001話 始まり
参った。とても参った。ほんと参った。
まさか、またもやこんな事態になるとは……
以前、日本の自分の家でFX(外国為替証拠金取引)をしている最中に寝落ちしたのか突然死したのかわからないが、気が付くと中世ヨーロッパ風の異世界にいて、その世界の赤ん坊に同化するという現象を体験した。
それが夢なのか、転生なのか、憑依なのか、トリップなのかは未だにわからないが、その世界で自分はシャルリー・ファン・ファベールとして生きていた。
それが何時の間にか気付いたら、今度は日本の過去の歴史の登場人物になっている。
何て事だ。またですか……
転生? 憑依? トリップ? いったいどうなっているのやら。やれやれ。
しかも自分が今回なってしまった人物は「山本五十六」さんだ。
有名人だし、歴史上の重要人物だ。
自分は山本五十六さんの赤ん坊時代から彼の背後霊のような存在として、彼の傍に常にいた。
それが先日、どうやら彼と完全に同化してしまったようだ。
どうも彼の魂と自分の魂は融合してしまったらしい。
しかも意識という見方をすると、自分の意識が山本五十六さんの意識を呑み込むような形で吸収してしまったようで、意識の主導権とでもいうべきものは自分にある。
自分はこのまま山本五十六としてこの世界で生きて行くのか……
それにしても現在は1937年1月だ。
歴史の歩みが自分の知っているものと同じならば、夏には中国との戦争が盧溝橋から始まる筈だ。
そして年々アメリカとの関係が悪化し、1941年12月にはアメリカと戦争になるだろう。
何か大変な時代の大変な人物と同化してしまった。
これからの日本の歴史を考えた時、どっかのアニメ化された某架空戦記作品のように同じ境遇の未来からの転生者がたくさんいて、仲間を集めて日本の歴史を変えていく、なんて事ができたら少しは楽なんだ
が、望み薄かな。
前の中世風の異世界でも同じ境遇の人とは一人も会わなかったし。
あの異世界での暮らしは、人生は、楽しかった。また戻れるだろうか?
まあ、それはさておき、これから自分は山本五十六としての歩みをどう進めていくべきか?
この時代は困難な時代だ。
特にあと数年後に迫ったアメリカとの戦争に山本五十六としてどう対処すべきか?
史実の山本五十六さんはアメリカとの戦争に反対していた。
慧眼だったな。日本はアメリカと戦争し酷い惨禍を蒙ったのだから。
自分も同じようにアメリカとの戦争に反対しようか。
歴史を知っているのだから、今のうちからできるだけ歴史上に発生する数々のアメリカとの関係悪化の要因を排除して戦争が起こらないように動くか?
いや無理だな。
今の自分の地位は海軍次官でしかない。数々の関係悪化の要因を潰すには力が足りない。
それに連合艦隊司令長官になるのは1939年8月だった筈だ。
その地位に就いたら政治的に動くのは難しくなる。
実戦部隊の長がそうそう部隊をほっぽり出して政治的動きをする訳にもいかんからな。
また、対アメリカ強硬派の問題もある。
軍内部の対アメリカ強硬派と対立するのは生易しい事じゃない。
史実では国家の主権たる天皇陛下もアメリカとの開戦には反対だった。
しかし、陛下は自分が開戦に反対してアメリカと戦わない事に決すれば、クーデーターが起きて内乱になると判断して渋々開戦を容認したという経緯がある。
日本はそういう状況だった。
対アメリカ強硬派を平和的に抑えるのは限りなく難しいだろう。
ならいっそ平和的手段は捨てて、対アメリカ強硬派を力で粛清する手に出るか?
しかし対アメリカ強硬派も数が多い。陸軍と海軍の対アメリカ強硬派を一網打尽なんて難しいだろうから、それこそ陛下の懸念された通り内乱になる可能性が高いだろう。
ただし、内乱が大きくなり軍備に大きな痛手を蒙れば恐らくアメリカと戦争する余裕は失われると思われるから、それも一つの手ではあるかな。
いや、逆にこちらが対アメリカ強硬派の逆撃を受け簡単に叩き潰され、戦争への道を加速させる可能性もあるか。というか、その可能性の方が高い気がする。
いや待て。根本的に何故、自分は平和の道を求めようとしている?
自分はそういう性格だったか?
どちらかと言えば、死と破壊を好む性格をしていなかったか?
自分は某作品の傭兵のように「自分は単なる戦争屋だ」と中二病気味に嘯いていなかったか?
特に前に生きていた異世界では、戦争への忌避感なんて欠片も持っていなかった筈だ。
嬉々として敵兵を血祭りにあげていたよな。
確かに太平洋戦争で日本は酷い惨禍を蒙った。
しかし、それは負けたからだろう。
勝てばいいのだ。
何も山本五十六さんと同化したからって、彼と同じ考え、同じ道を歩まなくてもいいじゃないか。
別の道を歩もう。
現代日本で一時期流行ったif戦記小説の醍醐味は、面白さは歴史を変える事にあった。
if戦記物と言いながら結局は史実と同じような結果になる予定調和の作品はつまらなかったよ。
日本が敗戦しないように、国土に惨禍が及ばないようにアメリカと戦争して勝つ!
それで行こうじゃないか。
そしてアメリカに勝つには……
作戦はある。
かなり問題が山積みの作戦ではあるが、何とかなるだろう。
それと連合艦隊司令長官の地位も確実に欲しい。
だとすると、結局これからの数年間は史実の山本五十六さんが歩んだ通りの歴史を歩まなきゃだめか。
下手に動いて連合艦隊司令長官に就任出来ませんでしたじゃ目もあてられない。
これから数年間は史実の山本五十六さんの歩みを踏襲しつつ、アメリカに勝つための布石も打って行く。何とも忙しい人生になりそうだ。
よし、自分の進むべき道は決まった。栄光の勝利を日本に齎すために力を尽くそう。
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2016年2月24日
諸種都合により、2015年8月23日に書いた第20話の「後書き」をここに移動させました。
ご了承下さい。
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『限界でおじゃる。
もう限界でおじゃるよ。
この作品で20話書いてきたでおじゃるよ。
30万文字以上書いて来たでおじゃるよ。
一年間書き続けて来たでおじゃるよ。
だが、しかし、もうホントに限界でおじゃる。
オタネタ(オタクのネタ)書きてぇーーー!!
一作目の「一人ぼっちのツァオベラー」じゃオタネタ書き捲ってたんで、作風に違いを出そうとこの作品じゃオタネタを書かないようにしていたけど、もう限界でおじゃる!!!
禁断症状がでてきたでおじゃるよ。
気付いたら下書きでオタネタ書いてたなんて事がしばしばでおじゃるよ。
そこで死の商人Sは自問自答したでおじゃるよ。
死の商人Sよ、お前にとって小説とは何ぞや?
「暇つぶし、なり!」
死の商人Sよ、お前にとって小説を書く目的とは何ぞや?
「お遊び、なり! 」
死の商人Sよ、お前にとって小説を書く悦びとは何ぞや?
「オタネタ、なり!」
死の商人Sよ、オタネタを書けぃ!
「御意!! エクスタロタ●!!」
そんなわけでオタネタ全開の話を書く事にしたでおじゃるよ。
「小説をおもしろくするためにオタネタがあるわけじゃねぇ。
オタネタを書くために小説があるんだ!」 by 死の商人S
オタネタはわからない人にはつまらない?
オタネタは一般受けしない?
「それがどうした!!」
元々、才能無いから何を書いてもつまらない作品だし一般受けもしてないぜ!!
ギャッハハハハハ。
そもそもラノベの「這いよ◯! ニャ◯さん!」を読んでみろ。限りなく続くオタネタの世界だぜ!
そういう作品もあるんだよ。
オタネタを書かずして何がライトノベルか!
だけれども、ここまで書いた「栄光の勝利を大日本帝国に」でオタネタ書くつもりは無いでおじゃるよ。
新作で書くでおじゃるよ。
新作の題名は「宮様、頑張る」
主人公は3回目の憑依だか転生だかトリップだかした某人物でおじゃる。
まぁ「栄光の勝利を大日本帝国に」の主人公と同一人物でおじゃるね。
今度は「伏見宮博恭王」となるのでおじゃる。
1941年4月まで海軍軍令部総長だった人でおじゃるよ。
ではストーリーの一部をご覧くださいでおじゃる。
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【宮様、頑張る】(海軍編)
第001話『とある中将の憂鬱』
19◯◯年◯月◯◯日
『海軍軍令部総長室』
机の上に両肘をつき顔の前で両手の指を組むようにしていた伏見宮総長はサングラスを煌めかせながら徐に重々しく口を開く。
その姿はまるでどこかの秘密組織のうとまれる事に慣れている司令官にそっくりだが、とりあえず今は関係ない。
「平賀君、今日、君を呼び出したのは他でもない、例のA140-F6の事だ」
「何か問題がありましたでしょうか総長」
「大ありだ。あの設計ではいかん。速やかに変えてもらいたい」
その伏見宮総長の要求に海軍艦政本部付の平賀中将は内心で溜め息をついた。
あれ以上どうしろというのか。あれでも間違いなく日本における最高の、そして限界の設計なのだ。
「変更と申しますと、どの部分になりますでしょうか」
「まず主砲の口径だ。46センチではなく50センチの衝撃加膿砲にしてもらいたい」
「はっ?」
思わず平賀中将はおかしな声を出してしまった。
50センチ? 衝撃加膿砲?
50センチなんて無理だし、衝撃加膿砲なんて物は今まで見た事も聞いた事もない。
何を言い出したんだ総長は? と訝る平賀中将の胸のうちを無視して伏見宮総長は言葉を続ける。
「艦首と艦尾の両舷に魚雷発射管を3門づつ装備し、尚且つ両舷中央側面にも魚雷発射管を8門づつ装備してくれたまえ。
更に艦首の菊の御紋の下部に砲身を内蔵する型の大型単装砲を一門装備してほしい。口径は200センチだ」
もはや平賀中将は開いた口が塞がらなかった。
だが、それに構わず伏見宮総長はなおも要求を続ける。
「艦尾格納庫を拡充し戦闘機を最低でも38機は搭載したい。搭載する戦闘機は<宇宙の獅子>だ」
「そ、総長?」
<宇宙の獅子>とは何ですか、<宇宙の獅子>とは?
そんな戦闘機があるなんて見た事も聞いた事もありませんよ。それに38機なんて不可能だ。
と、口には出さなかったものの平賀中将は強く思った。
総長は正気を失っていらっしゃるのではないか? とまで懸念した。
それに気付いているのかいないのか、伏見宮総長は構わず言葉を続ける。
「平賀君、このA140-F6の使い方は既に決まっているのだ。この戦艦は遥かなる航海へと旅立つ」
「と、申しますと?」
「南シナ海からインド洋へ。そして喜望峰を回り大西洋を縦断し、敵艦隊を殲滅し、そしてアメリカの首都ワシントンを叩く!」
「・・・・・・」
もはや平賀中将には言葉も無かった。
そんな平賀中将をよそに伏見宮総長の言葉は止まらない。
「全てを一隻でやりとげねばならん。1年でやり遂げねばならん。過酷な任務だ。しかし、そうしなければ日本が滅ぶ! もはや日本が生き残るにはこの道しかない! 」
「・・・・・・」
「A140-F6には大和民族の未来がかかっているのだ。大和民族最後の希望なのだ。故に艦名は大和とする。宇宙は飛ばないが戦艦大和だ! 」
平賀中将には総長がおかしくなったとしか思えなかった。
確かにアメリカは海軍にとって第一の仮想敵国であるが、今はまだ戦争は始まっていないし、そもそもそこまで両国の関係が悪化しているわけでもない。
それに宇宙は飛ばないって、そんなのは当たり前だ。
明らかに総長はおかしくなってしまった。長年の軍務の重圧に壊れてしまったのだろうか。早く医者に見せなければ、と平賀中将は判断した。
だが、伏見宮総長は海軍の要人である。三要職の一人である。宮様である。対応は慎重にやらなければならない。取り敢えず平賀中将は総長の言う事を聞くふりをする。
「はっ。了解いたしました。設計しなおします!」
「うむっ。頼むぞ」
平賀中将が総長室を出て一番にした事は海軍病院に電話する事だった。
【つづく】
<次回予告>
総長の熱い想いは止まるところを知らない。
そのドドメ色の熱き思いに
混沌たる考えに
歪んだ妄想に翻弄される男の不幸は、まだ、終わってはいなかった……
次回「続・とある中将の憂鬱」
ご期待しないで下さい。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
と、いう作品でおじゃるよ。
連載が始まったら読んでね、でおじゃる。
それじゃあ今日はここまで、バイバイなのでおじゃる』
《と、いう夢を昨晩見ました。
そんなわけで「宮様、頑張る」なんて作品の連載は始まりません。
幻の作品です》
『と、言うのが夢なのでおじゃる』
《えっ?》