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ME&MYBOY  作者: 真矢裕美
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不吉な予感

桂先輩の事件から2ヶ月が過ぎ、桜の咲く4月になりました。

私は高校3年生になり、新しい学校生活を送ろうとしています。

今日は学校の始業式です。

私は美由紀と律子と一緒にクラス表を見に行きました。

2年生で担任をしていた小川先生は人事異動で

学校の男子クラスを受け持つことになりました。

私の学校は男子部と女子部に分かれていて

それぞれ先生が違います。

小川先生は優しい先生だったので異動が決まった時

クラスの女子がみんな泣いてしまいました。

それだけ慕われていたことになるんですね。

小川先生、男子部でも頑張ってください。

「ひろみ、大変よ。あたしたちの担任吉村先生よ。

ひろみ、黒ゴム持ってない?吉村先生からチェック入れられるよ」

「ごめん、美由紀。あたし、予備のゴム持ってないの」

吉村先生は生活指導の先生でもあって校則には厳しい先生。

美由紀は今日カラーのゴムで髪をくくっていたのよね。

小川先生の時は大目に見てもらえたけど、今度は一筋縄ではいかないな。

あたしも気を引き締めていかなくちゃ。

だけど、美由紀はもともと天然パーマで

ストレートパーマをかけた時は先生に拘束通りなら構わないと

違反を免れたのよね。あの時は本当にハラハラしたよ。

美由紀は他の友達から黒ゴムを借りてなんとかしのいだ。

私たち3人は教室に行くまでの足取りが重かった。

「あたし、学校行きたくない」

「吉村と過ごすなんて地獄だよ」

「小川先生がよかったな」

それぞれぼやく私たち。教室に来ても憂鬱だった。

私はいつも出席番号1番だけど、今回は免れた。

「ひろみ、どうしたの?冴えない顔をして」

「雅、あなた同じクラスになったの?」

「うん、あたしはクラスが違っていたから

ひろみは知らなかったんだよね」

私はびっくりした。雅が私と同じ学校だったんだから。

でもこれからの学校生活に光が見えてよかった。

「ひろみ、誰よ。紹介してよ」

美由紀と律子が私に雅を紹介してと言った。

「劇団の同期生の雅よ。えっと本名は…」

「安稜雅よ、よろしくね」

「よろしくね、雅」

美由紀と律子は雅と打ち解けたみたい。

これから三年生の1年間4人で仲良くなれそうです。

「あっ、先生が来たよ」

私たちは急いで自分の席に着いた。

ところが1つだけ空席があった。

先生は空席になっている事情を説明した。

「矢島桂さんは実家のある静岡から帰る飛行機が事故に遭い

今行方がわからなくなっています。でも心配はいりません、

今警察で捜索をしていますから安心してください」

桂先輩が事故?

私は信じられなかった。

無事でいるだろうか?

私は一抹の不安を感じていた。

「ひろみ、大丈夫だよ。桂先輩と一緒に舞台踏みたいよね?

学校が終わったら稽古場に行こう」

「うん、わかった」

雅と放課後上本町にある稽古場に出かけた。

劇団員の集合場所が喫茶店なので

本当は制服で喫茶店に入るのは校則違反なのよね。

だけど、今は背に腹はかえられない。

私と雅は制服で喫茶店の入り口に入った。

喫茶店には寛先生と瑠璃子先生そして俊治先生がいた。

私たちを見た寛先生は、

「こら、制服のまま来るやつがあるか!」

と言った。

私たちは咄嗟に

「すみません」

と言った。

「まぁ、今日のところは大目に見るが気をつけろよ」

どうにか寛先生に許してもらえた。

そして勢いよく走って入ってきた圭織が息を切らしていた。

「こらっ、走って入ってくるやつがあるか!」

「すんません、静岡の飛行機事故はテレビで大騒ぎするほどの

大事件やったんで劇団の仲間が巻き込まれてないか

気になって来たんです」

「圭織も来たんで聞いてくれ。たった今2年生の桂が亡くなった。

今日の1年生のレッスンは中止だ。これから桂の家に行ってみる」

桂先輩が亡くなった?

夢なら覚めてと私は心のなかで叫んでいた。

それから私は圭織と手分けして1年生の仲間に今日のレッスンが

中止になったことをメールで知らせた。

メールしてまもなくして、美紀からメールがきた。

「なんで2年生のせいで私たちが巻き込まれなきゃいけないの?

私たちの初舞台はどうなるの?」

美紀のメールを圭織に見せたら圭織はこう言った。

「そりゃ美紀が怒るの無理ないわ。

初舞台が日延べになったら腹立つで、きっと」

「そうよね、みんな初舞台を目指して頑張ってきているんだもの。

突然のトラブルで日延べになったら、みんなかわいそうよね」

「ゆかりのケガが治ってレッスンに復帰できるって喜んでいたからな。

日延べになるなんてかわいそうやな」

その時だった。私の携帯の着信音が鳴った。

相手は美紀だった。

「もしもし?」

「ひろみお姉さん、メール見たよ。私、今梅田にいる。

未来も一緒だよ。今日のレッスンの中止納得いかない。

今から二人で上本町に行くからね」

「待って、美紀ちゃん。今日は突然のことなの。

桂先輩が亡くなったのよ」

「そんなの私たち1年生には関係ないでしょ?

2年生のことでなんで私たちが我慢しなきゃいけないの?

先生に直接聞くから口出ししないで!」

「ちょっと変わるから貸してみ」

圭織が私の携帯で美紀に話をした。

「美紀、かなり怒っているわ。今から上本町に来るって」

「えっ?今から来るの?」

「まったく、美紀は言い出したら聞かへんからな。

わがままに育ってんやろな、きっと」

そう言ってため息をつく圭織。

私は桂先輩が亡くなったのがショックだった。

ライバルになれるかもしれない相手がいなくなる。

こんな悲しいことがあるだろうか。

私はショックが強かったのか顔面蒼白で倒れてしまった。

「ひろみ、しっかりして!」

雅の言葉が虚しく聞こえるだけで私には届かなかった。

「救急車を早く呼べ!ひろみが発作を起こした」

心が真っ白。これから先どうなるの?

意識を失った私は近くの病院に運ばれていた。

意識を取り戻した私は病室で点滴を受けていた。

雅の知らせで美紀と未来も病院に駆けつけていた。

「ひろみお姉さん、ごめんなさい。私、お姉さんが

悩んでいたの知らなかったの」

「いいのよ、今日のことで納得いかない子は他にもいるわよ。

気にしないで、倒れたのは私が悪いから」

「ひろみ、あんた自分のせいにして気持ちを抑えるのやめや!

あんたは一人やないんやで。あたしや他の同期生がおるやろ。

もうええ加減に自分を抑えるのやめや!」

圭織の言葉に雅も美紀も未来もうなずいた。

「それから、もう一つ言うとこう思うねん」

そう言って圭織は言葉を続けた。

「城島拓哉が好きなんやったら勇気を出して告白したらええわ。

あんたにとって雲の上の存在やと思うけど、好きな相手が

人気タレントだっただけで他には何もないやん。

このことはあたしらの暗黙の了解にしといたる」

「圭織、どうして?」

「あんたが倒れた時に制服のポケットから定期入れが落ちたんや。

それを見てたら城島拓哉の写真が入っていた。

あんたにしたら告白なんてとんでもないって思っているけど、

テレビを離れたら普通の男の子やないの。

あんたが心配することやないって。勇気出して告白し」

圭織の言葉に他のみんなもうなずいた。

「ほら、あんたの落とし物や」

圭織は私に定期入れを渡してくれた。

私は一人じゃない。他の同期生がいる。

共に初舞台を踏むという目標がある。

「圭織、ありがとう」

「礼なんかいらんんで。矢島桂に嫌がらせされても

あたしらは負けんかった。それどころかみんなでやっつけることができた。

一人の力は小さいけど、多くの力が集まると大きな力になるんや。

だから、ひろみは勇気を出して強くなってほしいねん」

一人の力は小さいけど多くの力が集まると大きな力になる。

今、初舞台に立つという大きな目標に頑張っている仲間がそばにいる。

私は一人じゃないんだ。

もう迷わない。

初舞台のレッスンに寛先生のラジオも一生懸命頑張ろう。

私は決意を新たにそう思った。


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