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ME&MYBOY  作者: 真矢裕美
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見つめていたいね

拓哉が学校を停学になった日、私たちは一夜を共にした。

拓哉が停学になっても構わないと思った長崎での出来事。

「この借りは必ず倍にして返してやる」

そう言った拓哉の言葉が頭をよぎった。

「どうした?眠れないのか?」

「ううん、なんでもない」

「ひろみ、オレの処分のことが決まったら寛さんに今までのこと話す。

オレたちのことを認めてくれるかわからないが、ちゃんと話す」

「寛先生に話すの?」

「あぁっ、おまえと付き合っていることをオレの口から話す。

何も心配しなくていいからな」

「わかった、覚悟をして待っているわ」

もうすでに覚悟はできている。

許可なしに男性との交際は禁止されている。

だからお咎めを受けて退団になることもあり得るからだ。

それでもいい。

拓哉と一緒にいられるなら構わない。

私のために体を張って守ってくれた大事な人を見捨てられない。

私と拓哉は一心同体なのだから…。

「拓哉、私も寛先生に厳しい罰を受けるかもしれない。

劇団を退団しても私を愛してくれる?」

「何を言うんだ!長崎での夜に誓っただろう?

オレたちはずっと一緒だって。忘れてしまったのか?」

「ごめんなさい、疑って。拓哉を失うのが私怖いの」

「オレがただの男になり、おまえもただの女になっても

オレたちは今まで通りだ。

肩書きがなくなるだけでオレたちは変わらない。

それだけはわかってくれ」

「ありがとう、拓哉。これで安心したわ。

私、寛先生の判断に任せるわ」

「ひろみ、おまえのことは真剣に交際していることを寛さんに話す。

心配しないで待っていてくれ」

肩書きがなくなっても愛してくれる。

拓哉の強い決意が感じられた。

そして拓哉に愛されていることに喜びを感じていた。

そして翌日、私のことを心配して圭織が電話をしてきた。

「ひろみ、拓哉大変なことやったやて?

あんたも拓哉のことで辞めなあかんってなったらどないすんの?

ただじゃすまないよ」

「わかっている。退団になってもしかたがないよ。

実際に寛先生から認められた交際じゃないから」

「そんなことになったら寛先生に認めてもらうようにうちが話す。

辞めさせるなんてナンセンスや」

「ありがとう、圭織。処罰は寛先生に任せるわ。

何があっても受け入れるから」

「あんたの意志が固いんやな。

わかった、あんたが辞めることになっても今までどおり友達やからな」

「ありがとう、圭織」

今までどおり友達やからな。

ありがとう、圭織。

これで私も覚悟できたよ。

劇団では短い期間だったけど、楽しい思い出ができた。

歌姫になることはできなかったことだけは

心残りだけどそれでもいい。

拓哉とともに歩いて行こう。

圭織から電話が終わってからしばらくしてまた電話が鳴った。

電話の相手は瑠璃子先生だった。

「ひろみ、拓哉くんが寛と話をしているから今から来なさい。

あなたたち二人に大事な話があるから」

「はいっ、わかりました。これから伺います」

とうとう来た。

交際を辞めて別れるか、できないなら退団するか決めなければならない。

もう後戻りはできない。

拓哉を愛しているから…。

拓哉を信じてついていこう。

今はそれだけしか考えられなかった。

そして、稽古場の集合場所になる喫茶店に行った。

店の奥で寛先生と拓哉が話をしていた。

「ひろみ、大丈夫よ。寛は拓哉くんとのことを前々から気づいていたのよ。

いつか話が出るだろうってあなたたちを見守っていたのよ」

「本当ですか?瑠璃子先生」

「本当よ、あなたにラジオの仕事をさせたのも拓哉くんと年が近いから

自然と仲良くなれるだろうって考えてのことだったの。

勇次師匠から一人前に育ててほしいと頼まれてから

世間で通用するタレントとして、そして一人の男性としての魅力を

持たせることが一番だって言って今まで拓哉くんを育ててきたの」

知らなかった。

寛先生は私たちのことを初めから知っていたんだ。

私と拓哉を出会わせたのは寛先生の考えだったんだ。

勇次師匠から一人前に育ててほしいと頼まれて、

それを実行してきた寛先生はすごいと思った。

「瑠璃子先生、私たちは認められた交際ではありません。

私は劇団を辞めても構わないと覚悟しています」

「ひろみ、それは寛が決めることよ。まだわからないわ。

今は静かに見守っていきましょう」

店の奥では寛先生と拓哉が話をしている。

寛先生は許してくれるだろうか?

「オレから寛さんに話す。

肩書きがなくなってもオレたちは変わらない。

ずっと一緒だからな」

「拓哉の言葉を信じていきたい。

どうか、拓哉のこと許してください。

私は今神様に願わずにはいられなかった。

「おいっ、瑠璃子。コーヒー、もう一杯くれ」

「わかったわ、ひろみが来たけど奥に呼ぶ?」

「ちょうど話が終わったところだ。

これからのこと話すから呼んでくれ」

これからのこと話す?

私たちどうなるの?

私は不安を感じながら店の奥に入っていった。

「どうした、ひろみ。こっちに来て座れ」

「はいっ、失礼します」

「さっきまで拓哉と話した。拓哉の所属事務所では勇次師匠の監督の下で

仕事をするようにと言われて事実上お咎めなしとなった。

そして、これを機会におまえたちの交際を認める」

「寛先生、ありがとうございます」

「拓哉、ひろみを頼んだぞ」

「はいっ、ありがとうございます」

寛先生が私たちのことを認めてくれた。

もう隠れて付き合うことないんだ。

劇団で堂々と付き合うことを許してもらえてよかった。

ありがとうございます、寛先生。

「ひろみ、今日のタイムトラベルは普段どおりだ。

拓哉が停学になったのがわかってから拓哉の事務所で

タイムトラベルのリスナーから抗議の電話が殺到していた。

拓哉を辞めさせるなってな」

「それでどうなったんですか?」

「さすがに上役も処分ができなかったんだろうな。

だから勇次師匠の監督の下で仕事しろって話になったよ。

拓哉、本当だったら仕事がなくなったんだから

ファンのみんなに感謝しろよ、わかったか!」

「はいっ、わかりました」

拓哉がお咎めなしでよかった。

それにこれからも付き合っていける。

拓哉、私たちいつまでも一緒にいようね。

私は、あなたがいてくれるだけで幸せだから。

「コーヒー、お待たせ。

ひろみのお気に入りのブレンドも持ってきたわよ」

「ありがとうございます、瑠璃子先生」

瑠璃子先生が持ってきたコーヒーは、

寛先生の好きなキリマンジャロと私の好きなカフェオレだった。

「あっ、それ私のコーヒー…」

私は驚いた。

だって、拓哉が私のコーヒーを飲んだんだから…。

「これ、いいな。これ、これから飲もうかな?

ずっとひろみといるみたいだから」

ずっと私といるみたい?

これをきっかけに拓哉は喫茶店でカフェオレを飲むようになった。

些細なことだけど、とても嬉しい。

拓哉、ずっとそばにいてね。

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