5話
十二月にもなっても、外でごはんを食べる生徒は俺たちだけだった。 石で作られたいすは冷たく、手で触れるだけ体温が奪われるほどだった。
綾地さんにお願いして部室の鍵でも借りればよかったなと後悔した。
「さすがに寒いね。 やっぱ戻る?」
「大丈夫だよ、こうやって座れば」
紬は俺の手を引っ張って隣に座らせた。 そして、身体を摺り寄せてきた。 触れあってるところが次第に暖かくなり、心までも暖かくなる。
「こうやって学校でもイチャイチャできるよ」
「ん、うん……」
顔が自然と緩くなる。 好きな人にこうやって言ってもらえるのは、とてつもなくうれしい。
俺たちは寒さを忘れて紬がつくってくれたお弁当を食べた。
「それで、私に何を隠してたのかな?」
「隠し事っていうか、ちょっと思い出せないことがあるんだ。 えっと……いつかのデートの時だったと思うけど、紬が俺のことを何て呼んでたかなって。 覚えてない?」
「よく分かんないけど……、いつも通り『柊史君』て」
「そうじゃなくて、もっと特別な……」
「特別かぁ……、あっ」
紬の顔が赤くなり始めた。
「どうしたの? 顔、赤いけど……熱、ではないよね?」
「大丈夫大丈夫! ちょっと寒くなってきたから戻ろっか、ね!」
「え、ちょっ、紬!?」
紬に手を引っ張られて連れていかれる。
少しだけ舌を刺激するような味が口内に広がった。
あああああああああああああああ! 今、思い返すとすっっっっっごく恥ずかしいこと言っちゃってたよ私! どうしよ、多分あのことだと思うけど改めてあれを柊史君の前で言うと恥ずかしい……!
言えない、言えないよ! あのときは雰囲気がすっごく良くて自然と言えたけど、もう言えないよ!
うぅ……、柊史君はこんなこと聞いてどうするつもりなんだろ?




