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ME&MYBOY  作者: 真矢裕美
14/40

ずっとずっと・・・。

雄哉さんが入院してから毎日はるみ先輩が病室に付き添っていました。

私も稽古場に行く前に拓哉と一緒に雄哉さんのお見舞いに行ってます。

はるみ先輩の疲れた様子はとても痛々しいです。

はるみ先輩が倒れることがないか心配になります。

「なんか、はるみ先輩やつれたんやないか?

なんか、か細くなって今度の舞台出られるんかな?

トップの娘役が休演なんてなったら大変やで」

圭織の言うとおりです。

今のはるみ先輩は稽古に集中できていなくて、寛先生から注意を受けています。

雄哉さんとの交際が認められても舞台稽古に集中できなければ

話にならないでしょう。

はるみ先輩が早く立ち直って元気になってほしい。

今の私は、それを祈るしかありませんでした。

そして今日はタイムトラベルでした。

寛先生は機嫌がよくありません。

はるみ先輩のことで毎日イライラしていましたから。

「なぁ、ひろみ」

「どうしたの?」

「寛さん、かなりキレているな。

なんか失敗したら雷落ちるかもな、気をつけようぜ」

「うん、そうだね」

私も拓哉もピリピリモードです。

やっぱり拓哉の予感は当たっていました。

スタッフの失敗にかなりキレて八つ当たりしたのです。

普段怒りをあまりぶつけない寛先生ですが、冷静さを失っていたようです。

洋さんになだめられてその場をおさめられましたが、

本当にビクビクモードでした。

「八つ当たりなんて大人げないよな」

「うん、今日は神経ピリピリだった。

怒られたらどうしようってハラハラしたわ」

「今日は最悪だったよな。ひろみ、気分転換に散歩に行こうぜ」

私と拓哉はラジオのスタジオを出ると近くの公園に出かけました。

この公園は拓哉と恋人同士になってから来るようになりました。

午後10時から3時間の番組なので今は真夜中です。

誰もいない寂しい場所ですが私と拓哉が二人になれる好都合の場所です。

だから寂しくありません。

「ひろみ、愛しているよ」

私は抱きしめられてお互いにキスをしていました。

お互いに愛し合っているのを確かめるように抱き合っていました。

私は幸せです。

雲の上の人だと諦めていた恋が成就したのですから。

運命の赤い糸が結んでくれた恋に幸せを感じていました。

「ひろみ、オレたちずっと一緒だからな」

「うん」

抱きしめられて愛されて私は幸せです。

拓哉、ずっとそばにいさせてね。

「ひろみ、今夜はもう終電ないからタクシーで帰ろうぜ。

本当は外泊したいけど校則違反で停学くらうからな。

気をつけないと仕事来なくなるからな」

「うん、そうだね。明日学校だし早く帰ろう」

外泊したいなんて本気でしょうか?

まだまだ付き合って日が浅いのに…。

拓哉の行動には驚かされてばかりです。

「節操は守りなさいよ」

おばあちゃんの言葉がまた聞こえてきそうです。

私は拓哉に愛されたい。

おばあちゃんが言っていた。

「愛する人のために心を砕いて一生懸命尽くしなさい」って。

それが女性として殿方に対する心遣いだと言っていた。

私は拓哉を愛している。

だから私は拓哉に尽くそう。

それでいいんだよね、おばあちゃん。

私、おばあちゃんに教えてもらったこと大事にしていくからね。

「ひろみ、部屋に着いたぜ。お疲れさん、明日学校終わったら来るよ。

明日、一緒に雄哉さんの見舞いに行こうぜ」

「うん、わかった。拓哉、お疲れ様。気をつけてね」

私たちはタクシーを降りるとそれぞれの家路にと別れた。

外泊したいと言った拓哉と一緒に過ごしたいと願う私。

いつか深い仲になって自然に行き来するようになればいいなと願う私がいた。

そして翌日、私と拓哉は学校が終わった後、

待ち合わせをして雄哉さんのお見舞いに行った。

そこで、はるみ先輩がとんでもないことを言った。

劇団を退団して雄哉さんとフランスに行くと言うのだ。

「どうしてですか?はるみ先輩がいなくちゃ舞台はどうなるんですか?」

「前々から決めていたの。雄哉がフランス料理を本気で勉強したいって。

今まで迷っていたけど踏ん切りついたの。

私の後は4年生の青山夕菜先輩が務めてくれるわ」

青山夕菜さん、本名は広瀬涼子さん。

涼子先輩は優しくて初舞台で緊張していた私と圭織に

「頑張ってね」と声をかけてくれた。

その涼子先輩が新しいトップの娘役になる。

「今の話は寛先生は知っているんですか?」

「寛先生と瑠璃子先生に話したわ。最初はびっくりしていたわ。

でも最後は寛先生が幸せになれよって言ってくれた。

それでね、私たちがフランスに旅立つ前に結婚式を挙げようと思うの。

ひろみ、拓哉くんと一緒に来てね」

「ありがとうございます、短い間でしたがお世話になりました。

私たちが付き合うことができたのも先輩のおかげです」

「雄哉さん、頑張ってください。お店を出す時は知らせてください。

二人で雄哉さんの料理食べに行きますから。どうか、お元気で」

「ありがとう、拓哉くん。必ず知らせるよ、元気で頑張れよ」

はるみ先輩、お別れするのは寂しいですが雄哉さんと幸せになってください。

そして私に勇気をくださってありがとうございました。

私、拓哉と幸せになれるように一生懸命尽くしていきます。

そして1か月後、はるみ先輩のさよなら公演の幕が開きました。

「はるみ先輩との舞台もこれで最後やな。

短かったけど、優しい先輩やったな。結婚やなんてホンマに幸せやな」

「退団発表の記者会見で雄哉さんとの結婚を発表したよね。

なんか、潔い幕引きだよね」

「人のことよりもさ、ひろみ。あんたはどうなってんの?」

「えっ?何が?」

「拓哉のことや。拓哉と付き合っていけてよかったな」

「うん、まさか両思いとは思わなかったな」

「まぁ、仲良くやっていきや。うちは彼氏できるのはまだまだ先やな。

だって、今は舞台が楽しいからな」

「圭織にも素敵な人見つかるよ。圭織の優しいところは

私が一番よく知っているから」

「まぁ、素直にありがとうって言うわ。とにかく仲良くやりや」

圭織だけじゃない。

拓哉の恋のことで雅や未来そして美紀も助けてくれた。

私の周りにいた友達が応援してくれたのが私は嬉しかったし励みになった。

みんな、本当にありがとう。

私に幸せをくれて感謝しているよ。

拓哉と仲良く幸せになるからね。

そして舞台が千秋楽になった時、

はるみ先輩は黒の訪問着に女袴の姿で舞台に立っていた。

いよいよお別れの口上を述べる時が来たのだ。

舞台では大きな拍手があがっていた。

「大好きなドリームランドの舞台に立てて幸せでした。

これまで支えてくれたみなさんに感謝します。

今までありがとうございました」

はるみ先輩に同期の委員から花束が渡された。

その光景に舞台のお客様から盛大な拍手が湧き上がった。

はるみ先輩、雄哉さんと幸せになってください。

私も拓哉と幸せになります。

「はるみちゃん、幸せにね」

「はるみちゃん、元気でね」

楽屋の出口は、はるみ先輩の声援でいっぱいだった。

「みんな、ありがとう」

ファンのなかには小さな子供がいて、

お母さんと一緒にはるみ先輩を待っていた。

女の子の手には小さな花を持っていた。

はるみ先輩は、それに気づいて女の子のそばに行った。

「どうもありがとう」

はるみ先輩の優しさが多くのファンを掴んでいた瞬間だった。

さよなら公演が終わってから1週間後、

はるみ先輩と雄哉さんは結婚式を挙げてフランスへと旅立っていった。

結婚式は派手なものでなく、親戚やドリームランドの同期生や

雄哉さんの劇団仲間が集まっての簡単なパーティーだった。

ウエディングドレスのはるみ先輩綺麗だったな。

いつか私もウエディングドレス着るかな?

まだまだ先の夢物語に思いをはせている私だった。

「ひろみ、オレたちずっと一緒だからな」

「うん」

私と拓哉は付き合い始めて芽が出たばかり。

その芽を大きくして花になるのは、これから先のことです。

拓哉、私のことずっと見ていてね。


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