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詩集「黄昏に思う」  作者: 荊
13/25

それは恋愛小説を読みきった切なさに似ていて、僕は感情をため息にのせる

2013年、雪も降らない暖かな冬。


日比谷公園の遊具広場で、

2年振りに抱きしめた娘の重みに、

大人よりも高いその体温に、

自分に似た目元と、

妻に似た「フフ」という笑い方に、

あの日を思い出し、

胸を焦がす熱のこもった愛情を感じた。


蛍光ピンクのダウンジャケットを嬉しそうに僕に見せ、

可愛いねという言葉を聞いて強く抱きしめてくる君は、

今を幸せに思ってくれるのだろうか。


大きくなったね

可愛くなったね

もうすっかりお姉さんだね

お姫様みたい


そう言って、ずっとこちらを見てもらおうとする僕に、


フフ、絶対言うと思ったんだよ

大きくなったね、可愛くなったねって言うと思ったんだよ


って、顔をくしゃくしゃにして笑う君は、

今を幸せに思ってくれるのだろうか。




彼女の顔はまだちゃんと見れないけど、

声を聞くのがまだ怖いけど、

僕はまだ、愛しているのだろうか。



ほんの1時間だけの日常とは違う現実に、

僕はお父さんになりきれているのだろうか。



改札へ向かう娘の手を離して、

笑顔を作る頬を確かめ、

ようやく彼女を見つめて、

さよならと手を振った。


それは恋愛小説を読みきった切なさに似ていて、

溢れそうな何かを押し込めて、

僕は感情をため息にのせる。


あぁ、君の好きな空はどこかに隠れてしまった。


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