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ME&MYBOY  作者: 真矢裕美
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眠れない夜を抱いて

今日、私は寛先生に呼ばれていた。

次の舞台の前に何があるのだろうか?

「ひろみ、来年の春からトップで舞台に立ってくれないか」

「どうしてですか?」

「聞いたとおりだが、美奈子の退団と同時に涼子が退団する。

涼子は憧れていた美奈子と踊れる幸せをもらったからと言って

今後はミュージカル女優として活躍したいと言ってきた。

ひろみ、引き受けてくれるか?」

「トップなんて私自信ありません。

涼子先輩も席のトップだったはるみ先輩も素敵な娘役さんです。

私にできるか不安です」

突然の申し出に驚いていた。

私がトップスターになんて考えたことなんてなかったから。

歌姫としてドリームランドの舞台に立ちたいと夢を見てきたけど、

まさかトップスターなんて夢にも思わなかった。

「寛先生、お返事はゆっくりでいいですか?」

「それはかまわないよ。おまえの考えが決まるまで時間はあるから心配するな」

寛先生の話はそれで終わった。

寛先生は私が出る時に言った。

「ひろみ、自信持っていいんだぞ。おまえは水木真理恵が認めた歌姫だ。

普段弟子を取らない彼女がおまえの才能を見抜いて

自分の手で育てたいと言ったんだ。

水木真理恵が生きていたら自信を持って受けろって言うだろうな」

真理恵先生が生きていたら私はどうしていただろう?

私がトップ娘役になるなんて信じられない。

今度のトップ男役の岩崎奈美さん。

本名は清水加奈子さん。

私の3年先輩で私と同じ年だ。

加奈子先輩は中学3年在学で劇団を入団したので同じ年でも緊張する。

「ひろみ、どうしたの?浮かない顔をして」

「加奈子先輩、こんばんは」

「加奈子でいいわよ。劇団では先輩でも私たち同い年だから」

「ありがとうございます。私がトップでやれるか不安になっています。

今の私でドリームランドの舞台を守れるか心配になっています。

加奈子先輩はどんな気持ちでいますか?」

「私も寛先生からトップをやってくれって言われて驚いているの。

だって6年生でトップにやるなんて異例のことだって同期生から噂されているわ。

美奈子先輩のトップの時の舞台を自分で継承するなんて思いもしなかったもの。

私もあなたと同じ不安を持っているのよ。

だから心配しないで一緒に頑張りましょう」

加奈子先輩も同じことを考えていたんだ。

わかりました、もう迷いません。

ドリームランドのトップスターになって伝統を守ってみせます。

「ひろみ、元気ないわね。どうしたの?」

「涼子先輩、私にトップが務まりますか?まだ不安です」

「ひろみ、私に言ってくれたじゃない。

はるみとは違う魅力があるから自信を持ってって。

一人で悩まないで加奈子と一緒に新しい舞台をつくっていって。

加奈子は美奈子先輩を越える男役になるわ。

それを支えるのは娘役のひろみ、あなたよ」

「ありがとうございます、涼子先輩。迷いは吹っ切れました。

私、ドリームランドのトップのお話お受けします」

「頑張ってね、客席から応援しているからね」

「はいっ、加奈子先輩と一緒に頑張ります」

この日はなかなか眠れなかった。

歌姫として舞台に立ちたいという夢から始まったことが、

今では舞台で歌姫として出る機会が多くなった。

そんな私が今度はドリームランドのトップ娘役にと寛先生から言われた。

これからは加奈子先輩と一緒に舞台をお客様に感動を与えなくてはいけない。

加奈子先輩と涼子先輩も自信を持ってと言ってくれた。

加奈子先輩、よろしくお願いします。

至らない私ですが一生懸命務めさせていただきます。

そして次墓碑、劇団のレッスンに行った私は圭織と雅たちに

「おめでとう」と言われた。

びっくりした私は噂が早く広がるのが怖いものだと驚いていた。

「ひろみ、すごいなぁ。3年生でトップやなんてすごいやん。

頑張りや、舞台をみんなで盛り上げるからな」

「圭織、ありがとう。まだ正式に寛先生に返事していないの。

だけど、涼子先輩に背中を押されてお話を受けることにしたの」

「そうかいな、決めるのに勇気いったやろ。せやけど、頑張りや。

うちら3年生で応援するからな」

「ありがとう、圭織」

「ひろみ、加奈子先輩と一緒に頑張ってね」

「雅、ありがとう」

同期生のみんなから、

「おめでとう」

「頑張って」

と励ましの言葉をもらった。

みんな、ありがとう。

私、頑張ります。

そしてレッスンに入る前に私は寛先生のところに行った。

「失礼します」

「ひろみか、入れ」

寛先生に促されて私は寛先生の部屋に入った。

「どうした?何か話があるのか?」

緊張していた私は寛先生に言った。

「寛先生、先日お話があったドリームランドのトップ娘役のお話

お引き受けいたします。未熟ですがご指導よろしくお願いします」

「そうか、引き受けることに決めたのか。

ひろみ、これからが大変だが加奈子と一緒に頑張ってくれ。

加奈子もさっき来て、おまえと一緒にやれせてくれって返事をもらったところだ」

「加奈子先輩がそう言ったんですか?」

「加奈子は美奈子の後のプレッシャーがあるが頑張って乗り越えていきます

と言った。そのためにもひろみ、おまえの助力が必要だと言っていた」

「私でいいのなら加奈子先輩のお力になります」

「それと一つだけ条件付けてきた。おまえとは同い年だから先輩後輩の枠を外して

仲良くなりたいとな。おまえたちはきっといい友達になれるだろう。

二人でドリームランドの舞台を頑張って引っ張っていってくれ」

「ありがとうございます、加奈子先輩からそう言ってくださるなんて嬉しいです。

私、加奈子先輩と一緒に頑張ります」

「頼んだぞ、ひろみ。おまえたちの舞台、期待しているからな」

こうして私は加奈子先輩と一緒に

美奈子先輩と涼子先輩の後を引き受けることになりました。

これから忙しくなるけれど、頑張って乗り切ろうと思いました。

美奈子先輩が退団されるのが今年の秋の公演です。

それまでしっかり心構えをして挑もうと思います。

お二人の舞台は本当に素敵でした。

私も加奈子先輩と一緒に頑張っていきます。

はるみ先輩や涼子先輩は私の憧れの娘役さんです。

私もお二人のような娘役になりたいです。

どうか、私と加奈子先輩の舞台を見守ってください。

「ひろみ、寛先生と話をしたんか?」

稽古場に戻った私に圭織が心配そうに言った。

「今、寛先生のところに行ったの。トップを引き受けますって」

「そうかいな、とうとう決めたんやな。頑張りや、応援してるで」

「ありがとう、圭織」

「それから拓哉にも報告しときやきっとびっくりするで」

「そうだね、驚くね。トップになったなんてびっくりするなぁ」

そうだ,拓哉に話さなきゃ。

トップになったなんて言ったら驚くよね、きっと。

だけど、最後は頑張れって励ましてくれる。

拓哉も仕事を前向きに頑張っている。

私も頑張っていきたい。

美奈子先輩と涼子先輩がいらっしゃる間に

トップの心構えをしっかり身につけたい。

お二人の舞台は私の憧れだったから。

いつか私が退団する時に後輩に憧れる女優になりたい。

そしてドリームランドの舞台を観ったお客様を笑顔にしたい。

私は今自分の未来を夢見ていた。

ドリームランドの舞台を加奈子先輩と一緒につくっていこうと。

憧れていたドリームランドの舞台で私は頑張っていくと

新たな目標に向かって走ろうとしていた。


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