「白絣、代赭色の線路に」
point:35.310921 139.534789。白絣のような陽だまり。クラスの友達と会う約束。揺られる路面電車の車窓から覗いた夏が残る青空。午前中の陽射しは暑くも優しい。
あまりにも晴れ渡っていたので、私は散歩がてら一つ前の駅で降りた。それは、待ち合わせの時間まで余裕があったのと、この路線の駅間が短いせいでもあった。
「今日は、とても良い気分」
ゴトゴトと音を立て、ゆっくりと走り去る電車の後ろ姿。緑に鮮やかな花の色が咲き匂う。ただ、あとに残された代赭色の線路が、少し寂しげでもあった。
友達は人生を続く線路に例えたけれど、
――どこに行くのかは分かっていても、どこから来たのか誰も知らない――。
そして、私たちは
――どこから来たのか分かっていても、どこに行くのかは誰も知らない――。
だから、それを生命の恒常性に照らすなら。
「いつか真希を月でもドコでも、オレが連れてく!」
彼はそう言ってくれたから。だから、このまま線路の向こうの遠い場所へ行ってみたい。それが月ではなくても。神話に語られる“アアル”や“ティル・ナ・ノーグ”でなくても。ここではない、行くべき何処かであるのなら。
でも、零号。
あなたなら分かるのかしら?
真昼の陽だまりのような眩い場所を。
それとも、零号。
あなたは知っているのかしら?
私たちを待っている、そんな居場所なんて無い事を。
それでも、無邪気過ぎる私たちは、届くと信じて青空に手をかざす。
・彼女のSNS:https://www.instagram.com/maki_rombach_0/
・聖地巡礼:35.310921 139.534789(←数字をgoogle検索)
・引用:Talking Heads - Road To Nowhere(←google検索BGM)
※本作品中で使用されている画像は、全て作者のオリジナル撮影写真です。また、この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。