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ME&MYBOY  作者: 真矢裕美
13/40

真っすぐなライン

「ひろみ、今から遊びに行こうぜ。」

「えっ?どこに行くの?」

「結城奈緒子さんの家」

「はるみ先輩の家?今、いるかな?ちょっと待って、今連絡してみる」

拓哉の大胆な行動には時々驚かされている私。

はるみ先輩の家に行って迷惑かけないかな?

なんだか不安になってきたよ。

とりあえず私は、はるみ先輩の携帯に電話をかけた。

「もしもし?」

「こんにちは、はるみ先輩。これから伺いたいのですが、

お時間よろしいでしょうか?」

「なんだ、そんなことだったの?拓哉くんと一緒に遊びにいらっしゃい。

美味しいケーキを用意して待っているわ」

「ありがとうございます。ではこれからまいります」

そう言って私は電話を切った。

「どうだった?」

「はるみ先輩、家にいるって」

「やったね、オレさ今村雄哉さんと話すの楽しいんだよ。

なにしろ大人の男ってカッコイイからな。憧れちゃうんだよな」

拓哉の目的は雄哉さんと話すことだったんだ。

「雄哉さんの仕事は朝が早いから今休んでいるかもよ。

ご迷惑にならなきゃいいけど…」

本当にそうです。

はるみ先輩と一緒に暮らしている雄哉さんは

朝の子供番組の歌のお兄さんです。

だから仕事が終わって休んでいる時に訪問して

迷惑かけないか心配なんです。

拓哉は言い出したら聞かないところがあるから心配になります。

「ひろみ、善は急げって言うだろう?早く出かけようぜ」

「わかった、すぐに用意するわ。

手ぶらで行けないから途中で何か見繕って持って行こう」

「そうだな、ハンバーガーかフライドチキンどっちにする?」

「それは拓哉に任せるわ」

「よし、決まり。早く鍵閉めていこうぜ」

本当にしょうがないんだから、拓哉の行動にハラハラモードの私。

相手に対する心遣いも大事だってことを教えていかないといけないな。

おばあちゃんがいつも言っていた。

人に対する思いやりを大事にしなさいって。

そうすることで自分にも相手にも優しくなれるって。

私もそんな女性になりたい。

ううん、なってみせる。

拓哉のために愛される女性になりたいから。

「ひろみ、仕度できたか?早く行こうぜ」

「お待たせ、鍵かけるね」

私と拓哉は自宅から電車を乗り継いで、

はるみ先輩先輩の住んでいる生駒駅に着いた。

生駒駅から歩いて10分の場所にはるみ先輩のマンションがある。

「こんにちは」

「いらっしゃい、待っていたのよ。

雄哉は朝からバイトに行っているから夕方には帰ってくるわ」

「雄哉さん、アルバイトしているんですか?」

「劇団に入っていても収入が安定していないからね。

私の劇団の給料と雄哉の給料で今の部屋の家賃や生活費に消えているからね。

でもね、二人で暮らすと楽しいこともいっぱいあるのよ」

「ごめんなさい、あたしたち何も知らなくて…」

「ひろみが謝ることじゃないわよ。

あたしたちは、あなたたちが来てくれるのが嬉しいの。

だって、あなたたちを見ていたら付き合い始めた時のことを思い出すの。

だからどんな苦労も頑張れるのよ」

はるみ先輩と雄哉さんは一緒に暮らして幸せなんだ。

私も拓哉と一緒だったら幸せに思う時がくるかな?

「ただいま」

「お帰り、雄哉。ひろみと拓哉くんが来てくれたの」

「そうか、二人が来ると元気が出るよ」

「雄哉さん、お疲れのようですが大丈夫ですか?」

私か雄哉さんの顔色の悪いのに気がついて言ってしまった。

テレビのお仕事を抱えた上にアルバイトをして

本来だったら体を壊していないか心配になった。

「ひろみの言うとおりよ。雄哉、顔色悪いよ」

「無理しないでください。今日はゆっくり休んでください。

僕たちは失礼しますから、ひろみ帰ろうか」

私は拓哉の言うとおり失礼しようと思った。

そんな矢先だった。

雄哉さんが倒れたのは…。

倒れたことに愕然となっている私とはるみ先輩とは違い、

拓哉は冷静に救急車の手配をしていた。

雄哉さんは生駒市の救急病院に搬送され診察を受けた。

普段からの激務による過労が原因だった。

1週間の入院になり、その間の仕事はキャンセルになった。

朝の歌の仕事は録画でとっていたため心配はなかった。

「二人とも心配かけてごめんなさいね。

雄哉も私もあなたたちが訪ねてくれるのが嬉しいのよ」

「ありがとうございます、はるみ先輩。

私たち当たり前のように遊びに行ってご迷惑かけていないか不安でした。

雄哉さんが元気になることを祈っています。お大事にとお伝えください」

「僕も失礼します。無理をなさらないようにとお伝えください」

私と拓哉は救急病院を出て家に戻った。

私の部屋に戻った拓哉はしみじみ言った。

「オレが芸能界を生きているのはオヤジのおかげなんだよな。

雄哉さんのように苦労して俳優をやっている人は山ほどいるんだよな」

私は拓哉の言葉に返す言葉が見つからなかった。

私も日舞藤村流の家元の娘と言うだけで他に何があるだろう?

「ひろみ、オレたちは雄哉さんたちより恵まれているんだな。

オヤジたちに感謝だな」

「そうよね、私たち恵まれていたのよね。

それを当たり前のように思っていたんだから。

拓哉、寛先生に出会ってなかったら、

私たちは周りに感謝する気持ちを忘れていたかもしれないね」

「そうだな、寛さんはオレにとって兄貴のような存在だよ。

オレたち寛さんに出会えてよかったな」

そう寛先生に出会ったから私は拓哉に会えた。

そして恋人になっていちばん近い存在になった。

それだけじゃない。

周りに対する感謝の心を教えてくれた。

寛先生、ありがとうございます。

私は寛先生に感謝の気持ちでいっぱいになっていた。

「ひろみ、腹へった」

「何か簡単なものつくるわ。拓哉、食べたいものある?」

「オムライスが食いたい」

「わかった、すぐにつくるね」

私は急いで台所に行き、オムライスの具材を用意した。

そしてオムライスを二人分つくってダイニングに運んだ。

「美味い、やっぱ女の子の手料理は最高だぜ」

「喜んでくれて嬉しいわ」

「ひろみ、オレたち雄哉さんたちみたいになれるかな?」

「そうなれたら私嬉しいわ」

「ひろみ、オレたち仲良くやっていこうな」

「うん」

私は嬉しかった。

拓哉に手料理を食べてもらって幸せだった。

それだけじゃない。

拓哉に毎日来てほしいと願う自分がいた。

一緒に暮らすことはできなくても会うことならできる。

私は今ささやかな幸せでいっぱいになっていた。







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