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ME&MYBOY  作者: 真矢裕美
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悲しみのセパレーション

久美子が亡くなった翌日、亮二くんが事故現場のマンションから飛び降り自殺した

このことは拓哉から聞いた。

亮二くんは久美子以外の女の子は考えられなかった。

だから自らの命を絶って久美子の後を追ったのだ。

久美子、亮二くんが天国に行ったよ。

空の上で早く会えるといいね。

「亮二は久美子さんだけだったんだよ。

明日、亮一と一緒に葬式をするって言ってきたよ。

二人の葬式にはオレたち4人で行ってくるよ。

同じデビューだったのに、こんな悲しいのは辛いよ。

亮一も亮二もいいヤツだったからな」

私は拓哉の言葉に何も答えられなかった。

私が久美子を失ったように拓哉も亮二くんの自殺に苦しんでいる。

そんな拓哉を見るのが辛かった。

まるで自分の悲しみを見ているようで悲しかった。

私は来月始める舞台の稽古が始まろうとしていたが、

久美子の悲しみから立ち直れずにいた。

「苦しいが二人で前を向いて歩こう」と拓哉が言ったが、

私は久美子の死を受け入れられずにいた。

そして、舞台稽古が始まる日のことだった。

私は、拓哉の言葉が耳に入らず舞台稽古に出ないと言ったのだ。

「ひろみ、おまえが女優になって喜んだのは久美子さんだろう?

今のおまえを見たら久美子さんが悲しむぞ」

「いいのよ、舞台は私だけじゃないもの。

他に代役がいるから私が抜けたってどうってことないわよ」

すると拓哉は怒って私の頬をたたいていた。

そして、私にこう言った。

「いい加減にしろ!おまえはドリームランドしか知らないから我儘になるんだ。

久美子さんのようにアイドルから芸能界で成功したヤツは、

ほんの一握りなんだぞ。

ひろみ、我儘も時には人に迷惑をかけることになるんだぜ」

これが私たちの初めてのケンカだった。

久美子のことで立ち直れない私を拓哉はなんとか励まそうとしていた。

だけど、それが今の私には重荷なってケンカになってしまったのだ。

「たたいて悪かった。舞台稽古にはちゃんと行けよ」

拓哉は部屋を出て行こうとしていた。

「待って、拓哉。行かないで」

発作的に私は拓哉を止めていた。

今止めなければあとで後悔しそうだったから…。

「拓哉、ごめんなさい。

拓哉だって亮二くんがいなくなって悲しいのに自分だけ辛いと思っていた」

「前にも言っただろう?二人で先に進んでいこうって。忘れたのか?

おれたちは互いに大事なものを亡くしたんだ。苦しいのはオレも同じだ。

ひろみ、一人で苦しみを抱えるな。おまえにはオレがいる」

「拓哉、ありがとう」

苦しい気持ちは拓哉も同じ。

拓哉と一緒なら苦しみも半分になる。

ありがとう、拓哉。

私、舞台に出ます。

そして、私は稽古場に足を踏み入れました。

「ひろみ、元気になってよかったわ。心配していたのよ」

「ありがとうございます、加奈子先輩。そして、ご心配かけてすみませんでした。

これからもよろしくお願いします」

「同期生のみんなが心配していたのよ。

過去に桂が事故に遭って亡くなったから、

ひろみの悲しみは強いんじゃないかって。

だけど、こうして稽古場に来て安心したわ。

涼子も心配して私に電話してきたのよ。

ひろみは大丈夫かって」

「そうですか、涼子先輩にも心配かけてしまったんですね。

今夜、涼子先輩に電話してみます」

「そうしなさい、本当にあなたはみんなに守られているわ。

涼子にしろ、はるみにしろ、心配してくれる先輩がいること忘れないでね。

悲しみを乗り越えていけば自然に立ち直れるわ。

焦らずに自分のペースでいきなさい」

「はいっ、ありがとうございます」

加奈子先輩からの言葉でゆっくり気持ちを整理をしていこうと思った。

そして、ドリームランドの舞台で演じていきます。

今日はタイムトラベルのオンエアの日でした。

いつもと違って清々しい気持ちで気持ちでスタジオに入っていました。

ところが。世間では久美子症候群と呼ばれる事件がありました。

それは久美子のファンの子が事故現場の近くで飛び降り自殺をするもので、

このことは社会問題になっていました。

寛先生は、この事件にはかなり苛立っていました。

「何が久美子症候群だ。マスコミも騒ぎすぎだぜ」

その言葉に洋さんは寛先生を諭していました。

「寛くん、落ち着いて。冷静になって」

「すみません。洋さん。この事件は世間でも騒がれているので、

なんとか止めさせたいんですよ」

「気持ちはわかるよ。僕もニュースを読むたびに辛くなるからね。

今日のラジオで、この事件を取り上げてみてリスナーの反応を見るのがいいと

思うんだけど、どうかな?」

「オレも賛成です。この事件はオレのコーナーで話してみます。

ありがとうございます、洋さん」

「どういたしまして、これで久美子症候群がなくなることを祈っているよ。

それにコーナーのテーマも決まりだね」

「おはようございます」

私は元気よくスタジオに入っていった。

「おうっ、ひろみか。舞台稽古お疲れ、少しが気持ちが晴れたようだな」

「加奈子先輩や同期生のおかげです。

周りに助けられて自分を取り戻すことができました」

「それを聞いて安心したよ。おまえは水木真理恵を失い、

今度は親友の渡部久美子を失った。

悲しみは一番大きかったのを乗り越えてよく頑張ったな」

「ありがとうございます、今回はご心配かけました」

「ひろみ、無理をして気持ちを切り替えようとするな。

悲しみは自然と時間が流れれば薄らいでいく。

今は稽古に集中してくれればいい、わかったな」

「はいっ、寛先生。ありがとうございます」

久美子、私は大丈夫よ。

これからは一人で頑張っていくわ。

あなたのことは忘れない。

あなたに背中を押されて今の私があるんだから。

これからの私を天国で見守っていてね。





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