かけがえのないもの
3月になり、卒業の季節になりました。
今日は私の高校の卒業式です。
私は英米文学科の大学に進学が決まりました。
雅は初等教育課の短大に進学します。
美由紀は希望通り音楽大学に進学しました。
律子は服飾科の短大に進学し、卒業後にフランスに留学することになりました。
久美子は東京で美術系の短大に進学が決まったそうです。
みんな、それぞれ進路が別々になり別れの時が来ました。
今、私たちは卒業証書をもらって思い出のある楓の木で写真を撮りました。
この写真が私たち4人の最後の写真です。
高校にいた時はプリクラで撮っていました。
高校3年間で集まったプリクラは数え切れないほど集まりました。
それだけ思い出がたくさん詰まっているんだなって感じました。
「ひろみ、舞台頑張ってね。あたしたち、離れても友達だからね」
「ひろみ、舞台見に行くからね。あたしたち、応援しているからね」
「美由紀、律子、ありがとう」
雅とは劇団の稽古で会えますが、
美由紀と律子とはしばしのお別れになります。
でも二人のメールアドレスを知っているので、
時々メールで近況を報告しようと思います。
とくに律子はフランスに留学を控えています。
律子が日本にいるまで連絡を取っていこうと思っています。
卒業証書をもらった私たちは、それぞれの家路にと別れました。
私は、お母さんと一緒に久美子たちと一緒に行った
パスタのお店に入って昼食をとりました。
「ここのパスタ、美味しいわね」
「でしょ?ここは久美子たちといつも行っていたお店だよ」
「久美子ちゃん、元気かしら?あなたとは一番の仲良しだったものね。
東京でお仕事頑張っているといいわね」
「そうだね、久美子とはメールが来るから淋しくないよ」
そう、久美子は昨日高校の卒業式があって高校を卒業した。
久美子は卒業したら美術系の短大に進学する。
久美子も学業と歌手の仕事の両立に頑張ってほしいと思った。
お母さんと談笑している時に私の携帯が鳴った。
相手は久美子だった。
「ひろみ、卒業おめでとう。学業と舞台の両立頑張ってね」
「ありがとう、久美子も仕事頑張ってね。私も頑張るから」
「拓哉くんと仲良くね。あっ、そろそろ打ち合わせだから行くね。
また落ち着いたらメールするね」
久美子、元気そうでよかった。
久美子、お互いに頑張ろうね。
それから私は、お母さんと一緒にパスタ屋さんを出た。
高校を卒業して美由紀と律子と雅と一緒にお店に行くことあるかな?
いつか再会ができる日が来るのを私は夢見ていた。
そして卒業式から1週間たったある日、
私は新しい部屋に引っ越しをすることになった。
引っ越しの荷物を入れたトラックが私の新しい部屋に行くのを待っている。
私が行く部屋は拓哉の自宅に近い場所にある。
そこには拓哉が待っている。
私は、拓哉のそばに行くのが嬉しかった。
これから毎日拓哉に会える。
新しい生活が私を待っている。
そんな気持ちでいっぱいだった。
「ひろみ、体に気をつけるんだよ。一人暮らしは女の子には
危険がいっぱいだからね。ちゃんと朝ご飯を食べなさいよ」
「いやだな、おばあちゃんは心配性なんだから。
大丈夫よ、料理は大好きだから心配しないで」
「そうかい、寂しくなるね。たまには帰ってきておくれよ」
「ありがとう、おばあちゃん。それじゃ、もう行くね」
そして、私はトラックに乗った。
これから新しい生活が始まる。
今の私は未来の生活に夢を抱いて旅立っていた。
そして、月日が流れ新しい部屋に引っ越してから1か月が過ぎ、
時も4月になり桜の季節になりました。
私は大学の入学式が終わって晴れて女子大生になりました。
部屋のなかは自分の勉強部屋と舞台に使う小道具を入れるクローゼット、
そして台所と簡単なリビングがあって一人暮らしには広すぎる部屋を
借りてくれた。
こんな広い部屋を見つけてくれたお父さんには本当に頭が下がります。
なにしろ日舞藤村流の家元であるお父さんは、知り合いの不動産屋さんに
セキュリティーがしっかりしている部屋を探してくれたのです。
初めて部屋を見に来た時のお父さんは満足げに私に言いました。
どうだ、ひろみ。ここなら鍵はオートロックだし、もしもの時の
セキュリティーも心配ない。ここに決めよう」
「お父さん、家賃が高いけどいいの?」
「心配するな。おまえが頑張って勉強と舞台の両立ができるなら安い買い物だ。
しっかり頑張るんだぞ」
「お父さん、ありがとう」
私は嬉しかった。
私のことを1番に守ってくれるお父さん。
今では私の舞台があると必ず見に来てくれている。
舞台で踊りがあると厳しい目で見守ってくれる。
これから学業と舞台の両立を一緒おう件名頑張ります。
どうか、これから見守ってください。
今日は入学式が終わってオリエンテーションがあった。
大学は高校と違って自分で時間割が決められる。
私は、水曜日と土曜日を午前中に時間悪を決めた。
水曜日はタイムトラベルがあるし、
午後から稽古場でレッスンがあるから忙しい。
土曜日は拓哉とデートの時間に使いたい。
ただし、お互いのスケジュールが空いていればの話だけどね。
拓哉は今日が高校の入学式だ。
拓哉の高校は私が卒業した高校の男子部だ。
最初は高校に行かないと言っていったけれど、寛先生の言葉で
高校受験を決心して最後まで頑張った。
うちの高校の男子部は競争率が高いから苦労したと思う。
ピンポーン。
あれっ?インターホンが鳴っている、誰かな?
「ひろみ、いるか?」
「拓哉だったの?ちょっと待って、すぐに開けるから」
私は急いで玄関のオートロックのカギを開けた。
しばらくして拓哉が玄関から入ってきた。
「オッス、ひろみ。荷物だいぶ片づいたな。
部屋らしくなったじゃん」
「あたしの荷物は少ししかなかったけど、舞台で使う小道具が多かったからね。
それよりも立ち話もなんだからあがって、お昼まだでしょ?
簡単なものつくろうか?」
「それならいいよ。さっき、尚志と軽く食ってきたから」
私は拓哉を招き入れて話を聞こうと思った。
初めて男の人を部屋に入れるのってどんな気持ちなんだろう?
なんだかワクワクしていた。
それって拓哉と一緒だからかな?
私は拓哉にジュースと自分で焼いたクッキーを出した。
拓哉は嬉しそうにクッキーを食べている。
その顔を見て私は嬉しくなった。
「拓哉、入学式どうだったの?」
「それがさ、ひろみ。尚志と同じクラスになったんだ。
それに奇妙な連中が加わって4人でつるむことになりそうだよ」
「どんな子なの?」
「一人は和彦、こいつは声優志望で寛さんのファン。
もう一人は彰、ミュージシャンになるのが夢。
それに入学式に総代として挨拶した秀才でもあるね」
「二人とも夢に向かって頑張っているのね」
「そうなんだよ。オレや尚志のようにオヤジがいて
仕事をしているのとは違うからな。
「おまえだって同じじゃないか?
体に爆弾抱えているのに劇団に入団したって」
「お母さんから聞いたの?」
「うん、入団させたのは社会勉強のためだって」
お母さん、拓哉に話したんだ。
私が体が弱いこと。
それでも拓哉は私のことを理解してくれている。
初めの時、拓哉は私を年上のお姉さんとしか見えなかった。
それから、拓哉から告白されて付き合うようになってからは
私を女性として見てくれている。
私も片思いの時は雲の上の存在だから
付き合いなんて夢のまた夢だと思っていた。
拓哉、私幸せよ。
あなたに出会えて本当に良かったと思っている。
拓哉、これからもよろしくね。