第8話
貴女は以前の夢と同じく、光に包まれた部屋にいた。貴女は泣いていた。嗚咽の混じったその泣き声が、部屋に響いていた。
僕が近づくと貴女は僕を抱きしめた。
「やっぱ、り、だめっ、あの子は、まだ受け入れ、られない、だけなのに。ついカッとなって」
あぁ、泣かないで、泣かないでよ。貴女の笑顔のために僕は居るんだから。
「あの子と、仲良くしたいっ、のに、傷つけて、しまう」
あの子も少し不器用みたいだよ。自分の想いを上手く伝えられない。
「どうしたら、良いの?」
貴女が僕を抱く腕に力が入る。そして、小さく震えていた。
その時、部屋の扉がゆっくり開いた。
あの子だ。
貴女があの子の存在に気付き、振り向いた瞬間、僕の視界は赤に染まった。
何が起きたか分からない。何で、何で貴女は倒れているの?僕を抱いていた腕の力が抜け、力なく横たわる貴女を揺さぶっても、反応が無い。首元から溢れ出る赤。怖い。怖い。誰か、助けて。
僕があの子を見上げると、あの子は冷たく悲しい瞳で貴女を見下ろしていた。泣いている様にも見えた。あの子の右手に握られた刃物は赤く濡れていて、あの子の手も又、赤い。
あの子は刃物を床に落とすと、1、2歩後退りした後、走ってこの部屋を出て行った。
残された僕と貴女。
静かな部屋で、貴女の荒い息づかいが聞こえた。貴女の手がゆっくり動き、僕を優しく抱き寄せた。
「・・・お願い・・・。あの子の、側に、いて・・・。わた、しは無理だっ・・・けど、〜、なら・・・あの、子、寂しく、ないから」
貴女は苦しそうにだったけど、それでも、僕の大好きな笑顔で、僕の名前を呼んでくれた。
「だい、好き、だよ。
・・・・ナイト」