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ME&MYBOY  作者: 真矢裕美
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鏡の中のアクトレス

初舞台が過ぎてから2ヶ月が過ぎました。

舞台の稽古が本格的になり毎日が忙しくなりました。

だけど私は大きな悩みを抱えていました。

そう拓哉くんのこと。勇気を出して告白しろと言われましたが、

告白する勇気がありません。

それどころか最近は拓哉くんを一人の男性として意識をするようになってきて

ラジオの仕事もミスが出て寛先生から叱られることが多くなりました。

「ひろみ、どうしたんだ?最近稽古に身が入ってないぞ。

しっかりしないとダメだぞ。悩みがあるんだったら瑠璃子に話せ。

瑠璃子が心配していたからな」

「すみません」

「今日はもういい。明日はラジオの日だ。

しっかりフォローしてくれよな」

「はいっ、お疲れ様でした」

私は帰り道何も考えられなかった。

ただ疲れた。誰かに助けてほしい。

この苦しい気持ちから逃れたい。ただそれだけだった。

そんな時だった。

車のクラクションが私の耳に響いたのは…。

車に乗っていたのは、はるみ先輩だった。

「ひろみ、クラクションに気がつかないなんて一体何があったの?

寛先生と瑠璃子先生に話せないなら私が聞いてあげる。とにかく早く乗って」

私は、はるみ先輩に促されて車に乗った。

車は高速に乗って生駒に向かっていた。

そして、はるみ先輩が住んでいるマンションに車が止まった。

「雄哉が帰っているかな?もし帰っていたらファミレスに行こうか」

「あの、雄哉さんって」

「あたしの彼氏。もちろん寛先生と瑠璃子先生の了承はもらっているわ。

だけど、一緒に住んでいることは内緒よ」

「男の人と一緒に住んでいるって信じられないです」

「ひろみも彼氏ができたらわかるわよ。さあ、とにかくあがって。

せっかく来たんだから雄哉に紹介するわ」

私は、はるみ先輩の大胆な行動に驚いていた。

男の人と暮らすなんて私には恐ろしかったからだ。

「節操は必ず守りなさいよ」という言葉が聞こえてくる。

おばあちゃんが言っていた女性としてのたしなみ。

厳しく躾けられてきた私には考えられないことだった。

「ひろみ、晩御飯これからつくるけど一緒に食べていかない?」

「いいんですか?それだったら私も何かお手伝いします」

「ありがとう、ひろみ。二人で美味しいものつくろう」

それから私は、はるみ先輩と一緒に夕食の支度をしていた。

「ただいま」と男の人の声が聞こえてきた。

「お帰り、雄哉」

「あれっ?珍しいな、お客さんが来ていたのか」

「あたしの後輩よ。元気がなかったから連れてきちゃった。

ひろみ、紹介するわ。あたしの彼の今村雄哉。

劇団風に入っていて今は子供番組の歌のお兄さんしているの。

雄哉、あたしの後輩の石川ひろみさん。

今1年生で初舞台を踏んだばっかりよ」

「はじめまして、石川ひろみです」

「よろしくね、ひろみちゃん」

今村雄哉さん、テレビで歌のお兄さんをしているだけあって

かっこよくて優しそうな人だった。

それに人当たりもよくて感じのいい人だった。

「さて、夕食ができたから食事をしてから話を聞くわ」

はるみ先輩は夕食につくったハヤシライスをご馳走してくれた。

食事が終わり一息ついた時、雄哉さんはコンビニに行くからと

行って部屋を出て行った。

女同士のほうが話しやすいから気をつかったんだろうか。

「なんか雄哉さんに悪いことしたみたいですみません」

「いいのよ、気にしないで。彼は家に後輩を呼ぶのは

何かあったんだってことわかっているから。

それより、話してくれるわよね?今悩んでいること」

はるみ先輩に促されて私は今までの悩みを全部話した。

「私、初めは思いは伝わらないと思っていました。

だけど一緒に仕事をして一人の男性として拓哉くんを見ていました。

そしたら今までの思いに蓋ができなくなりました」

「自分の気持ちに嘘がつけなくなったのね。私も片思いの時そうだった。

高校の演劇部で人気があった雄哉に勇気を出してチョコレートを渡したの。

そしたら逆に彼から付き合ってくれって言われて驚いたの。

だって人気のある彼から好きだと言われて幸せだった。

今こうして一緒に暮らせて本当に本当に楽しいの。

だって一人でいるより二人でいるのが心強いから」

「幸せなんですね、はるみ先輩は」

「もちろん幸せよ。ひろみ、あなたも勇気を出せば幸せは来るわ。

一つ勇気を出せば必ず何かもらえる。怖くて不安になることがあっても

殻を破らなきゃ何も始まらないわ。叶わない夢だって

諦めないで強くなりなさい。そうすれば勇気が出てくるわ」

はるみ先輩の強い言葉に私は感動していた。

いつか私にも勇気が出る時がくるのを信じようと思った。

「ただいま、美味しいケーキがあったから買ってきたよ」

雄哉さんがケーキの箱を持って帰ってきた。

箱を開けてみると色とりどりのケーキがたくさん入っていた。

「わぁっ、ティラミスだ。私、ティラミス大好き」

「やっといつものひろみに戻ったみたいね、よかった」

「女の子は明るい笑顔が一番だね」

ケーキの箱を見た私を見て、

はるみ先輩と雄哉さんは優しい笑顔になっていた。

「ケーキを食べたら近くの駅まで送るわ。

明日はラジオの仕事でしょ、頑張るのよ」

「はいっ、頑張ります。今日はありがとうございました」

そして、はるみ先輩と雄哉さんは私を駅まで送ってくれた。

「ここから京都まで特急に乗ると早いわ。京都から京阪七条駅まで

距離は近いからすぐに乗り換えられるわよ」

「ありがとうございます、はるみ先輩」

「一つ勇気持つと強くなれるからね。忘れないでね」

「はいっ、雄哉さん今日はありがとうございました」

「または遊びにおいで。今度は大好きな人と一緒にね」

私は特急列車に乗って京都に向かった。

列車のなかで私が考えた。

一つ勇気を持つと強くなれる。

それを信じて自分の道を進もうと思った。

そして京都駅に着いた時についた時に私の携帯が鳴った。

「もしもし」

「ひろみ、今どこにいるの?」

「今、京都駅にいる。もうすぐ乗り換えて帰るから」

「帰りが遅いなら連絡入れなきゃダメでしょ。

とにかく早く帰ってきなさいよ」

「わかった、山科についたら連絡するからね」

それから私は山科に行く列車に乗って家に帰ってきた。

帰ってきた時、おばあちゃんが茶室で待っていた。

「ひろみ、女の子がこんな夜遅くに帰るなんてとんでもないことです。

帰りが遅くなるならちゃんと連絡しなさい。

いいですか、劇団に入れたのは夜遊びをするためじゃないですよ。

これからは身を慎んで行動しなさい。わかりましたね」

「はいっ」

「さあ、今夜はもう寝なさい。これから気をつけるんですよ」

お祖母ちゃんからの説教は短かった。いつもだったら長いのに

今日は違っていた。私の心境を心配していたのかな?

今日、はるみ先輩に悩みを話せてよかった。

私も彼氏ができたら一緒に暮らしたいと思うかな?

ううん、まだまだ先でしょ!

拓哉くんに告白する勇気も今ないくせに夢みたいなこと考えないの!

だけど、一つだけわかったことがあった。

一つ勇気持てば強くなれる。

はるみ先輩が言った言葉が強く私の耳に残っていた。

もう大丈夫、今なら強くなれる。

時間がかかってもいい。拓哉くんに思いを打ち明けよう。

そう言えば明日は進路指導だ。

私は大学に進学しようと思っている。

だけど、具体的に決めていない。

今日は疲れているから頭が働かない。

だけど、きちんと自分の道を決めないといけないんだ。

でも今夜は疲れていて気持ちの余裕がなかった。




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