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ME&MYBOY  作者: 真矢裕美
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初舞台への道

私は点滴を受けている時、コンコンとドアを叩く音がした。

「どうぞ」と私が言うと、とても綺麗な女性が入ってきた。

彼女はドリームランドのトップ娘役結城奈緒子さんだった。

私は彼女が直々にお見舞いに来るなんて信じられなかった。

「はるみ先輩がお見舞いに来るなんて光栄です。

でも、どうして私が病気だってわかったんですか?」

「ひろみ、あなたは必ずスターになれるわ。今は未知数だけど

才能があるわ。だから自信を持って初舞台を踏んでちょうだい。

それじゃ、舞台で会いましょう」

結城奈緒子さん、本名は飯島はるみさん。

今は3年生で娘役のトップスターだ。

その人が私の見舞いに来てくれた。

私は驚いて声が出なかった。

「さすがトップスターだけに綺麗やな。

私らもあんなスターになりたいな」

「素敵よね、今まで舞台を客席で見ていて夢の世界だったのにね」

「あたしも憧れちゃうな。夢の舞台に立つ日が叶ったのよね」

「そうや、みんなで初舞台頑張ろうな」

はるみ先輩、綺麗だった。私も舞台に立って素敵な女優になれるかな?

そうじゃない、やっぱりなりたい。

いろんなお芝居ができる大きな舞台に私は立つんだ。

もう迷わない。私は初舞台に向かって頑張ろう。

それからしばらくして久美子が病室に駆け込んできた。

突然の再会に驚いた私は久美子に

「仕事はどうしたの?」と聞いていた。

すると久美子は、

「仕事なんてどうでもいいのよ!美由紀からのメールを見て

東京から新幹線で来たんだからね」と言った。

「久美子、心配してくれてありがとう。

いつもの発作だから大丈夫だよ。疲れが出たんだね、きっと」

「嘘つかないの!あんたの1年先輩の劇団員が

飛行機事故で亡くなったんでしょ?

それも新しいクラスで一緒になるはずだったって聞いているわよ。

ひろみ、もう自分に我慢するのやめなよ。

あんたは、そうやって我慢して爆発させるから

病気になるんじゃないの。

劇団には同期生というお友達がいるし、

学校には美由紀や律子がいるじゃない」

「私、拓哉くんが好きだよ。でも気持ちが通じないよ」

「何言ってんの!そうやって自分の気持ちを封じ込めてどうするの?

自分から病気をつくったらダメだよ。圭織さんから全部聞いたわよ。

あんたは自分の気持ちを封じ込めるから病気になるんだって。

自分の気持ちに素直にならなくきゃダメ!

そうしないといつまでも片思いで終わるよ」

「あたしの恋実るのかな?」

「それは、これからの行動次第だよ。

素直になって拓哉くんにアタックしなよ。

たとえ実らなくても自分に勇気が一つ増えるから大丈夫だよ」

久美子の言葉で背中を押された私は拓哉くんに告白しようと思った。

ありがとう、久美子。いつも背中を押してくれてありがとう。

私、勇気を出して拓哉くんにアタックしてみる。

それから2週間が過ぎ、私たちの初舞台の日が来ました。

この日はスカイブルーのブラウスに黒のロングスカート、

そして劇団に行くので黒のハイヒールを履きました。

家を出る前の朝、私は朝食をすませた後に茶室でお茶をたてました。

お茶を飲むのは私のおばあちゃん。礼儀作法は厳しいけど、

普段は優しいおばあちゃんです。

「ひろみ、美味しいお茶だったよ」

「ありがとう、おばあちゃん」

「いいかい、ひろみ。劇団に入れば殿方と接する機会が増えるからね。

いつも言っているけど必ず節操は守りなさいよ。

女の操は心から愛するだけに捧げるものですからね。

よく覚えておきなさいよ」

私は、おばあちゃんからお茶とお花を教えてもらった。

そして着物の着付けと礼儀作法も教えてくれた。

日舞を習う者は礼儀作法をきちんとしないといけないと

料理や和裁と洋裁そして掃除には特に厳しく教わった。

社会に出て恥をかかないようにと小さい頃から躾を受けて育った私。

今、私は社会勉強のためにと入団を許した

お父さんとお母さんに感謝していた。

そして家を出る時が来た。

「ひろみ、気をつけて行くんだぞ。あとからみんなで応援に行くからな」

京ちゃんは、おじいちゃんは患者さんを見ないといけないから

来れないけど、頑張れって言ってくれた。

「行ってきます」

まるで入学式に行くみたいに家族は見送っていた。

ありがとう。私、頑張るからね。

そして山科の駅から京都駅を経由して上本町へ行く。

この道もだんだん慣れてきた。

上本町に着いた私は稽古場に急いで行った。

稽古場の入口にある自分の名前のプレートを変えて楽屋に入っていった。

大きな楽屋に私はただ驚いた。

そして舞台を覗いて見ると客席の大きさに驚いた。

「ひろみ、何をしているの?こそこそ覗いてないで

こっち来て見てごらんなさい」

「はるみ先輩、おはようございます」

私は、はるみ先輩に促されて舞台の真ん中に来ていた。

「どう?すごいでしょう?この舞台に立つのよ。

私も初舞台の時は緊張したわ。今3年生になって

トップ娘役になっても思い出すのよね」

「はるみ先輩も緊張したことあったんですか?」

「緊張感は今でもあるわ。舞台に立つ1日が勝負だから」

「はるみ先輩、私頑張ります」

「その意気よ、ひろみ。頑張ってね」

「はいっ」

はるみ先輩に励まれて緊張がほぐれた私は

今日の初舞台頑張ろうと決意を新たにしていた。

そして、いよいよ初舞台の時がやってきました。

「美紀、着付けが上手くいかない」

「それどころじゃないって。こっちは化粧が上手くいかないんだから」

「まったく、何やってんねん!未来、こっち来てみ」

圭織が来て未来の着付けをしてあげた。

「まったく、美紀も何やってんねん!貸してみ、うちがメイクしたるわ」

圭織は自分が最年長だから一生懸命仲間を助けてる。

多少口は悪いけど根は優しいのよね。

「ひろみ、着付けが終わった子から集合させてや。

もうすぐ幕が開くから急いでや」

「うん、わかった」

私は急いで着付けが終わった子を集合させた。

そして舞台の口上を述べる時が来た。

口上を述べるのは圭織と私だ。

「一言ご挨拶申し上げます。

私たちは今年初舞台を踏むことになった雛鳥たちでございます」

「この桜の咲く良き日に私たちは初舞台を踏むことになりました。

これから私たち雛鳥たちを見守ってくださいますよう

よろしくお願い申し上げます」

口上が終わると私たちは舞を踊った。

緊張したけど一生懸命大役を果たしてホッとしていた。

そして、いよいよダンスを披露する時が来た。

「みんな、着替えたら舞台の袖に集合してや。

急がんと幕が開くからな」

圭織はみんながダンスの衣装を着替えているか

自分の定位置に着いたか点呼していた。

「雅、リードお願いね」

「任せといて」

全員の点呼が終わった圭織は自分の定位置についた。

相手役は、ゆかりだ。ケガが治って本当に良かった。

そしてスタンダードダンスを披露した私たちに

舞台から拍手が沸いた。

そしてドキドキした初舞台が終わった。

それから私たちは楽屋の入口を出ようとしていた。

楽屋の前で久美子と美由紀そして律子が花束を持って待っていてくれた。

「みんな、初舞台おめでとう。これは私たちのお祝いよ」

そう言って久美子は私たちに花束を渡してくれた。

「久美子、ありがとう」

「こんなにお祝いしてくれて嬉しいわ。

うちも頑張った甲斐があったわ。ありがとう」

圭織、雅、未来そして美紀に花束が配られた。

今日の初舞台を一番に盛り上げたのは圭織だよ。

私たち同期生を引っ張っていったんだから。

「久美子、美由紀、律子、今日は来てくれてありがとう。

あたし、これから頑張るから見ていてね」

「もちろんよ、私たち友達じゃない。水臭いこと言わないで

なんでも話してよね、約束よ」

「うん、ありがとう」

「雅も私たちの仲間だからね。ひろみと一緒に仲良くやろうね、約束よ」

「みんな、ありがとう。これからもよろしくね」

美由紀と律子が雅と打ち解けてくれてよかった。

ありがとう、久美子、美由紀、律子。

これからもよろしくね。

これから舞台頑張るから見守っていてね。

私は今3人の友情に感謝の気持ちでいっぱいになっていた。



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