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ME&MYBOY  作者: 真矢裕美
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上級生への心構え

次の日、私は学校で劇団のなかであったことを

美由紀や律子に話していた。

「大変だったね、ひろみ。大丈夫だった?」

「未来が謝ったから事なきを得たけど、

今後気をつけなければと思ったわ」

「劇団のなかは思ったより厳しいのね。

くじけちゃダメよ、ひろみ」

「うん、そうだね」

私は昨日のことで2年生が言ったことを思い出していた。

舞台では多くの上級生がいる。上級生の心配りを忘れるな。

私は、1年生のみんなにどうやって伝えていいのか試行錯誤していた。

未来と喧嘩した2年生の委員に私はこう言われた。

「さすが寛先生が見込んだだけあって度胸もあるわね。

私たち舞台ではライバルになるかもね。

私は矢島桂、芸名は柏木桂子よ。よろしくね」

そう言って桂先輩は手を差し延べてきた。

「石川ひろみです。芸名は朝霧裕美です、よろしくお願いします」

「ひろみ、初舞台楽しみにしているわ。行きましょ、みんな」

「ひろみ、大丈夫?」

雅が心配して私に声をかけた。

「ありがとう、ひろみ。あたしを庇ってくれて」

と泣き出す未来。

それを見た私は、

「もういいのよ、これから気をつけていけばいいんだから」

と慰めていた。

「私ね、日舞の世界しか知らなかったから劇団のなかが厳しいとは

思わなかったわ。私、世間知らずだったのね、きっと」

私は劇団のなかであった今まであったことを話していた。

「そんなことないよ、ひろみ。2年生の委員の人がライバルとして

認めたことはすごいことじゃない」

「そうよ、桂先輩は必ず何かの形でひろみを助けてくれるわよ」

美由紀や律子の言うように私が桂先輩のライバルになれるだろうか?

「あっ、久美子からメールよ」

「今日はひろみの携帯に入っているのね」

懐かしい親友からのメールに私は嬉しかった。

「ひろみ、タイムトラベルに出るんだって?

おめでとう、よかったね。拓哉くんと一緒に頑張ってね。

それと劇団の初舞台身に行くから頑張ってね」

私はメールを見て美由紀と律子に久美子のメールを見せた。

「ひろみ、拓哉くんとラジオの仕事することになったの?

すごいじゃない」

「やっぱり拓哉くんと運命の赤い糸に繋がっていたんだよ。

よかったね、ひろみ」

拓哉くんと一緒に仕事ができる。

私は嬉しくて久美子に真っ先にメールを送っていたのだ。

もうすぐ拓哉くんに会える。だけど、緊張しちゃうな。

だって普段男の子と話したりしないからどうしよう。

なんだか不安になってきちゃったな。

「ひろみ、幸せそうな顔しているね。

とにかく、ラジオも拓哉くんの恋も頑張ってね」

「やめてよ、美由紀」

顔が真っ赤になっている私。

こうしていろんなことが話せる友達がいるのは

私の一番の宝物だね、きっと。

久美子、美由紀、律子、雅、美紀、未来とそれぞれ目指すものは

異なっていてもそれぞれ何かを見つけている。

残る私は、今やっとそれを見つけたばかりだ。

寛先生と一緒にやるラジオ番組に私は変わっていけるだろうか?

拓哉くんの出会いで私は変われるだろうか?

日舞以外の成果を垣間見るチャンスになるという寛先生の言葉を

信じて頑張っていこうとそう決めた私だった。

ところが、ある日。劇団のなかで思わぬ事件が起こった。

「ひろみ、ちょっといい?」

「なぁに、圭織?」

「2年の矢島桂の取り巻きの行動が目に余るんや。矢島桂本人は

知らんけど、うちら1年生への嫌がらせはメチャクチャやで」

圭織こと今井馨は高校3年在学で入団した最年長。

そして私と学年委員を一緒にしている仲だ。

「あんな、うちらへの嫌がらせが始まったんが

ひろみが寛先生のラジオに出るの決まってからやねん。

せやけどな、うちらはみんなで応援するから負けんと頑張りや」

「ありがとう、圭織。だけど桂先輩のことはどうするの?」

「それやけどな、取り巻きの一人がバレエシューズにガラスを入れたんや。

それを履いたゆかりが大ケガして治療しているわ。

うち、瑠璃子先生に今までのこと全部話して、

ゆかりをケガさせたシューズも証拠に持って行ってん。

あとは寛先生と瑠璃子先生の判断に任せるしかないと思うねん」

「圭織、ゆかりのケガは長くかかりそうなの?」

「全治2週間やからな。うちら揃っての初舞台に間に合うか微妙やねん」

「ごめんね、圭織。ゆかりのケガに気がついてあげられなくて」

「ひろみが謝ることやないって。謝るんやったら

矢島桂の取り巻きに謝らせたらええねん」

圭織と私がやり取りしていた時に

俊治先生から稽古場に全員集合しろと呼ばれた。

稽古場には2年生が全員集合していた。

私たち1年生も整列して集合する。

私たちの前には寛先生と瑠璃子先生が立っていた。

「たった今、佐藤先生から一年生と2年生でトラブルがあったと聞いた。

なんでもガラスの破片を入れたシューズを履いてケガをしたと聞いている。

これが証拠のシューズだ。また2年生の1人が1年生の部屋に入り

シューズにガラスを入れたのを見たと3年生の委員から報告があった。

誰がやったか心当たりがある者は前に出ろ」

寛先生の言葉で2年生の4名が前に出てきた。

そう彼女たちは桂先輩の取り巻きだった。

寛先生は、さらに厳しい言葉で彼女たちに言った。

「どうして、そういうことをしたんだ?どんな理由であれ

卑劣な行為は許すわけにはいかない。君たちには残念だが

退団してもらう。荷物をまとめて帰れ!」

厳しい。

これが社会の現実なの?

私は寛先生の厳しい言葉と冷たい眼差しに

社会での冷たさを感じていた。

そして、事件から1週間たったある日のことだった。

「ひろみ、3年生の人が呼んでいるよ」

「誰かな?」

学校で私は美由紀から声をかけられて教室の扉に行った。

「ひろみ、あんたうちと同じ学校やってんな」

「圭織、どうしたの?」

「うちな、ここの3年やねん。本で学年名簿見たら、

ひろみが2年に在籍していたから来てみたんや。

ちょっと、外出れるか?」

「うん、いいけど」

圭織が私と同じ学校だったなんてびっくりだった。

「あんな、矢島桂やけどな。取り巻きが退団してから

劇団で他の2年生からシカトされてるんやて」

「えっ?それ本当なの?」

「ホンマや。取り巻きがおった時にいじめられた同期生が

たくさんおってな、今その子らに仕返しされているみたいやで」

信じられない。

桂先輩が、そんな目に遭っているなんて。

何か私にできることないの?

なぜか一抹の不安を感じていた。


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