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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ユウタとアキト

作者: uni



「嫌じゃない」




今思えば自覚したのは小学五年生の林間学校だったか。

初めての集団のお泊まりイベントに、クラスメイトが浮ついていた気がする。女の子は班決めの時から好きな男の子となれるかどうか、仲がいい女の子同士でなれるかどうか、必死だった。

正直俺は誰でもどうでもよかった。興味がないというよりも、誰でもよかったのかもしれない。一緒の班になったからといって、仲良くなれる気がしなかったし、そんな自分が想像もできなかった。




俺は女の子が苦手だった。

なにが苦手なのかはわからなかったけど、今思えば自分が一番欲しくて手に入らないものを持っていたからかもしれない。向けられる好意に不安感を煽られることすらあった。好きと言われるたびに、疑問を投げかけなくなる気持ちをぐっと抑えていた。だって俺たちしゃべったことないよね、君の名前知らないけれど、どうして俺の家を知っているのか、そんな風に触らないで欲しい、やめてくれ。


俺はなに一つ言えなかった。

笑っているだけしか出来なかった。



イベントごとになると女の子達はますます積極的だ。好意を隠さないし、まるで自分が少女漫画のヒロインにでもなったかのように、うまくいくと信じている。

俺はひたすら逃げていた。

でも待ち伏せされて、告白されて、いつものように断ると、キスされそうになった。俺はとっさに女の子を突き飛ばしていた。女の子はびっくりした顔をしていたけど、すぐに「罰ゲームだから」と言った。嘘かもしれない。とっさにそう思った。

俺が誰にでも優しくて、他の男の子みたいに怒鳴ったり下品なことを言ったりからかったりしない「優しい人」だとおもったから、振られてもキスくらいしてくれると思ったのだろうか。でも実際は突き飛ばされた。真っ赤な顔で目がうるんでいるのを見るあたり、俺に失望しただろう。真意はわからないけれど、なぜかそう思った。俺は本当は優しい人じゃない、自分がよくわかっていたから。





近所に住んでいる従兄弟のアキトくんにそのことを話した。

アキトくんは六個上の17歳、高校2年生だった。俺は、同級生と遊ぶよりもアキトくんと遊ぶことの方が多くて、しょっちゅう家に遊びに行っていた。アキトくんの部屋は本がいっぱいあって、勉強机とベットと、それから小さめのテレビとテーブルがあるだけだった。俺とアキトくんはベットを背もたれにしてその部屋で本を読んだり映画をみたり、その日学校で習ったことを復習したり、のんびりと時間を過ごしていた。

この日も俺たちは並んでベットに寄りかかっていた。



「キスぐらいしてやればよかったのに」



あまりにも軽くいうから、俺は少し怒った。アキトくんは俺の味方だと思っていたから。わかってくれるとおもったから。

「だって、本当に嫌だったんだ」

「すねんなよ。なにが嫌だったの?女の子?キス?」

「え?」

いきなりの質問に反応出来ずにいると、質問が続いた。

「ユウタはその女の子だからキスしたくなかったのか?」

「そういうわけじゃないよ。別に誰ともしたくない。」

「俺とも?」




俺はアキトくんと遊ぶのがすきだった。外で遊ぶのが好きじゃない俺をお母さんみたいに怒らないし、市内にある大きな図書館に連れて行って本を好きなだけ読ませてくれるし、アキトくんの部屋で一緒に映画をみて、お泊まりの時は一緒のふとんで寝てくれる。俺が眠るまで隣で起きて見ていてくれる。


アキトくんと遊ぶのがすきだった。

アキトくんと一緒にいるのがすきだった。


「やだよ!」


俺は初めてアキトくんに対して大声を出した。


「うそつき」


手を引かれて、わっ、という少し情けない声を出してしまったと同時に、唇に感触があった。


顔が近いな、って思う時間があったからきっと一瞬なんかじゃない。

少なくとも俺にはそう感じた。

ゆっくり離れたアキトくんの口が視界に入る。



「嫌だった?」



俺はアキトくんがすきだった。

嫌なわけがなかった。




俺は男の人がすきだった。


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