし直後その考えを取り消した。何故ならばその亀裂を彼は、彼らは毎日のように見てきたからだ。


「襲撃者!? なんでここに?」


この亀裂は襲撃者が現れるときに出来るものだ。それが今彼らの目の前に現れた。皆大慌てで亀裂から距離を取り攻撃しようとする。しかしもともと食事中だったため武器を持っている人はほとんどいなかった。


そうしているうちに亀裂はだんだんと大きくなり、遂に亀裂の向こう側から襲撃者が姿を見せた。


その襲撃者は白かった。白い髪、白い肌、白い服、何もかもが白かった。

その白のなか、瞳だけは燃えるような赤に染まっていた。


「嘘だろ、人型だと……」


誰かが絶望的だとでも言うように呟いた。


そう、その襲撃者は人間そっくり、いや、人間そのものだった。

人型、それは襲撃者のなかで最強といわれるタイプである。人間と変わらない知能を持ち、人の言葉を話し、人間と同じように武器を使うことが出来る。そして、人型は皆超能力を持っている。


銃で戦う彼らには到底勝ち目のない敵だった。

それでも諦めない人はいる。偶然拳銃を持っていた何人かが襲撃者に対して発砲する。

だがその攻撃は意味を成さなかった。何故なら撃った弾は全て襲撃者に届く前になにかに弾かれてしまったからだ。


その時点でその場にいた全員が思った。終わりだ、殺される。と。


そんな彼らに耳を疑うような言葉が聞こえてきた。


「安心して。私はあなた達を殺さない」


そうして襲撃者は一呼吸おき、言った


「私はフィア。あなた達にお願いがあってやって来た……私はこの戦争を終わらせる。そのための力を貸して欲しい」


この出会いによって八城ら白玉支部全メンバーの運命は変わっていくのだった。

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